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30~50代|60~65歳|人生の時刻表

30代前半|午前9時過ぎ


仕事帰りの電車。

車内に身を預け、
ぼんやりと窓を眺めていました。

揺れとともに、正面のガラスに
見え隠れする自分の陰影

小鼻から頬のふくらみに沿った
うっすらとした影

――えっ、これって、ほうれい線?

顔を左右に振り、何度か確かめます。

当時、
「おばさんの境界は三十二歳」という

根拠のない数字を
どこかで目にしていましたが、

この時初めて、
私の「老いの兆し」を知りました。


30代後半|午前11時過ぎ

夏も終わりかけた休日、
ショート丈のパンツ姿の私に、

テレビゲームに夢中のはずだった
小4の息子が、

ふと冷めた視線を向け、

「ーーー年とったホステスが、頑張ってるみたい。」


「ゔぇーーー。」💦
まだ、いけると思っていました。

10歳になった男の子の母親への眼差しは、
誰よりも容赦のないものでした。



40代半ば|午後1時過ぎ


人生初の転職。

かつての知人と
顔を合わせるたび、

「全然、変わらないね」と
挨拶を交わします。

そんな、はずはない。

けれど、
互いの容貌はまだ、

社交辞令という
許容範囲に収まっていたのです。



50代前半|午後4時過ぎ


ある朝、洗面所の鏡に映った自分に、
脳が戸惑っていました。

それまでの
軽微な変化の積み重ねは、

想像と現実の区別が苦手な脳を
うまく誤魔化してくれていたのです。

けれど、とうとう
適応の範囲を超えました。

ーーーこの鏡の中は、私?




怒涛の50代半ば~|午後5時頃


疾風怒涛は、
思春期の季節だけではありませんでした。

ラッシュ・アワーのように、

多重課題が
多重目標が
多重役割が
多重責任が

乗車率3倍の
車内のように、

私の中へぎゅうぎゅう
詰め込まれていました。

もう、ひとりも入れない。

体が
心が
魂が
きしみを上げて、
締めつけられる。


それでも、
体力が
気力が
知力が
残っていた。

自分好みの
髪を整え
眉を描き
大人の装いを纏い

時には、颯爽と歩く。



それは、
誰のため
何のために

心のスノードームが
揺さぶられ、

いつまでも舞い続ける雪が
視界を遮り、

瓶の中身が
ガラスの向こう側が
見通せないまま、

心も体も
焼き尽くされ、

青く澄んだ空は、
灰色になりました。



60~65歳|午後7時頃

成果目標、リモート会議、大量メール、山積み書類

退職は、それらすべての
しがらみからの解放です。

もう、嫌な相手と
顔を合わせる必要もない。

怨憎会苦と
すべての束縛から解き放たれ、

心から感じる心地よさ

高揚感とともに
高く空中へ舞い上がり、


ーーー安心しきって、
ーーーゆっくり降りていく



ソー・ビューリフォー🎉🎉🎉





さあ、午後7時
ワインを🍷
ディナーを
楽しむ時間

ゆっくり湯船に浸かり、
好みの音楽を聴き、

好きなことをしていい
自由な時間🕛




怒涛の季節が去ると🍃
外は、もう黄昏れていました。

これまで累積した
体の
心の
魂の疲れ、
全身の衰えが、
次々と顔を出します。


なのに、心には
かつてない余白が広がり、

透き通った
スノーボールのように、

自分の体を
家族の想いを
遠い過去までもを
静かに眺めることができる。


脳の奥に仕舞い込んでいた、
傷ついた心たち

それらは、今見れば
何てみずみずしいのだろう。


しばらくは
理由を求めたりもしましたが、


親も、子どもも、夫も、自分自身も、
みんなそれぞれが、

ひとりの人間として
自分の人生を懸命に生き抜いている。

ーーーーーそうか。



病も症状も
消えてはくれませんが、

この自由な心には
手出しはできません。






皆様、どうぞご自愛くださいませ💕









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