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戦争まで、サスティナブルになってしまうのか Vol.3中東から見る「サスティナブル・ウォー」――誰も全面戦争を望まないのに、なぜ戦争は終わらないのか「宗教戦争」だけでは説明できない

中東の戦争というと、

ユダヤ教とイスラム教。
スンニ派とシーア派。
宗教対立。

そんな言葉で説明されることが多い。

もちろん宗教は重要だ。
しかし、それだけで現在の中東を理解しようとすると、かなり無理がある。

実際に絡んでいるのは、

  • 宗教。

  • 民族。

  • 領土。

  • 国家安全保障。

  • 政権維持。

  • 地域覇権。

  • 資源。

  • そして大国の思惑。

これらが複雑に重なっている。
だからこそ、中東の戦争には非常に厄介な特徴がある。

一つの戦争を止めても、戦争そのものが終わらない。




そもそも「誰と誰の戦争」なのか

ウクライナ・ロシア戦争なら、
極端に単純化すれば、ロシアとウクライナ。

国家対国家という構図がある。

しかし中東は違う。

イスラエル。
パレスチナ。
ハマス。
ヒズボラ。
イラン。
フーシ派。
レバノン。
サウジアラビア。
米国。
その他の周辺国。

関係する主体が多すぎる。

しかも、それぞれの目的が違う。

だから、AとBが停戦しても、
Cにはその停戦を受け入れる理由がない。

Cが攻撃する。
Bが報復する。

それを見たDが介入する。
するとまた別の戦線が生まれる。

戦争が一本の線ではなく、網の目のようにつながっている。
ここが中東の大きな特徴だと思う。


宗教は「原因」というより、妥協を難しくする

ここで宗教の問題が出てくる。

領土だけの話なら、
「ここからここまでをどちらの領土にするか」
という交渉は理論上できる。

しかし、その土地が、

神から与えられた土地。
民族の故郷。
聖地。
迫害の歴史を象徴する場所。

となると話が変わる。
単なる土地の価格ではない。

譲歩すること自体が、信仰や民族、歴史への裏切りとして受け取られる。

そうなれば妥協の政治コストは一気に高くなる。
つまり宗教は、戦争の唯一の原因ではない。

むしろ、
もともと存在する領土・民族・安全保障問題を、
らに妥協しにくくする力
として作用する。

ここが「宗教戦争」と一言で片づけると見えなくなる部分だと思う。


全面戦争をしなくても戦える

そして現代の中東をさらに複雑にしているのが、
代理勢力と無人兵器だ。

例えばイラン。
イスラエルと常に正面から全面戦争をする必要はない。

ヒズボラ。
フーシ派。
その他の武装組織。

こうした勢力を通じて圧力をかけることができる。
一方のイスラエルも、

空爆。
ミサイル。
特殊作戦。
サイバー攻撃。
情報戦。

などを組み合わせる。

つまり、
国家同士が正式に全面戦争を始めなくても、
相手へ継続的に損害を与えられる。

ここにドローンやミサイルが加わった。
少ない兵力でも、遠距離の施設や船舶を攻撃できる。

実際、2026年8月にもフーシ派による紅海・バブ・エル・マンデブ周辺の船舶攻撃が続き、死者を伴う事件も発生している。さらにホルムズ海峡でも戦争の影響によって船舶通航が大幅に減少している。

