「子どもが自分らしくいられる居場所を」エル・マージの子ども食堂│郡山市
こんにちは、ふくしまるーつ編集部です。
今回ご紹介するのは、福島県郡山市にある「エル・マージ子ども食堂」です。
運営しているのは関根由香利(せきねゆかり)さんとご両親。そして地域の方々も一緒になった少人数チーム。子どもも大人も一緒に関わることで、みんなで温かい場を作り上げています。
今回は、ふくしまの空気と一緒に、エル・マージ子ども食堂の代表、関根さんお話を伺いました。子ども食堂を始めたきっかけや運営の工夫、そしてこれからの展望まで、子どもたちや地域への想いを余すところなくお届けします。
編集部:関根さん本日はよろしくお願いします。
今回は取材をお受けいただきありがとうございます。まずは自己紹介からお願いします。
関根さん:こちらこそよろしくお願いします。
エル・マージ子ども食堂を運営している関根由香利です。
編集部:関根さんが子ども食堂エル・マージの運営をスタートされたのは2024年12月でしたよね? まずは、子ども食堂を始められたきっかけを教えていただいてもよろしいでしょうか。
関根さん:きっかけは、友人の子ども食堂への取材に付き添ったことです。
そこで、子どもたちが畑で野菜を育てながら食育も兼ねて、のびのびと過ごしている姿を見て、「こんな場所があるんだ」と感動しました。
もともと私は、子ども向けプログラミング教室の先生をしていて、夏休みなどには体験活動も行っていました。
子どもたちが楽しそうにしている姿を見て、同じように体験活動を通して喜んでもらえる場所を作れたらと思ったんです。
編集部:なるほど、取材で見た子どもたちの楽しそうな姿がきっかけだったんですね。自分でも同じように、体験活動を通して子どもたちに喜んでもらえる場所を作りたいと思った、その気持ちがすごく伝わってきます。
それで、ご両親に相談されたと伺いましたが?
ご両親の反応はいかがでしたか?
関根さん:父は以前から「地域に恩返しがしたい」と考えていて、「毎月1回やってみようか」と背中を押してくれました。母も「子どもたちが安心して過ごせる場所になるなら」と応援してくれました。
子ども食堂の会場も、両親が長年営んできた喫茶店を使わせてもらうことができました。
編集部:お母さまの相楽治江(さがらはるえ)さんも、子ども食堂の運営に携わっているとか?
関根さん:はい、母も運営に関わっています。母の力は偉大ですね(笑)。父は現在入院中ですが、母が食事の提供などをしっかり支えてくれています。

写真:編集部
単なる食事を提供する場ではなく、出会いの場に
編集部:子ども食堂の名前は「エル・マージ」ですが、どんな意味が込められているんでしょうか?
関根さん:はい。「エル・マージ」にはいくつか意味を込めているんですね。
「エル」は両親が営むお店の名前から取りました。
『マージ』は英語の merge からで、「融合」や「つなぐ」という意味です。
編集部:なるほど。つまり、単に食事を提供する場ではなくて、いろんな立場の人が出会い、つながる場所ということですか?
関根さん:そうです。子どもと大人、地域と家庭、支える側と支えられる側。
いろんな立場の人たちが出会い、違いを超えて混ざり合い、未来につながる場所を目指しています。

