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【要注意】取るときは自動、返すときは申請――弱者を静かに切り捨てる行政になっていないか



【要注意】取るときは自動、返すときは申請――弱者を静かに切り捨てる行政になっていないか

役所は簡単でいいな
公共企業は簡単にはできない


介護保険料や税金は、こちらが忘れていても行政から通知が来る。

支払いが遅れれば督促され、場合によっては延滞金も発生する。

ところが、国や自治体からお金を返してもらうとき、あるいは支援を受けるときはどうだろう。

「制度を調べてください」
「期限までに申請してください」
「スマートフォンで登録してください」
「申請しなかった場合は受け取れません」

なぜか、急に市民の自己責任になる。

私は、ここに今の日本が進めている「弱者切り捨て」の一つの形が表れているように思う。

要介護認定の更新通知をやめた自治体

介護サービスを利用するには、要介護・要支援認定が必要だ。

この認定には、3か月から最長48か月という有効期間がある。引き続きサービスを使うには、有効期限が切れる前に更新を申請しなければならない。

ところが毎日新聞の調査によると、全国の政令指定都市・中核市82市のうち、少なくとも次の6市が更新時期の事前通知を廃止していた。

悪の化身だな
* 浜松市
* 高松市
* 山形市
* さいたま市
* 福島県いわき市
* 大阪府八尾市


更新を忘れて有効期限が切れると、それまでの認定は失効する。

期限が切れてから申請しても、原則として過去にさかのぼって更新することはできない。その間に介護サービスを利用すれば、通常は1割から3割で済む費用が、10割負担になる可能性がある。

しかし、考えてみてほしい。

要介護認定を受けている人の中には、

* 認知症の人
* 記憶力や判断力が低下している人
* 一人暮らしの高齢者
* 書類を読んで理解することが難しい人
* 家族が遠方に住んでいる人

も少なくない。

そのような人たちに対して、「自分で有効期限を覚えて、自分で更新してください」と求めること自体に無理がある。

最も手続きが難しい人に、最も重い自己管理を要求しているのである。

富士市の商品券でも感じた違和感

富士市では、物価高騰対策として、市民1人につき5,000円分の「くらし応援商品券」が配られた。

基本となったのは、スマートフォンを使うデジタル商品券だった。

市から送られてきたはがきの個別コードを使い、スマートフォンで登録して利用する仕組みである。

正確にいえば、スマートフォンを持っていない人のために紙商品券も用意されていた。

しかし、最初から紙の商品券が自宅に届くわけではない。

* デジタル商品券を取得しなかった人に、後から交換券が届く
* その交換券を持って、指定された窓口へ行く
* 紙商品券に交換する
* さらに利用期限までに加盟店で使う

