書店パトロール121 本を三冊買って10,000円近くなる時、人間は死ぬ
最近は本が高額になっている。の、で、購入するには躊躇うことが多い。
ので、気になった本を空想の籠に入れて、いくらになるかを見てみよう(いや、買えよ)
まず、崔洋一の本を手に取る。なかなかに分厚く、然し、値段は3,000円を超える。
これだけの情報が3,300円、外食2回分にも満たない額だと考えると、安いのかもしれない。崔洋一、と、いえば、『血と骨』だ。北野武の血と骨を思い出す。あれは、結構パンフレットが分厚かった記憶があるんだよなぁ。2004年の映画だ。あの頃は、前年に、『座頭市』がありましたし、たけしさんもノッてましたね。なんか肉は蛆が湧いてると旨いんだよ!的なことを仰ってましたね。
その前に、2002年に、『Dolls』があったでしょう。あの映画、実写版、つーか、現代版『春琴抄』が入っていましてね、以前noteにも描きましたが、武さんは教養がありますから、それを自分の映画に転身させているわけで、まぁ、そういう藝術を作るための血と骨として、文学作品も読んでいるのだと思います。
で、まぁ、そんな上手いこと言おうとしてあんまり上手くない、そういうことはよくありますけれどもね、『Dolls』には繋がり乞食っていう、紐でつながった乞食が出てくるんですね。それを、西島秀俊さんと菅野美穂さんが演じられていらっしゃる、ん、ですが、私、立ち読みしていた黒柳徹子の対談本でね、確か永六輔さんだったと思うんだけれども(間違ってたらすみません!買って確認してちょ!)、子供の頃につながってる夫婦がいた、みたいな話をしてるんで、これって同一人物なのか、それとも、そういう人たちが一つの形態としてたくさんいたのか…とね、不思議に思ってね。でも存在しているわけですよね。ハマのメリーさんとかと一緒でね。そういう人を見た、と、いう記憶も、もう世界から無くなって、記録としてだけ残るようになるわけです。記憶、は、誰か一人でも覚えていたら、世界に、有機的に存在しているわけですけれども。
こういう連鎖みたいなことが、読書をしたり映画鑑賞をしていると出てきてね、それが面白いんだけれども、全然それとは違うけれども、稲垣足穂について書かれた山岡明の『小説稲垣足穂』、これはタルホ目当てで読んだんですけれども、本筋の、それとは関係ないエピソードで、戦後間もない頃に、著者が見た光景が書かれています。駅のホームで、ボロボロの服を着た女性が虚ろな目をして歩いている、顔はすごく整っているんだけれども、もう気が違ってるようでね、そこに、全身垢だらけの、汚れた服を着た太った少年のような男がまとわりつきながら歩いている。彼は、「今晩は一緒に寝ろなぁ」と言いながら、虚ろな目をした女性と歩いていく。それを見ている作者と、駅のホームにいた人たちがハラハラしている、という、そんなシーン、何故か、それを思い出したんですね。こう、戦後焼跡派の野坂昭如先生は、物乞いみたいなことして暮らしていた、と、言っていたけれども、やはりね、恐ろしい話ですよ。こんな過去が80年前なんですから、とんでもないなぁ、と。まぁ、あんまり本筋と関係ない話でね。
で、この本はおすすめか、と、問われたら、まぁ、タルホファン以外にはおすすめしませんね。
この表紙の絵がね、なんというか、ジャン・ヴィゴ監督の、2本だけの作品のうちの一つの、『アタランタ号』に出てくる、ミシェル・シモンを彷彿とさせるんですね〜。つーかこの絵やべーな、と、思いながら、先程の駅のホームでの描写も相まってね、この本は魔書みたいですよ。
ジャン・ヴィゴさんは、フランスの映画監督で、ヌーヴェルヴァーグの監督たちから大変尊敬されています。ジャン・ヴィゴ賞がありますからね。
これは才能のある映画監督個人に与えられる賞です。ジャン・ヴィゴさんは、29歳で亡くなられました。天才映画監督と言われていますね。まぁ、つまりは、映画界における芥川賞みたいなもんです(ぜんぜん違う)。


で、80年、まぁ、実際は戦後81年。で、中上健次がね、ちょうど生誕80年だそうで、『ユリイカ』の特集号が出ていました。1か月前ほどに刊行されていたんですね。
今こそ中上健次ってな感じでね。真っ白な装丁でね、すごく分厚いんだ。でも高いんだね、2,000円代後半ですよ。
こういう論考とか、評論、作者についての対談・鼎談、そんなことがフルボリュームでこの値段なら、そらぁ安いですよ。でもやはり、こういう本もなかなか売れないのだろう。
これで5,940円になりました。
そして、美術本のコーナーに移動すると、中原淳一の評伝が売っていた。
これは今年の2月に出ていたんだなぁ。気づかなんだ。これは3,000円を超える。が、とてもしっかりした濃い内容の本で、欲しいなぁ、と、思うのだが、然し、今、私の空想の籠には3冊の本が入っており、それだけ10000円近くするのだ。本が3冊で10000円!正確には、三冊で、9,040円!
恐るべきことだ。10000円あれば、漫画なら20冊くらい買えるのではないか?と、思うのも今は昔、で、あり、既に10000円なら、12冊くらい買って軽く到達する領域にいよいよきており、少年誌の単行本だって、16冊とかくらいしか買えない。値上がりは続いている。先日、『宇宙兄弟』の最終感が1,100円を超える値段で発売されるのを識り、
腰を抜かした。1,131円とか、こう、大判の、特殊な漫画、っていうイメージだったのに、そういうのは、もう2,000円くらいの時代なのだ。
然し、安心してほしい。なぜなら、私は文句を垂れているだけで、1冊も買っていないからだ。私の今日の空想上のお買上げ額9,080円、けれど、所持金は、柴三郎が2枚もない。そう、詰んでいたのだ、はじめから。1冊も、買えなかったのだ。
