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IOS、買っただけでは算定できません|令和8年度・光学印象150点と歯科技工士連携加算2の実務

令和8年度|歯科医院のための「光学印象150点」と歯科技工士連携加算2 実務ガイド

口腔内スキャナ(IOS)は、印象のデジタル化、技工所とのデータ連携、患者説明の分かりやすさなど、多くの可能性を持つ機器です。

一方で、保険診療で「光学印象」を算定するには、IOSを購入してスキャンできる状態になっただけでは足りません。対象症例、施設基準の届出、歯科技工士との連携、診療録への記載、患者情報の安全な取扱いまでを、一つの運用として整える必要があります。

この記事では、令和8年度の制度を前提に、院長先生がまず確認すべき要点を実務目線で整理します。

この記事は、2026年7月26日時点で公開されている一次情報をもとに整理した情報提供です。個別の算定可否、届出の受理、法令・ガイドラインへの適合を保証するものではありません。実際の届出・算定では、必ず最新の通知と管轄の厚生局にご確認ください。


📌 先に結論:IOS導入で最初に確認すべき6項目

  1. IOSを使う症例は、CAD/CAM冠またはCAD/CAMインレーの製作に該当するか。

  2. 光学印象の施設基準が受理され、算定開始日を確認できているか。

  3. 歯科技工士連携加算2を算定する場合、その施設基準も別途受理されているか。

  4. 歯科医師と歯科技工士が、症例ごとに口腔内・咬合関係などを確認する運用があるか。

  5. 確認内容と、院外連携の場合の歯科技工所名を診療録に記載しているか。

  6. 患者情報を含むデータを、安全な仕組みとルールで扱えているか。

大切なのは、IOSを「機器」としてだけでなく、補綴製作・記録・連携・情報管理をつなぐ運用基盤として捉えることです。


🔍 IOSでできることと、保険算定できることは同じではありません

IOSは、歯列、支台歯、咬合などを三次元データとして取得する装置です。補綴設計、技工所への送信、院内CAD/CAM、矯正、患者説明など、幅広く活用できます。

しかし、IOSでスキャンしたすべてのケースが「光学印象」として保険算定できるわけではありません。

保険診療上の光学印象は、届出済みの保険医療機関が、CAD/CAM冠またはCAD/CAMインレーを製作するために、デジタル印象採得装置を用い、直接法で印象採得・咬合採得を行った場合に算定する項目です。

つまり、次のように分けて考える必要があります。

  • CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーの製作:要件を満たせば光学印象の対象になり得る

  • 自費補綴、矯正・アライナー、インプラント:IOSの活用価値はあるが、光学印象の保険点数とは別の話

  • 患者説明や経過観察のためのスキャン:スキャンだけで光学印象は算定しない

また、光学印象を算定した場合、通常の印象採得、咬合印象、咬合採得は別に算定できません。レセコンのマスタ設定と入力手順で、重複入力を防ぐことも必要です。


💰 令和8年度の点数:150点と80点は「単位」が違う

令和8年度の主な点数は次のとおりです。

  • 光学印象:1歯につき150点

  • 歯科技工士連携加算1:対面での確認を行い製作へ活用した場合、60点

  • 歯科技工士連携加算2:情報通信機器で確認を行い製作へ活用した場合、80点

ここで間違えやすいのが、算定単位です。

光学印象は1歯につき算定します。一方、歯科技工士連携加算2は、同日に複数の修復物・補綴物について光学印象を行っても、1回に限ります。

例えば、同日に2歯のCAD/CAM冠について光学印象を行い、要件を満たす歯科技工士連携加算2を実施した場合は、

  • 光学印象:150点 × 2歯

  • 歯科技工士連携加算2:80点 × 1回

という考え方になります。

「データを送信したから80点」ではありません。歯科医師と歯科技工士が、情報通信機器を用いて口腔内・咬合関係などを確認し、その結果を修復物・補綴物の製作に活用したことが必要です。


🏥 施設基準と症例ごとの要件は、別のものです

ここは運用設計で最も重要な部分です。

① 施設基準:算定できる体制が整っているか

光学印象と歯科技工士連携加算2は、別々の施設基準です。両方を算定する医院は、両方について届出と受理が必要です。

近畿厚生局の様式一覧では、光学印象は「別添2(光印象)」と「様式50の2」、歯科技工士連携加算2は「別添2(歯技連2)」と「様式50の2の2」で整理されています。

歯科技工士連携加算2では、歯科技工士または歯科技工所との連携体制、情報通信機器を用いた確認の体制、院内掲示・ウェブサイト掲載、処遇改善に資する体制などを確認します。