という手順が必要だった。

スマートフォンを使える人は、自宅で登録できる。

一方、スマートフォンを使えない人は、交換券を確認し、期限を覚え、窓口まで出向かなければならない。

歩行が困難な高齢者や、一人暮らしで家族の支援を受けにくい人にとっては、決して簡単な仕組みではない。

物価高騰の影響を強く受け、支援を最も必要としている人ほど、商品券を受け取りにくい設計になっていなかっただろうか。

制度上は「全市民に5,000円分を配った」と説明できる。

しかし、実際に使われず失効した商品券が大量にあるなら、それは配ったことにはならない。

市には、デジタル版と紙版それぞれの取得率・利用率、そして最終的な失効額を明らかにしてほしい。

税金は取るのに、なぜ返すときだけ申請なのか

税金や社会保険料について、行政は多くの情報を持っている。

* 誰が対象なのか
* いくら支払うべきなのか
* 支払ったかどうか
* 期限を過ぎていないか

行政はこれらを把握し、必要なら通知や督促を行う。

介護保険料も、年金から自動的に差し引かれることがある。

ところが、控除、還付、給付、助成など、市民がお金を受け取る側になると、「申請主義」が前面に出てくる。

制度を知らなければ受け取れない。

申請書を間違えれば受け取れない。

期限を過ぎれば受け取れない。

スマートフォンを使えなければ、さらに面倒な手続きを求められる。

これでは、

徴収は行政の責任、給付は市民の自己責任

である。

さらに厳しくいえば、

取る権利は行政が管理し、受け取る権利は市民自身に管理させている

ということになる。

制度を利用できなかった人に対して、行政はこう説明できる。

「制度は用意していました」
「案内も出しました」
「申請しなかったのは本人です」

しかし、最初から利用が難しいことが予測できる人に、利用しにくい方法で支援を提供したのであれば、それは本人の責任ではない。

制度を設計した側の責任である。

「デジタル化」という言葉に注意しなければならない

私はデジタル化そのものに反対しているわけではない。

スマートフォンで簡単に申請できたり、役所へ行かずに手続きが完了したりするのは、利用できる人にとって大変便利だ。

問題は、デジタル化を理由に、それまでの郵送、電話、窓口、訪問といった方法を削ってしまうことである。

行政にとっては、

* 郵送費を削減できる
* 職員の事務作業を減らせる
* 窓口の人数を減らせる
* システム上で一括処理できる

という利点がある。

しかし、その分の手間は消えていない。

市民がスマートフォンを用意し、アプリを登録し、パスワードを管理し、期限を記憶し、自分で手続きをすることになっただけだ。

つまり、行政の負担を市民へ移しているのである。

それを「行政DX」「業務効率化」と呼ぶだけではいけない。

本当の行政DXとは、行政が楽になることではなく、市民が暮らしやすくなることである。

行政を民間に任せれば解決するのか

行政の仕事の一部は、民間企業、NPO、社会福祉協議会、地域包括支援センターなどへ委ねた方がよい。

民間には、行政に不足しがちな実行力やサービス開発力がある。

例えば、

* 高齢者への個別案内
* スマートフォンの操作支援
* 電話や訪問による未申請者の確認
* 分かりやすい申請画面の開発
* 未利用者の原因分析
* コールセンターの運営

などは、民間の力を活用できる。

しかし、何でも民間へ丸投げすればよいわけではない。

委託先の企業は、基本的に契約書に書かれた仕事を行う。行政が「通知を何通発送したか」だけを契約上の成果にすれば、通知した後に市民が実際に利用できたかまでは追わない。

コスト削減を優先すれば、支援に最も手間のかかる人が後回しにされる危険もある。

だから、民間に任せる場合も、行政が最終的な責任を負わなければならない。

* 誰を支援するか
* どのような権利を保障するか
* 個人情報をどう守るか
* 不利益を受けた人をどう救済するか
* 本当に必要な人へ届いたか

これらは行政が決定し、監督すべきことである。

行政が権利を保障し、民間が使いやすいサービスを実装し、市民が結果を評価する。

この分担が必要だ。

「配った人数」ではなく「届いた人数」を評価する

人に優しい行政へ変えるには、行政の評価方法も変えなければならない。

現在は、

* 何人を対象にしたか
* 何通の通知を発送したか
* いくら予算を用意したか
* システムを導入したか
* 事務費をいくら削減したか

といった数字が行政の成果になりやすい。

しかし、本当に確認すべきなのは、次の数字である。

* 対象者のうち、実際に受け取った人の割合
* 商品券や給付金を実際に使った人の割合
* 高齢者、障害者、独居者の利用率
* 申請できなかった理由
* 未使用のまま失効した金額
* 未申請者へどのような支援を行ったか
* 制度によって生活がどれだけ改善したか

「通知を出したから終わり」ではない。

「制度を作ったから終わり」でもない。

必要な人に届き、実際に使われて初めて、行政の仕事は完了する。

私たち自身も気をつけなければならない

残念ながら、現在の制度がすぐに変わるとは限らない。

そのため、私たち自身も当面は自衛する必要がある。

家族に高齢者や要介護者がいる場合は、

* 要介護認定の有効期限を確認する
* スマートフォンのカレンダーに期限を登録する
* 家族とケアマネジャーで情報を共有する
* 行政から届いたはがきや封筒を放置しない
* 給付金、商品券、控除の申請期限を確認する
* 本人が手続きできない場合は早めに支援を求める

ことが重要だ。

しかし、市民が気をつければ済む問題ではない。

家族がいない人はどうするのか。

認知症で郵便物の意味を理解できない人はどうするのか。

歩けず、交換窓口へ行けない人はどうするのか。

そのような人を救うことこそ、行政の役割である。

人に優しい行政になっているか、私たちが見張る

これから行政のデジタル化と民間委託は、さらに進んでいくだろう。

だからこそ、私たちは「便利になった」という説明だけを聞いて安心してはいけない。

確認すべきなのは、

* デジタルを使えない人への代替手段があるか
* その代替手段が、より面倒になっていないか
* 申請できない人を訪問して支援しているか
* 未利用率や失効額を公表しているか
* 民間委託後も行政が責任を負っているか
* 効率化によって弱い立場の人が排除されていないか

という点である。

行政が「全員を対象にしました」と発表しても、全員に届いたとは限らない。

行政が「紙でも利用できます」と説明しても、高齢者が窓口まで行けなければ利用できない。

行政が「事前通知は義務ではありません」と説明しても、通知をやめた結果、介護を必要とする人が10割負担になれば、人に優しい行政とはいえない。

行政改革の目的は、行政を小さくすることでも、職員の仕事を減らすことでもない。

市民の生活を守り、必要な人へ必要な支援を確実に届けることだ。

取るときだけ熱心で、返すときには申請を求める。

デジタルを使える人だけが便利になり、使えない人は制度から脱落する。

そんな行政になっていないか。

私たちは自分と家族を守るために注意すると同時に、人に優しい行政が守られているかを、これまで以上に厳しく見張らなければならない。

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