これは、かなり重要な変化だと思う。


小さな勢力でも、世界経済を揺らせる

軍事力だけを比べれば、
フーシ派が米国やサウジアラビアに正面から勝てるわけではない。

しかし、

ドローン。
ミサイル。
対艦兵器。
機雷。

などを使えば、

紅海やバブ・エル・マンデブの航路を不安定化させることはできる。
そしてホルムズ海峡まで不安定化すれば、影響は中東だけでは終わらない。

原油。
LNG。
海上輸送。
保険料。
物流コスト。

すべてに影響する。

実際、2026年8月にはホルムズ海峡の船舶通航が戦前の水準から大きく減少し、原油市場も危機の長期化を織り込み始めている。

つまり現代では、
小さな武装勢力でも、世界経済に戦略的な影響を与えられる。

戦争に参加するための「最低条件」が下がっているとも言える。


誰も全面戦争を望まないのに、降りられない

ここが今回、一番考えたいところだ。

中東の多くのプレイヤーは、
自国そのものが壊滅する全面戦争を本当に望んでいるのだろうか。

おそらく、そう単純ではない。

  • イランも国家そのものが破壊される戦争は避けたい。

  • イスラエルも永久に多正面戦争を続けたいわけではない。

  • 湾岸諸国も地域全体が戦場になることは避けたい。

  • 米国も無制限に中東へ介入し続けたいわけではない。

それでも、相手の攻撃を放置すれば抑止力を失う。

弱腰に見られれば次の攻撃を招く。
同盟国を見捨てれば影響力を失う。

だから反撃する。

すると相手も、反撃しなければ弱く見える。

だからまた報復する。

攻撃
→ 報復
→ 抑止
→ 小康状態
→ 再び攻撃

この循環が生まれる。


「戦争」と「平和」の間に、第三の状態が生まれる

これまで私たちは、

戦争か。
平和か。

という二つの状態で考えてきた。
しかし現在の中東を見ていると、その間に別の状態があるように思える。

停戦はしている。
しかし空爆は起きる。

和平交渉はしている。
しかし武装解除では合意できない。

軍は撤退すると言う。
しかし相手が武装解除しない限り撤退しない。

例えば現在のガザでも、和平案を巡る交渉は続いている一方、攻撃や停戦違反を巡る対立は残っている。南レバノンでも、イスラエルはヒズボラの武装解除を撤退条件とし、ヒズボラ側はイスラエル軍の撤退を先に求めている。

どちらも、「相手が先に動け」
という構造になっている。

つまり、完全な戦争でもない。
完全な平和でもない。

低強度の戦争状態を抱えたまま、社会と経済が動き続ける。

これを何年も続けることができるなら、
それもまた一つの、

サスティナブル・ウォー
なのではないだろうか。


ウクライナとは、持続の仕方が違う

Vol.2では、ロシアとウクライナの「戦争を持続させる方法」の違いを考えた。

ロシアは、
資源と人口の厚みで耐える。

ウクライナは、
技術と効率で耐える。

中東の場合は少し違う。
戦争そのものを分散させることで持続する。

全面戦争ではなく、

  • 代理勢力。

  • 限定攻撃。

  • ドローン。

  • ミサイル。

  • サイバー攻撃。

  • 海上封鎖。

  • 小さな衝突を複数の場所で続ける。

そうすることで、一度に国家全体が壊れるリスクを抑えながら、相手への圧力を維持する。

ある意味では、
戦争を小分けにすることで、戦争を続けやすくしている。


合理的に動くほど、戦争が終わらなくなる

私はここが一番怖いと思う。

必ずしも、
「誰かが永遠に戦争を続けたい」
から終わらないわけではない。

むしろ逆なのかもしれない。

それぞれのプレイヤーが、
自国を守ろうとする。

抑止力を維持しようとする。
味方を守ろうとする。

政治的に弱く見られないようにする。

つまり、それぞれが自分にとって合理的な行動をする。

しかし、その合理性を全員が積み重ねると、
誰も戦争から降りられない構造が出来上がる。

戦争を終わらせるには、
誰かが先にリスクを取らなければならない。

しかし、

「相手が約束を破ったらどうする?」
という疑問が残る。

だから動けない。

これは、誰か一人の狂気というより、
構造そのものが戦争を維持している状態

なのかもしれない。


中東型「サスティナブル・ウォー」

ここまで考えると、ウクライナとは違う形が見えてくる。

ウクライナでは、
生き残るための技術革新が、結果として戦争を続けられるようにした。

中東では、
複数の主体が自分の安全を確保しようとするほど、誰も戦争から降りられなくなる。

そして、

代理勢力。
ドローン。
長距離ミサイル。
サイバー戦。

といった技術が、全面戦争にしなくても戦争を継続できる環境を作る。

つまり、
中東型サスティナブル・ウォーとは、
「終わらせられない構造」と
「低コストで続けられる技術」が組み合わさった戦争
なのかもしれない。

そして次に考えなければならないのは、その先だ。

  • AI。

  • 完全自律型ドローン。

  • 無人戦闘車両。

  • 無人艦艇。

  • レーザー兵器。

  • 高出力マイクロ波兵器。

人間が直接戦場へ行かなくても戦える技術は、
これからさらに進化する。

もし、人的被害を抑えながら戦争を続けられるようになったら。
それは戦争を終わらせる技術なのだろうか。

それとも、
戦争をさらに「サスティナブル」にしてしまう技術なのだろうか。

次回、Vol.4。
これからの「サスティナブル・ウォー」を考えてみたい。


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