② 症例ごとの算定要件:その日に実施した内容が要件を満たすか

届出が受理されていても、症例ごとの実施内容が要件を満たさなければ、その症例で加算2は算定できません。

算定日に確認したい流れは、次のとおりです。

  1. CAD/CAM冠またはCAD/CAMインレーを製作する症例である。

  2. 施設基準の算定開始日以降である。

  3. IOSを用いて印象採得・咬合採得を行う。

  4. 歯科医師と歯科技工士が情報通信機器を用いて、口腔内・咬合関係などを確認する。

  5. 確認結果を修復物・補綴物の製作に反映する。

  6. 確認内容と、院外連携の場合は歯科技工所名を診療録へ記載する。


🤝 技工所との連携は「送信」ではなく「確認して製作へ反映する」こと

IOS導入後の標準フローは、次の5段階で考えると整理しやすくなります。

1. 症例選定

医院側は対象補綴物、施設基準、患者同意、診療計画を確認します。技工所側は受注可否、使用材料、納期などを確認します。

2. スキャン

支台歯、隣接歯、対合歯、咬合を取得し、データ品質を確認します。マージンが不明瞭、クリアランスが不足、欠損部位がある、といった場合は再スキャンの要否を判断します。

3. 歯科技工士との連携確認

歯科医師と歯科技工士が、口腔内・咬合関係・マージン・設計上の課題などを確認します。ここは「了解しました」で終わらせず、何を確認し、何を決めたのかが分かる内容にします。

4. 製作への反映

材質、形態、コンタクト、咬合、クリアランスなどの確認結果を、設計・製作へ反映します。

5. 納品後の評価

適合、咬合、調整量、再製作の有無を振り返ります。再スキャン率、差し戻し理由、再製作率を見れば、機器の問題なのか、形成・スキャン・連携の問題なのかを改善できます。

技工所との導入前確認では、少なくとも次を合わせておくことをおすすめします。

  • 利用するIOS、ポータル、ファイル形式への対応

  • 連携する歯科技工士と連絡可能な時間帯

  • 症例ごとの確認方法

  • 再スキャン・差し戻し時のルール

  • 患者情報の扱い、アカウント・権限管理

  • 誤送信や障害時の連絡先と初動


📝 診療録に残すべきこと

歯科技工士連携加算2では、確認内容と、院外の歯科技工士が行う場合は所属する歯科技工所の名称を診療録に記載します。

記載は、毎回同じ定型文を貼るのではなく、その症例で実際に確認した内容へ修正してください。

記載例:

20XX年X月X日、[システム名]を用い、[歯科技工所名]の歯科技工士[氏名]と、[部位・補綴物]について確認。口腔内データ上、[マージン/咬合/クリアランス等の具体的内容]を確認し、[再スキャン/設計変更/材料・形態の決定等]とした。確認結果を当該修復物・補綴物の製作に反映した。

実務では、次の5項目がそろっていると、記録の質が安定します。

  • 実施日

  • 相手:歯科技工所名・歯科技工士名

  • 対象:部位と修復物・補綴物

  • 確認内容:咬合、口腔内、設計に関する具体事項

  • 結果・活用:何を決め、製作にどう反映したか

なお、チャットログを一律に何年間保存しなければならない、といったことが歯科技工士連携加算2の独立した算定要件として明記されているわけではありません。ログやポータルの承認履歴は、運用の検証や安全管理には有用ですが、診療録への記載と混同しないことが大切です。


📮 近畿厚生局管内の届出・受理確認

兵庫県を含む近畿厚生局管内では、最新の届出様式と受理状況を公式ページで確認します。

  • 光学印象:別添2(光印象)+様式50の2

  • 歯科技工士連携加算2:別添2(歯技連2)+様式50の2の2

提出は、届出を送った日ではなく、要件審査を経て受理された時期が重要です。算定開始希望月から逆算し、機器、連携体制、掲示、ウェブ掲載、記載内容を整えて、余裕を持って準備することをおすすめします。

受理状況は、近畿厚生局の「施設基準の受理状況」で、医院名または医療機関コードから確認できます。確認したら、受理番号、算定開始日、確認日を院内の管理表へ残しておくと、担当者交代や監査対応でも迷いません。


🔐 情報セキュリティは、加算のためではなく患者情報を守るため

光学印象データや、歯科技工士との情報通信機器を用いた連携では、患者情報を扱う場面があります。厚生労働省は2026年6月に「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」を公表しています。

