#1203 漫画論89|ナニワ金融道
これまで「カバチタレ」「極悪がんぼ」という漫画を紹介しましたが、これらの漫画のルーツはこの漫画にあります(作画の東風先生が青木先生のアシスタント)
そんな感じで本日は「ナニワ金融道」を紹介しましょう。
ナニワ金融道とは?

『ナニワ金融道』は、1990年から1997年まで「モーニング」(講談社)で連載された、金融業界を舞台にした社会派漫画です。
物語は大阪を舞台に、消費者金融会社「帝国金融」に入社した青年・灰原達之(はいばら たつゆき)が、悪徳業者や借金地獄に苦しむ人々と向き合いながら、成長していく姿を描いています。
作者の青木雄二先生は45歳で漫画家デビューしたんですが、これまでの社会人経験が豊富な分、リアルな金融業界の裏側を描いており、それが非常に秀逸です。
登場人物のドロドロとした人間ドラマが展開され、社会の縮図とも言える濃厚な人間模様が魅力の一作です。登場人物が結構な割合で夜逃げしますからね笑
あとは青木先生は無神論者でありながらも共産主義に傾倒していたようなので、その辺の強者の搾取とかのアンチテーゼもこめてたのかも知れませんね。
ナニワ金融道の魅力

1. リアルな金融・法律知識の描写
『ナニワ金融道』の最大の魅力は、金貸し(消費者金融)の世界を極めてリアルに描いている点です。
そして主人公=正義でもなく、とにかく「金=正義」という視点が非常に分かりやすい。主人公の灰原はなかなかのサイコパスですし、だからこそ成功しているというのもあります。
債務整理、担保、連帯保証、破産制度など、実際の法律知識が物語の中に緻密に織り込まれており、専門書のような側面もあり、お金や社会制度の教養としても読むことができながらも、エンタメとしても楽しめる秀逸な作品です。
そして何よりも消費者金融やヤミ金の怖さ、連帯保証のリスクなど、漫画で学んだことが実生活の防衛に役立ったという声も多くあるようです。
2. 人間臭く生々しいキャラクターたち
登場人物は一癖も二癖もある人物ばかりで、欲望・嫉妬・裏切りといった人間の「裏の顔」が容赦なく描かれています。
平気で人を騙したり、金を返さなかったり、夜逃げしたり・・・
そしてキッチリと取れる所から回収するという感じで、なかなかエグい展開が多いです。この辺が「ミナミの帝王」との違いですね。
とくに、帝国金融の上司・桑田や、社長の金畑など、とにかくエグくて強烈なキャラが多数登場し、それぞれが“道徳”ではなく“現実”で動くリアリティが支持されましたし、闇金ウシジマくんといった金融系漫画にも間違いなく影響を与えているでしょう。
他にも政治家との癒着、不動産投機詐欺、暴力団との関係、老人の年金搾取などの社会の闇を描き、社会の裏側を描くジャンルのパイオニアとしても評価されています。
3. インパクトのありすぎる画力
この画力に関しては、かなり後世の漫画家にとってエポックメーキング的な作品になったのではないでしょうか?
まずキャラクターデザインは超適当なんです笑
灰原とかは、絵心のある小学生の方が上手に描けると思うんですが、漫画で大事なのはグラフィック力ではなく、物語の面白さだと感じさせてくれるんですね。
そして、そのキャラクターにかけない労力をそれ以外の箇所でメッチャ使っています。
「スクリーントーンを使うのは手抜き」という青木流の美学で、スーツとかの模様を全部手書きするスタイルはハンパないです。
あとは何と言っても最低過ぎるネーミングセンスですね。
風俗店名とかは最高に頭が悪いんですがこれは現実世界でもあるとして、喫茶店とか、建設会社とか、銀行とか最低のネーミングセンスだったりします。
あとは後述しますがキャラクター名も本当に酷いです笑
もうこれは見てみて自分の目で体感してください笑
ナニワ金融道に出てくる印象的な登場人物ランキング
10位 薄利印刷の社長夫婦

詳細は省きますが、灰原がこの薄利印刷夫婦に新規事業を持ちかけ2000万円をGETするんですが、その金は返す必要がある金なので、払いたくない灰原はこの夫婦に夜逃げをさせるというなかなかエグい展開です笑
浮かれたこの夫婦が接待してくれるんですが、フグ料理屋の店名が「てとろどきしん」とかハイセンス過ぎますね笑
9位 三宅さん

三宅さんは借金の保証人(厳密には保証人の保証人)になってしまい、一切の忖度なしにソープに沈められてしまう可哀想な役でした。
もう一回でも支払いを踏み倒したら全額回収する、帝国金融というブラック企業の犠牲者です。まぁ返さない方が悪いと言う理屈なのですが…
悪い奴らがソープに女性を鎮めるテクニックをこの漫画で学んだ人は多いでしょう。
8位 古井市会議員

