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私たちはなぜ、自分の当たり前を他者も共有していると思うのか?|【社会心理学】社会的認知⑤中編

1.私たちはなぜ、「みんな同じように考える」と思うのか

1-1.「なぜ、みんな自分と同じように考えないのか」という違和感

今回は私たちが当たり前と信じている世界観の危うさについて、社会学の視座から対話を試みます。日々の会議や意思決定の場面で、「なぜみんな、自分と同じように考えないのか」という違和を覚えることがあるのではないでしょうか。

1-2.フォールス・コンセンサス効果という思い込み

私たちが直面しているのは、社会心理学でフォールス・コンセンサス効果(合意性推測の誤り)と呼ばれる現象です。端的に言えば、私たちには自分の信念や選択が周囲の人々にも受け入れられている度合いや一般的・標準的である度合いを、実際よりも高く見積もる傾向があります。

1-3.自分と同じように考えるはずという素朴な現実主義

この現象を考えるうえで鍵となるのが、アメリカの社会心理学者リー・ロスらが研究してきた素朴な現実主義という考え方です。私たちは無意識のうちに次のような信念を抱いています。

「自分と同じ情報にアクセスしたうえで筋道を立てて熟慮し、偏りなく吟味できれば、他者も自分と同じ反応、行動、意見にいたる」

1-4.看板を背負って歩くという奇妙な実験

しかし、ロスらの研究はこの信念がいかに脆いものであるかを浮き彫りにしました。
悔い改めよと書かれた看板を胸と背中につけてキャンパス内を30分歩くという奇妙な依頼に対し、引き受けると答えた人は他者も過半数が引き受けるだろうと予測し、逆に拒否した人は他者の大半も拒否するだろうと予測したのです。

2.自分の当たり前を他者に投影する危うさ

2-1.個人の思い込みから社会の問題へ

ここで社会学の視点から考えたいのは、この現象が単なる個人の思い込みにとどまらないという点です。私たちは、自分自身の主観的な世界を客観的な世界そのものだと捉え、他者の解釈の枠組みを想像するときにも自らの論理を基準にしてしまうことがあります。そこには、自分の見ている世界を当たり前の世界として扱ってしまう構造的な罠が潜んでいるのです。

2-2.ビジネスの現場に潜む「自分の常識」

ビジネスの現場において、この罠は大きな問題につながる可能性があります。

  • 「この企画の良さは、説明すれば誰にでも伝わるはずだ」

  • 「この戦略の合理性は、データを見れば自明である」

そう確信した瞬間、私たちは他者が持つ異なる文脈や価値体系への想像力を閉ざしてしまうことがあります。社会学的にいえば、他者との間に存在する意味の地平のズレを自分の論理だけで埋めようとしてしまうのです。

3.他者の別の合理性を想像する

3-1.確信を一度立ち止まって疑ってみる

あなたがこれから先、組織のリーダーとしてあるいは一人の専門家として成熟していく過程で、この合意性推測の誤りを自覚しておくことは、強力な武器となります。
他者の反応が自分の予測と異なったとき、相手を非論理的だと断じるのではなく、「相手には相手なりの別の合理性が働いているのではないか」と問い直してみること。
その一瞬の静止こそが分断を避け、よりよい合意形成へと至るための社会学的な知性のあり方だと私は考えます。

3-2.自分の確信を疑うという社会学的態度

世界はあなたが思っている以上に、多様な前提の上に成り立っています。その複雑さを理解し、己の確信をあえて疑う勇気を持つこと。
それこそが、混迷する現代を冷静に生き抜くための洗練された社会学的態度なのではないでしょうか。

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