写真:関根さん
「エル」に込められたもう一つの意味
編集部:『エル』にはもう一つ意味があると聞きましたが?
関根さん:はい。「エル」には 「得る」 という意味を重ねています。
・ここに来る子どもが安心や挑戦の機会を得る。
・大人たちは誰かの役に立つ喜びを得る。
・地域は未来を育てる希望を得る。
・人と人が融合(マージ)することで、新しい価値を得る。
両親が長年営んできたお店の名前と、この4つの「得る」とマージ を掛け合わせて、子ども食堂の名前を 『エル・マージ』 に決めました。
子どもも大人も安心できる開かれた場所にしたい
編集部:毎月の参加はインスタグラムから募っているんですよね。参加枠は何名でしょうか?
関根さん:参加枠はお店のスペースの都合上、25名です。募集は開催の2週間前の朝10時に告知をして、受付はその日の夕方5時からにしています。
最初は先着順だったのですが、どうしてもいつもスマートフォンを見られる方が有利になってしまって。
編集部:なるほど。早い者勝ちにすると、一見公平に見えても、実はそうではない部分がありますよね。
関根さん:そうなんです。だから今は、これまで参加したことのない方を優先しています。続けて来てくださっている方には、今回はごめんなさいとお伝えすることもあります。
編集部:25名という限られた定員のなかで、どうすれば機会を広げられるかを考えているんですね。
関根さん:そうなんです。この場所ではどうしてもこの人数が限界で...。お断りすることもありますが、次の月は優先的にご案内できるように配慮しています。
編集部:なるほど。ただ枠を埋めるのではなく、「誰かだけの場所にしない」ための工夫なんですね。参加条件などは決められているのでしょうか?
関根さん:子育て世代であればどなたでも大丈夫ですし、子どもだけの参加もOKです。
できるだけ間口は広くしておきたいと思っています。
体験活動で育む自分らしさと学び
編集部:エル・マージ子ども食堂では、食事の提供以外にも体験活動にも力を入れていますよね。
関根さん:正直に言うと、子ども食堂を始めた当初は資金に余裕がなく、大きな活動はできませんでした。ですので、「今あるもので何かできないか」と考えるところからスタートしたんです。
そこでまずやってみたのが、そのクレヨンを使ってキャンバスに絵を描くワークショップです。
編集部:おお~ワークショップですか?
自由に描いてもらうだけなんですが、子どもたちの表情が本当に生き生きしていて、「あ、これだな」と感じました。
編集部:子どもたちが楽しそうにしている様子を見て、やり方や方向性が見えてくる瞬間って、本当に胸が高鳴りますね。
関根さん:そうなんです。最初は「楽しいことをやろう」くらいの感覚だったんですけど、やっていくうちに、これってすごく意味のある時間だなって思うようになりました。

また、別の体験活動では、エコキャップを色ごとに分け、小さく切ってアイロンで溶かし、アクセサリーやキーホルダーの形にして作りました。
子どもたちは、自分の手で作った作品を友だちやスタッフに見せて、「見て!僕が作ったんだよ」と嬉しそうに披露してくれたのが印象的でしたね。

写真:関根さん

体験活動では、ものを作って楽しむだけでなく、環境問題や資源の大切さについても学べるようにしています。
その他にも、風鈴に絵付けをしたり、アロマスプレーを作ったりと。
できることを少しずつ増やしていく、そんな感じでした。





「なるほど!」と考え込む姿が頼もしく見えます。
写真:関根さん
大きな予算はなくても、工夫次第でできることはあるので、そうやって、一歩ずつ活動の幅を拡げていっています。
編集部:活動を続けていく中での費用面って、正直なところ大変さもあると思うのですが、そのあたりはどうされていますか?
関根さん:はい。寄付や協力のおかげで、充実した活動ができています。資金面も、JPみらい財団やコープみらいの助成金を活用しているので、他の子ども食堂より充実していると思います。
お店のお客さんはもちろん、「活動に使ってください」と寄付金をくださる方や、食材を持ってきてくださる方もたくさんいるんです。