市会議員選挙の為に帝国金融から5000万円借りてバラまくんですが、対立候補に惜敗し、身ぐるみ剥がされて夜逃げするという残念な役回りでした。
選挙のドロドロと、政治家のクソっぷりをここぞと赤裸々に描いているのはなかなかセンセーショナルでしたね。
7位 銭田 掏二朗

銭田 掏二朗とかいてせんだずりじろうと読む、本作でも1〜2を争う、最低の名前の登場人物です。
同時期に連載していた「ミナミの帝王」が、本作のネタをパクった的な騒動があったようで、その趣返しとして、「ミナミの銀行」萬田銀次郎をパロった「ミナミのセンズリ」銭田 掏二朗というキャラクターにしたようですね笑

で、この銭田 掏二朗は最低の金貸しというか整理屋なんですが、最後は灰原にコテンパにされるんですが、個人的には好きなキャラクターでしたね。笑

6位 教頭先生

教頭先生は全く悪くないのに、先物取引を扱う悪徳不動産会社にハメられて、身包み剥がられて放置される可哀想な役でした。
ちなみにミナミの帝王や闇金ウシジマくんでもこの手の先物取引に騙された被害者は出てくるのですが、一番救いがなかったのがこの教頭先生でした笑
とにかくこの教頭先生から「先物には気をつけよう」と「風俗で寝るのは気をつけよう」と言うことを学びましたね笑
5位 肉欲棒太郎

作中で最低のネーミングを与えられた地上げ屋・肉欲棒太郎です。漫画とは言え名前ひど過ぎますよね笑
完全に灰原のせいで追い詰められて夜逃げするんですけど、スピンオフ的な感じで再起するストーリーを描かれている、作者に愛されたキャラクターでしたね。
4位 社長

そんなスーパーブラック企業・帝国金融のボスです。
帝国金融は多分「闇金」では無いとは思うんですが、その回収法はエグく、更には灰原もしれっとクビにしようとしたこともあったり、「社長」って感じですね。
まぁ、そうでもなきゃやっていけないのでしょう。
3位 桑田

桑田は新入社員の灰原のOJT的な感じで色々とサポートしてくれる先輩です。
顧客に渡す金でメシを食ったり、トリハンで約束して全額回収して差分を懐に入れたりする悪い先輩で、この桑田の教育があって、名前通りまだグレーだった灰原がブラックに染まっていったんですね笑
2位 朱美

朱美は本当に笑いました。
灰原といい感じでデートを重ねて、いざベッドインというタイミングで、この筋彫り!
タトゥーなんて可愛いもんじゃないです笑

ヤクザな彼氏の影響で刺青を入れて、会社の金を横領して、バレてクビになって借金返済という感じで、とにかくアホなんですね笑
途中からちょっと賢い的なキャラになってますが、朱美はアホです笑
1位 灰原

そしてやはり主人公の灰原というサイコパスを1位にせざるを得ないでしょう。
序盤はまだ人間らしい一面があるんですが、途中から一切なくなります笑
前述の通り、肉欲棒太郎がビルを建てている際に、ビルの反対運動に加盟して肉欲の企画を潰す2重スパイのようなことをして、ビルを取り上げておいて、「肉欲は尊敬できる奴だった」とかシレっと言ってしまうサイコパスだったりします笑
そんな感じで債務者に対して鬼の様に取り立てて、保証人だろうが容赦なくしっかり回収する非道な営業マンにして、帝国金融のエースに成長します。
そんな灰原の個人的に好きなシーンを集めてみました。
「ダメだ、立たない!」

前述の和彫りの朱美さんと「いざSEX」という局面で、どうしても臆してしまってPLAYできない灰原の心の叫び。気持ちはわかりますね・・・
「どうして?酒もあるし食事もできますよ」

女生徒のデートで、ドヤ街唯一の酒場のような所に連れてきてしまう灰原です。なんで女性が嫌がっているのかが分からない辺りに狂気を感じますね笑
「うるさい、オレは鬼じゃ!」

酔うと謎の口調になります笑
そして女性に手を上げるという、見下げ果てたクズですね笑
「ちょっとヤクザを半殺しにしてきましたので・・・」

この口の血を拭かない辺りが、みんなに褒められたいという一心で帰ってきたのが伺えますね笑
***
そんな感じの一見普通に見える灰原が一番狂っているという感じが、この漫画が愛される所以かも知れませんね。
まとめ
そんな感じですが、青木先生の逝去後にスピンオフもたくさん出ています。
流石にスピンオフまでは追ってないですが、昔チラッと見た時は相変わらず酷かったです笑
是非、金融業界に興味がある人や、ウシジマくんが好きな人はチェックしてみましょう!
