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「何の役に立つの?」と思っていた38年が、今になって役に立っている

「これって、何の役に立つんだろう」

会社員だった頃、そんなふうに思ったことが何度もある。

毎日の仕事は、決して派手ではなかった。

目の前の仕事を片づける。

人と人の間に入る。

誰かから相談を受ける。

話を聞く。

必要なことを調べる。

相手の話を聞きながら、何を求めているのかを考える。

そんなことの繰り返しだった。

それが、キャリアになるなんて思っていなかった。

ましてや、会社を辞めたあと、自分の仕事として役に立つなんて。

あの頃の私は、想像もしていなかった。



会社員として身につけたもの

38年間、会社員として働いた。

長い。

あらためて数字にすると、自分でも驚く。

でも、その38年間で身につけたものを聞かれたら、私は以前なら困っていたと思う。

「何ができますか?」

そう聞かれても、

「これです」

と胸を張って言えるようなものが思いつかなかった。

資格があるわけでもない。

誰もが知っているような専門職でもない。

会社の中で必要とされていたことが、会社を離れたら何の価値もなくなるような気がしていた。

だから、退職してから、

「私には何ができるんだろう」

と、あらためて考えることになった。

そこで思い出したのが、人の相談に乗っていたことだった。


私は、人の話を聞くのが好きだった

会社員時代、仕事のことだけではなく、人から相談を受けることがあった。

悩みを聞いたり、話を整理するのを手伝ったり、どうしたらいいかわからないという話を、ただ聞いたり。

私は、すぐに答えを出そうとはしなかった。

まず、その人の話をじっくり聞く。

何に困っているのか。

本当は何を言いたいのか。

何を大切にしているのか。

話しているうちに、本人も気づいていなかったことが見えてくることがある。

「そういうことだったんですね」

「自分でも、そこが気になっていたんだとわかりました」

そんな言葉を聞くと、うれしかった。

でも当時は、それを「自分の強み」だとは思っていなかった。

ただ、人の話を聞く。

相談に乗る。

それだけのことだと思っていた。


「それだけのこと」が、仕事になるなんて

退職して、自分の仕事を考えるようになったとき。

ストレングス・ファインダーに出会った。

自分の強みを知る中で、私が自然にやってきたことにも、意味があったんだと思えるようになった。

人の話を聞く。

相手の気持ちを考える。

気になったことを調べる。

情報を集める。

バラバラになっているものを整理する。

相手にわかりやすく伝える。

これまでたいしたことではないと思っていたことが、少しずつつながっていった。

そして気づいた。

私は、会社員時代に何もしていなかったわけではない。

ただ、自分が何を積み重ねてきたのかを、言葉にできていなかっただけだった。

キャリアは、そのときには価値がわからない

今、私は自分の強みを知りたい人や、自分らしい働き方を考えている人の話を聞く仕事をしている。

その人が、私には何もないと思っていましたと言うことがある。

そんなとき、私は少しだけわかる気がする。

私も、そうだったから。

会社員時代に身につけたものを、これはキャリアになるなんて考えていなかった。

ただ、その場その場で必要なことをしていただけだった。

人の話を聞いた。

相談に乗った。

調べた。

考えた。

人と人の間に入った。

その一つひとつが、何年も経ってから、今の仕事につながっている。

そう考えると、キャリアというものは不思議だと思う。

経験している最中には、その価値がわからないことがある。

何年も経ってから、あの経験が、ここにつながっていたんだと気づくことがある。


「無駄だった」と思った時間もある

もちろん、38年間を振り返って、

「全部が必要だった」

なんて、きれいには言えない。

苦しかったこともあった。

もっと違う働き方をしてみたかったと思うこともある。

もっと早く自分のことを知っていたら、と思うこともある。

「あの頃の私は、何をしていたんだろう」

と思うことだってある。

だから、過去を全部肯定しようとは思わない。

ただ、今になってわかることがある。

そのときには意味がわからなかった経験でも、

あとから誰かの役に立つことがある。

自分では当たり前すぎて、価値だと思っていなかったことが、

誰かにとっては「助かること」だったりする。


キャリアは「つくる」だけじゃない

以前の私は、キャリアとは、資格を取ったり、経験を積んだりして、自分でつくっていくものだと思っていた。

もちろん、それも間違いではない。

でも、今はもう一つの見方をしている。

キャリアは、「つくる」だけではなく、「見つけ直す」ものでもある。

これまで歩いてきた道を振り返ってみる。

何度も繰り返してきたこと。

人から頼まれてきたこと。

苦労せずにできたこと。

なぜか気になってしまうこと。

夢中になってしまうこと。

そこには、自分でも気づいていなかった「その人らしさ」が隠れているのかもしれない。


だから、今の私が伝えたいこと

もし今、私には何もないと思っている人がいたら。

私は、本当に何もないのかなと、一緒に考えてみたい。

大きな実績じゃなくていい。

資格じゃなくてもいい。

人から褒められたことでなくてもいい。

これまでの人生で、

何度もやってきたこと。

人から相談されたこと。

つい自然にやってしまうこと。

そんな小さなところに、自分のキャリアの種があるかもしれない。

私自身が、そうだったから。


38年間。

その長さに比べれば、私が今やっている仕事は、まだ始まったばかりだ。

でも、最近ようやく思う。

会社員だった38年間は、起業する前の、何も関係ない過去ではなかった。

あのとき人の話を聞いたこと。

誰かの相談に乗ったこと。

相手の気持ちを考えたこと。

わからないことを調べたこと。

一つひとつは小さかった。

けれど、それらは消えていなかった。

時間を越えて、今の私の中にちゃんと残っていた。

そして今度は、それを誰かのために使うことができる。

そう考えると、これまで歩いてきた道も、少し違って見えてくる。

「何の役に立つの?」

そう思っていた38年が、今になって、少しずつ役に立っている。

そして私は、まだこれからも、自分の中に眠っているものを見つけていきたいと思っている。

キャリアは、これから何を足すかだけじゃない。

これまでの自分の中に、何があったのか。

それを見つけ直すことから、次の一歩が始まることもあるのだと思う。


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