金髪と坊主
「ねえ」
「TOEICとれたら金髪にするわー」
前触れなく届いた娘からのLINE。娘は4月から大学生となり、県外で一人暮らしをしている。大学の課題として夏までにクリアしないといけないTOEICの基準がある。それがとれたら、金髪にすると言う。娘は用事がある時だけLINEしてくる。今回は用事LINEではなくて、意思表明LINEだった。
金髪かあ、金髪ねえ…。想像してみるが、想像つかない。わたしの中では、娘は黒髪ボブが一番似合っていると信じている。子どもの頃から、どうしようか、と聞かれたら、いつもボブを勧めてきた。ちびまる子ちゃんのようなおかっぱが、とても似合うのだ。高校を卒業してから、茶髪ボブになった。まあ、それはそれで良いのだが。
わたしは黒髪ボブが好きだけれど、本人の好きなようにするのが一番だろうと思い、返信した。
「あら、がんばらんとね」
娘からは
「がんばります」
とひと言。
きっと、金髪目指してがんばるだろう。
わたしも、大学生の時に坊主にしてみたい時期があった。ICONIQの坊主姿に憧れていたのと、くせ毛が嫌になっていたのだ。母に電話で、
「坊主にしたら、どうかな?」
と、聞いてみたことがある。母は、少し考えてから、
「あんたは頭の形が悪いけん、やめた方がいいね」
と言った。
そのひと言で、わたしはすっぱり坊主をあきらめる気になった。確かに頭の形がきれいだからこそ、坊主が生きる。頭の形は、努力ではどうにもできない。そして、わたしは頭の形が悪い。
母が、人の目を気にして、とかではなく、わたしの頭の形を気にして答えてくれたことで、すーっと坊主への熱が冷めた。その代わり、わたしは頭の形の悪さが目立たないように、ベリーショートにした。母にはすこぶるほめられた。母は、わたしがショートにすると、似合うと言ってよろこんでくれる。それは今も変わらない。
娘はいつ金髪になるのだろう。金髪ボブも、悪くないかもしれない。娘からの報告LINEを気長に待っていようと思う。
