「勝ちを聞かず、負けを聞け」荀彧の諫言術に学ぶPMOのエスカレーション作法【Salesforce×PMO×荀彧】
悪い報告ほど早く、良い報告は後でいい
頭では分かっていても、実際にプロジェクトが傾き始めたとき、この原則を実行できるPMOは多くありません。今回は、曹操配下随一の内政家であり諫言役でもった荀彧の姿勢から、エスカレーションの作法を考えます。
荀彧という「諫める参謀」
荀彧は曹操の覇業を支えた中心人物でありながら、時に曹操の判断に真っ向から異を唱えたことでも知られています。特に、曹操が皇帝の地位に近づこうとした際に反対し、最終的に曹操との関係に亀裂が生じたという史実は、荀彧という人物の一貫した姿勢を象徴しています。
彼の諫言に共通していたのは、次のような姿勢です。
主君の機嫌を伺うのではなく、組織全体にとっての損得で判断する
良い知らせより、悪い知らせ・懸念の共有を優先する
一度立場を明確にしたら、簡単には引かない
これは、現代のPMOが「エスカレーション」という言葉で扱う行為の、最も純度の高い形と言えます。
なぜPMOはエスカレーションを遅らせてしまうのか
Salesforce導入プロジェクトの現場で、エスカレーションが遅れる理由は多くの場合、次のいずれかです。
「もう少し自分たちで頑張れば解決するかもしれない」という楽観
「エスカレーションすること自体が、自分の力不足の証明になる」という恐れ
「まだ様子を見るべきタイミングか判断がつかない」という迷い
荀彧の姿勢に立ち返ると、これらはすべて「主君(上位者)にとって何が最善か」ではなく、「自分がどう見られるか」を基準にした判断になっていることが分かります。荀彧は自分の評価よりも、組織全体の趨勢を優先しました。
荀彧式・エスカレーションの3原則
1. 「勝ちを聞かず、負けを聞け」を報告の優先順位にする
好調な進捗報告は、多少後回しにしても実害はありません。しかし懸念やリスクの報告は、遅れるほど選択肢が狭まります。週次報告のフォーマットを見直す際は、「良い話」を先に置くのではなく、「懸念事項」を冒頭に置く構成に変えるだけで、エスカレーションの心理的ハードルが下がります。
2. 「言うべきこと」と「言うタイミング」を分けて考える
荀彧は感情的な場面で諫言したのではなく、伝えるべき内容と伝えるタイミングを見極めていました。PMOも、懸念に気づいた瞬間にすべてを感情的にぶつけるのではなく、「何を」「いつ」「誰に」伝えるかを一呼吸置いて設計することで、荀彧のような説得力のある諫言に近づけます。
3. 一度上げたエスカレーションは、簡単に取り下げない
荀彧は自分の諫言を安易に撤回しませんでした。PMOも、一度リスクとしてエスカレーションした事項について、上位者から「大丈夫そうだから様子を見よう」と言われた際に、安易に流されるのではなく、状況が本当に変わったのかを冷静に見極める姿勢が必要です。
エスカレーションは「対立」ではなく「奉仕」である
荀彧の諫言は、曹操への反抗ではなく、曹操の覇業を成功させるための奉仕でした。PMOのエスカレーションも同様に、上位者を困らせる行為ではなく、プロジェクトを成功に導くための本質的な貢献です。
この視点を持てるかどうかで、エスカレーションに対する心理的な抵抗感は大きく変わります。
まとめ:悪い知らせを届ける勇気が、信頼を作る
荀彧が最終的に曹操との間に緊張関係を生んだことは事実ですが、それでも彼が生涯にわたって重用され続けたのは、その諫言が常に組織全体を思ってのものだと理解されていたからです。
PMOにとってのエスカレーションも、恐れるべきものではなく、長期的な信頼を築くための誠実な行為として捉え直してみてください。
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