【映画感想】「U・ボート」| 潜水艦内の過酷な人間ドラマ
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1981年公開のドイツ映画『U・ボート』。
『ネバー・エンディング・ストーリー』や『エアフォース・ワン』で知られるウォルフガング・ペーターゼン監督の出世作であり、後のハリウッド進出のきっかけとなった代表作です。
第二次世界大戦中のドイツ海軍潜水艦U96を舞台に、極限状態に置かれた乗組員たちの日常と戦いを描いた戦争映画の傑作。1997年にはディレクターズカット版が公開され、その上映時間は約3時間半にも及びます。
派手な戦闘シーンだけではなく、閉鎖空間で徐々に追い詰められていく兵士たちの心理描写が圧巻の作品です。
あらすじ
1941年、ドイツ軍潜水艦U96はフランスのラ・ロシェル軍港を出航し、連合軍船団への攻撃任務に就く。
取材のため同乗した報道班のヴェルナー少尉は、若い乗組員たちと共に長い航海を経験することになる。
狭く不衛生な艦内での単調な生活、敵艦との遭遇、執拗な爆雷攻撃――。
乗組員たちは極度の緊張と疲労にさらされながらも任務を続けるが、戦果の裏で敵兵たちの死にも直面し、戦争の現実を思い知らされていく。
やがてU96には、危険なジブラルタル海峡突破という新たな命令が下される。
果たして彼らは生きて故郷へ帰ることができるのだろうか。
感想
実物を忠実に再現したUボートのセットで撮影されたこともあり、とにかく圧迫感がすごい映画です。
狭い艦内に50人近い男たちが押し込められ、シャワーもなく、空気は淀み、食料は傷んでいく。
観ているだけなのに息苦しくなってきます。
思わず、
むさくるしさとは
息苦しさとは
それが何か見せつけてやーるー♪
と歌いたくなるほどです。
そして当然、
くっせぇ くっせぇ くっせぇわ♪
(歌うと思ったでしょ?)
でも、この徹底した生活描写こそが本作最大の魅力なんですよね。
戦争映画というと戦闘シーンに目が行きがちですが、『U・ボート』はまず「潜水艦で生きること」そのものを観客に体験させます。
男同士のくだらない雑談。
終わりの見えない待機。
いつ来るか分からない敵襲。
爆雷が落ちるたびに艦体が軋み、誰もが息を止める。
気づけば観客も乗組員の一人になったような気分になります。
長尺のディレクターズカット版だからこそ、この精神的な消耗がじわじわと伝わってくるのだと思います。
また、本作で印象的なのは敵兵への視線です。
ドイツ軍兵士は歴史的には「悪役」として描かれることが多い存在です。
しかし彼らは、沈みゆく敵艦から聞こえる悲鳴に心を痛めます。
助けたくても助けられない。
任務のために見捨てなければならない。
その葛藤が静かに描かれていました。
ナチスの兵士であっても、彼らは感情を持った普通の人間です。
敵味方という立場を超えて、人の死を前にすれば苦しむ。
その姿を見ていると、戦争とは結局、人間同士が人間を傷つける行為なのだと改めて感じさせられます。
そして終盤。
数々の死線を潜り抜け、ようやく帰港した乗組員たち。
緊張の糸が切れ、安堵の空気が流れ始めたその瞬間に訪れる悲劇。
「あれだけ苦労して生き延びたのに」
という思いが胸に突き刺さります。
戦争映画には虚しさを残すラストが少なくありませんが、それは現実の戦争そのものが虚しいからなのでしょう。
英雄的な勝利よりも、生きて帰ることの難しさ。
そして、生きて帰れたとしても明日を保証されない理不尽さ。
『U・ボート』は、そんな戦争の本質を潜水艦という閉鎖空間の中で見事に描き切った作品でした。
観終わったあとに残るのは爽快感ではなく、重苦しい疲労感と静かな虚無感。
だからこそ忘れられない名作なのだと思います。
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