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「パテック杯」途中経過のご報告と、新作掌編

「パテック杯」企画にお付き合いいただき、
ありがとうございます。

現時点での応募総数が、40作品を超えました。
改めて感謝申し上げます。


こちらのマガジンに全エントリー作品を収録しています。気軽にコメントも残していただけると、きっと応募者の励みになります。



ところで、当初の「パテックが5作品を選び、その中から読者投票を行う」というルールのままだと、個人の趣味嗜好に大きく左右され、取りこぼしが多く発生する懸念が出てきました。


そこでルールを一部改変し、より皆様が納得して楽しめる企画になるよう、検討中です。
詳細は作品受付締め切り後に発表いたします。

受付期間は、4月25日(土) 23:59までです。
引き続きご応募、お待ちしております。

パテック杯に関するお知らせは以上です。

以下、「コンテスト」をテーマに、
久しぶりに恋愛で掌編を書きました。

どうぞ、よろしくお願いします。


パテック



タイトル

「ファインダーの向こうで」


僕は昔からカメラや写真が好きだった。

もう15年近く前、大学二年生だった頃の話。僕は初めての彼女と付き合って、一年くらい経っていた。

医療系の小さな大学だったが、毎年秋に文化祭が開かれていた。恒例イベントの一つに「ミスコン」があった。

そのミスコンに、
僕の彼女がエントリーすることになった。

……正確に言えば、半ば数合わせでエントリーさせられたというのが実際のところだった。文化祭実行委員であった彼女に、白羽の矢が立ったのだ。

同じく実行委員だった僕は、Canonのエントリーモデルの一眼レフを趣味で持っていた。ただ、撮影技術はまだまだだった。

しかし、
「君の彼女のミスコン用の写真は任せた。」
とミスコン担当者から告げられてしまった。


ある日、ミスコンの候補者達と撮影係が集まり、合同で撮影が行われた。

僕は周りからの視線を浴びながら、
ひたすらシャッターを切った。

──彼女を撮っているはずなのに、
なぜか自分のほうが見られている気がした。


慣れたカメラマンならば、モデルに色々声掛けをするものだが、僕にはそれは難しかった。

でも彼女はポージングが結構上手で、なにも言わなくても少しずつ動いて、表情を変えてくれた。
衣装も変えて500枚以上撮影した。


帰宅して二人で撮れた写真を見直した。
「どうだろう?普通にこれとかいいね」
「うーん、そうかな」

彼女はやや不服そうだった。八枚提出しなければならないが、選びきることができなかった。

……後日、場所を変えて二人だけでもう一度撮ることになった。

僕はそれに備えて「ポートレート入門」や「露出とライティング」に関する専門雑誌を読み込んだ。

二回目はさすがに、
だいぶまともな写真が撮れた。

背景が綺麗に溶けて、彼女の表情だけが浮かび上がる写真が増えていった。SDカードの容量がパンパンになるまで撮影した。


撮ったはいいが、見直すのも一苦労だった。

「自分の顔を見すぎて、どれがいいかわからなくなった」
彼女はそう言い、母親にまで相談していた。


なんとか選ばれた八枚を、Photoshop Lightroomで軽く修整し、提出した。



ミスコン当日。
僕は撮影専用席から望遠レンズで見守っていた。

文化祭のステージ上には六人の候補者がいた。

各候補者の自己アピールタイムに続いて、
「胸キュンシチュエーション告白」というコーナーがあった。

彼女の理想の告白シーンを司会者と演じていた。

──真顔で、僕は眺め続けた。



結果は三位から発表された。
彼女は、三位と二位では呼ばれなかった。

──え、これはまさか……


そう思うのには、訳があった。

文化祭前日まで、
公式ホームページで「一日一票」投票ができた。

投票期間は一ヶ月以上あったが、僕は「毎日必ず」自分のタブレットやPC、さらに大学の図書館の端末からも投票していたのだ。

彼女にも、それは教えていなかった。

漫画の人気投票やプロ野球のオールスターで、意外な人がネット住民の力で押し上げられることがある。

──僕はそれが、頭によぎった。


注目度ゼロの小さな大学のミスコン、スマホやSNSも今ほど当たり前ではない時代の話だ。
毎日投票する人なんか、ほとんどいないはずだ。

さらに現地で、僕の同期や部活の仲間たちから
「彼女に投票したよ」と何度も声をかけられた。

──それは嬉しいが、逆に焦ってきた。
ちょっと、やりすぎてしまったかもしれない。




真っ赤なスーツを着た司会者が、
軽妙なトークで盛り上げる。

「いよいよ発表です!今年のグランプリは…」

ドコドコドコドコ…とドラムロールが流れる。




……結局、別の候補者の名前が呼ばれた。

ステージ上の彼女は、どこかホッとしたような、でも僕には見せてくれたことのない笑顔を浮かべていた。

それが、ファインダー越しに見えた。

僕はカメラを下ろし、
誰かが回してくれたビールを飲み干した。


……選ばれなくて、よかったな。

(了)

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