そのおかげで、子どもたちにより充実した体験活動を届けられるようになりました。私ひとりでやっているというより、地域のみなさんと一緒につくっている活動だなと感じています。
自分らしさを見つける居場所にも
編集部:活動を続ける中で、印象に残っていることはありますか。
関根さん:子どもたちが自然に役割を担おうとする姿ですね。「お箸を配りたい人?」と聞くと、たくさん手が挙がるんです。やらされるのではなく、自分から進んでお手伝いをしてくれるんですよ。
編集部:安心できる空間だからこそ、ですね。
関根さん:そう思います。学校ではなかなか食が進まない子が、ここでは完食することもあります。環境が変わるだけで、子どもはこんなにも変わるんだと実感しています。
それに、お手伝いを通して「自分にもできることがある」と感じる瞬間が、子どもたちの自信や笑顔につながっていると感じます。小さな役割でも、みんなで協力してやり遂げる喜びを味わえるんです。
そんな瞬間を見るたびに、子どもたちが一歩ずつ成長しているのを肌で感じられて、私自身も励まされますね。
子育て世代のお母さんの交流のきっかけにも
編集部:他の地域の子ども食堂との交流はあるのでしょうか?また、子ども食堂というと、どうしても子どもが主役という印象がありますが、その点についてはどうお考えでしょうか?
関根さん:郡山市子ども食堂ネットワークの会議が数か月に一度あって、活動報告を共有したり、お互いの取り組みを学び合ったりしています。
実際に、ほかの子ども食堂へ見学に行かせてもらったこともあります。「どんなことをしているのか」「どんな工夫をしているのか」を横のつながりの中で学べるのは、とても心強いですね。
子ども食堂は、子ども達が主役はもちろんですが、子育て世代のお母さんたちも孤立しやすい現状があります。
幼稚園の頃は保護者同士の交流も多いのですが、小学校に上がると親同士が話す機会は一気に減ってしまいます。近所付き合いも昔ほど濃くなく、気づけば悩みを一人で抱えている、ということも少なくありません。
だからこそ、この場所で顔見知りになって、何気ない会話ができること。
それ自体に意味があると感じています。

子ども食堂の運営には課題も
編集部:子ども食堂を運営していく中で、続けるのはどんなときに大変だと感じますか?
運営をスタートされてから見えてきた課題や、特に悩まれる場面についても教えていただけますか。
関根さん:まずは人手の問題です。ボランティアの方も協力してくれていますが、もっと人手があれば、無理をさせずに運営できる状況です。
母の相楽治江(さがら はるえ)は料理を担当し運営を支えてくれていますが、昼のランチ営業や夜の居酒屋営業もあり、体力的な負担は大きいです。父が入院中ということもあり、今は特に人手が限られています。

次に、食材や運営費の問題です。食材費や光熱費もかかりますし、物価高の影響もあります。参加費を高くすれば来づらくなります。でも無理をしすぎれば運営自体が続きません。そのバランスを、いつも悩みながら探っています。
編集部:そうですよね…。毎月の運営を考えると、本当に大変なことだと思います。
運営資金や食材は、どのように確保されているのでしょうか?
関根さん:運営資金については、ふくしま未来研究会やみやぎ生協・コープふくしまといった団体からの活動助成金を運営に充てています。食材については、子ども食堂ネットワークからの提供のほか、寄付でいただくことも多いですね。
他の子ども食堂と比べると、少し余裕があるかなと思いますが、助成金が終わったあとも自然に活動が回る仕組みを作ることが、今の大きな課題です。

子ども食堂のやりがい
編集部:一年間活動されてきて、やりがいを感じた瞬間も多かったと思います。印象に残っているエピソードはありますか。
関根さん:やっぱり嬉しいのは、「毎回楽しみにしている」と言ってもらえることですね。
「前回来られなくて残念だった」
「今回は参加できて嬉しい」
そんな言葉をかけてもらうたびに、続けてきてよかったなと思います。
今回も、(2026年2月開催)新規の方がインフルエンザで二組キャンセルになり、キャンセル待ちの方が参加できました。でも、新規優先のために来られなかった方もいて…。
そこはどうしても心苦しいですが、それでも「行きたい」と思ってくれる方がいるのが、何よりのやりがいです。
あとは、子どもたちの表情ですね。
食事を囲んでいるときの笑顔や、体験活動で「できた!」と目を輝かせる瞬間をみるたびに「またやろう」と思えます。