最低限、次の点を確認してください。

  • 個人共用ではなく、スタッフごとのアカウントにする

  • 退職・異動時に速やかに利用停止できるようにする

  • 多要素認証、端末ロック、パスワード管理を整える

  • 閲覧・送信・管理の権限を必要最小限に分ける

  • 端末の更新、暗号化、マルウェア対策、紛失時の対応を決める

  • データの保存先、バックアップ、サービス終了時の取り出し方を確認する

  • 技工所・ベンダーとの責任範囲、再委託、事故時の連絡方法を明確にする

特定のチャットアプリの名前だけで、算定可否や返還の有無が決まるわけではありません。ただし、個人用アカウントでは、医院としてアカウント管理、退職時の停止、権限設定、監査、端末紛失時の対応が難しくなります。患者情報を含む連携には、組織として管理できる仕組みを選ぶべきです。


🖥️ 機種選定は、本体価格だけで比較しない

導入前には、次の観点を機種比較表へ入れてください。

  • 診療:精度、スキャン速度、チップサイズ、可搬性、再スキャンの操作性

  • 技工連携:技工所の対応、ポータル、STLなどの出力、設計確認のしやすさ

  • コスト:本体、リース、月額、消耗品、保守、修理、更新、研修

  • 情報管理:アカウント、認証、権限、ログ、保存、バックアップ、データ移行

  • 運用:院内マニュアル、メーカー支援、トラブル窓口、代替機、BCP

5年の総保有コストは、概ね次の考え方で見ます。

本体・初期費用+月額利用料+消耗品+保守・修理+端末・ネットワーク+教育時間+データ移行・更新費用

投資回収も、診療報酬だけで判断しないことが重要です。印象材、配送、再印象、再製作、チェアタイム、患者説明、スタッフ負担が実際にどう変わったかを、自院の数字で測定しましょう。


📈 導入後90日で見るべき指標

IOS導入は、納品日ではなく、現場に定着したときに初めて価値が出ます。

  • 導入から30日:スキャン時間、再スキャン率、送信エラーを確認する

  • 31日から60日:技工所からの差し戻し、記録漏れ、調整量を確認する

  • 61日から90日:再製作率、チェアタイム、患者満足、総保有コストを確認する

月次では、対象症例と算定内容の抜き取り、診療録と技工指示内容の整合、再スキャン・再製作の原因、アカウント棚卸し、通知・様式・ガイドラインの更新確認を行うと、運用が安定します。


✅ 導入前の最終チェックリスト

  • IOSを使う対象症例と、月間の想定歯数を把握した

  • 光学印象と歯科技工士連携加算2の違いを整理した

  • 連携する技工所が機器・ポータル・ファイル形式に対応している

  • 光学印象と歯科技工士連携加算2の届出・受理状況を確認した

  • 院内掲示とウェブ掲載の内容を、届出内容と一致させた

  • 電子カルテの診療録テンプレートを準備した

  • レセコンで通常の印象採得等と重複算定しない設定を確認した

  • アカウント、権限、端末、退職者対応、事故時の初動を決めた

  • 受理番号・算定開始日・確認日を管理表へ記録した


❓ よくある質問

Q. IOSを購入した日から光学印象を算定できますか?

いいえ。対象症例であることに加え、施設基準の届出が受理され、算定開始日以降である必要があります。

Q. STLデータを技工所へ送れば、歯科技工士連携加算2を算定できますか?

送信だけでは足りません。歯科医師と歯科技工士が情報通信機器を用いて口腔内・咬合関係などを確認し、その結果を製作に活用する必要があります。

Q. 同日に3歯をスキャンしたら、歯科技工士連携加算2は3回ですか?

いいえ。同日に複数の修復物・補綴物について光学印象を行った場合でも、加算2は1回に限られます。

Q. 近畿厚生局から受理通知が届きません。

まずは、近畿厚生局の公式「施設基準の受理状況」で、医院名または医療機関コード、受理番号、算定開始日を確認してください。掲載や個別の取扱いは変更される可能性があるため、必要に応じて管轄事務所にも確認してください。


🚀 まずは「機器導入」ではなく「運用設計」から

IOSは、患者さんにとっての負担軽減や説明のしやすさ、歯科技工所との連携、医院の生産性向上につながる可能性があります。

ただし、本当に成果につながるのは、機器を購入した時ではありません。対象症例、届出、技工連携、診療録、情報管理、スタッフ教育までを一続きの業務として整えたときです。

導入を検討される先生は、まず「自院の対象症例数」「連携する技工所」「届出と受理状況」「診療録の記載方法」の4つから確認してみてください。




📚 主な一次情報

⚠️ ご利用上の注意

本記事は情報提供を目的としており、法的助言、診療報酬請求の代行、個別の算定可否の保証を行うものではありません。制度改正、訂正通知、疑義解釈、地方厚生局の運用により内容が変わる場合があります。実際の届出・算定に当たっては、最新の一次情報と管轄機関の確認を優先してください。

企画・編集:有限会社フラット

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