水選び
薪の火が少しだけ静かになる。🔥
マスターが新しいボトルの横に、水の入ったグラスを並べた。
「まずは、水ですね」
店の空気が少し締まる。
頭取が言う。
「原価にも直結します」
革命家が言う。
「思想にも直結する」
飼育員が言う。
「魚なら、水がすべてです」
天文学者が言う。🌌
「宇宙で言えば、基底」
ストーブ屋が言う。
「火とも相性がある」
先生が静かに頷く。
「子どもたちにも」
「一番分かりやすい要素です」
⸻
マスターが3つの水を置く。
「候補です」
1つ目。
「黒部川の水」
飼育員が言う。
「透明すぎる」
天文学者が言う。
「ノイズがない」
頭取が言う。
「安定供給が課題ですね」
革命家が言う。
「きれいすぎる水は信用しない」
⸻
2つ目。
「六甲山の水」
ストーブ屋が言う。
「火と合う」
DJが言う。
「ウイスキーのイメージ」
頭取が言う。
「ブランド力があります」
革命家が言う。
「都市の水だ」
⸻
3つ目。
マスターが少しだけ間を置く。
「四万十川の水」
飼育員が言う。
「生きてますね」
天文学者が言う。
「ゆらぎがある」
ストーブ屋が言う。
「薪に近い」
革命家が言う。
「いい」
頭取が言う。
「ただし物流コストが」
⸻
先生がゆっくり言う。
「もう一つ」
みんな見る。
「学校の水」
少し沈黙。
DJが言う。
「水道水ですか?」
先生が頷く。
「でも」
「子どもたちが毎日触れている水です」
飼育員が言う。
「それが一番リアル」
天文学者が言う。
「観測点としては正しい」
革命家が言う。
「ここから始めるべきだ」
頭取が言う。
「コストは最も低い」
ストーブ屋が言う。
「温度管理もしやすい」
マスターが静かに言う。
「じゃあ」
少し間。
「最初は」
グラスを一つ持ち上げる。
「この水でいきましょう」
先生が小さく頷く。
「そこに」
「意味があります」
⸻
DJが言う。
「でも最終的には?」
マスターが言う。
「選ばない」
みんな少し驚く。
「水も」
「変えていく」
天文学者が言う。
「軌道を変える」
飼育員が言う。
「環境で変わる」
革命家が言う。
「進化だ」
頭取が言う。
「実験ですね」
ストーブ屋が言う。
「いい薪も最初から決めない」
⸻
薪が静かに崩れる。🔥
グラスの水が、わずかに揺れる。
その夜決まったのは、
「どの水か」ではなく、
「どこから始めるか」だった。