学校や家庭では内気な子どもが、子ども店長のように率先して周りの子どもに接している姿を見ると、やりがいを感じますね。
次にどんなことをやろうか考えるのは大変ですが、自分自身も楽しめるんです。
エル・マージ子ども食堂のこれから
編集部:これからのエル・マージ子ども食堂の活動について教えていただけますか。
関根さん:助成金や寄付に頼らなくても、運営を継続できる仕組みをつくらないといけないと考えています。その一つとして、子どもたちと一緒に制作した小物の販売を考えています。
編集部:販売収益を子ども食堂の運営資金に?
関根さん:はい。ただ、収益が目的というより、体験が循環する仕組みを作りたいなと思っています。参加した子どもたちには、「自分が作ったもので誰かが喜んでくれた」という経験をしてほしいと考えています。
それもまた、大切な学びだと思います。
子どもが「自分らしく」で居られる場所で在りたい
編集部:最後に、エル・マージとしてのメッセージをお願いします。
関根さん:エル・マージは、子どもたちの好奇心や探究心の芽を、そっと育てられる場所でありたいと考えています。
まずはこの活動を知ってもらい、地域のみなさんに「応援したい」と思っていただけるように、少しずつ広めていきたいです。
編集部:ありがとうございました!
エル・マージの活動が、子どもたち一人ひとりの「自分らしさ」を育む大切な場であること、あらためて感じました。
これからも地域の皆さんと一緒に、この居場所が広がり、子どもたちの笑顔や可能性が増えていくことを心から応援しています。
関根さん:こちらこそ、ありがとうございました。
子どもたちや地域の皆さんと共に、これからも一歩ずつ大切な居場所を育てていきたいです。
エル・マージ子ども食堂

福島県郡山市にある エル・マージ子ども食堂 は、地域の子どもたちが安心して過ごせる居場所と、親子や地域の方々との交流の場を提供しています。
●場所:福島県郡山市島二丁目8‑30 「喫茶エル」
●開催日:毎月第3日曜日 11:00〜14:00(変更の場合あり)
●参加対象:子ども(中学生以下)とその家族料金:子どもは無料、大人は子どもと一緒の場合 300円程度
●定員:25名(新規参加者を優先)
●運営:関根由香利さんとご家族、ボランティアスタッフの皆さま。
また、エル・マージ子ども食堂では、工作・料理・実験などの体験型イベント も行われており、子どもたちは遊びながら学び、大人とも自然に交流できます。
体験活動の様子や、 毎月のエル・マージ子ども食堂の公式インスタグラムをチェック!
エル・マージ子ども食堂への参加は公式LINEから
エル・マージを子ども食堂への参加は、公式LINEから確認・予約できます。
気軽に友だち追加して、イベント情報や体験の申込みをチェックしてください。

エル・マージ子ども達へのご支援・ご協賛のお願い
エル・マージ子ども食堂では、子どもたちが地域や他世代とのつながりを感じながら、興味や関心を広げる体験活動を行っています。
この活動を支えるため、皆さまからのご支援・ご協賛を募集しています。
ご支援いただけるもの
◎現金 (銀行振込)
◎食材(賞味期限内のものに限ります)
◎物品(子どもたちの活動や学びに活用できるもの)
ご支援の使い道
いただいたご支援は、子どもたち一人ひとりが体験活動に参加できる資金として、大切に活用させていただきます。
お問い合わせ・ご協賛方法
インスタグラム:エル・マージ子ども食堂のアカウントから関根さん宛にご連絡ください。
公式LINE:公式LINEのメッセージからもお問い合わせ可能です。
取材のご相談・お申し込み

ふくしまるーつでは、福島で生きる人たちの「これまで」と「いま」を取材し、うまくいっている話だけでなく、迷いや葛藤も含めた等身大の物語を発信しています。
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企画・取材・執筆
ふくしまるーつ編集部│森崎遼平
