介護業界の採用が年々困難になっている理由と施設側がやるべき対策
介護業界の採用が難しくなっているのは、人手不足だけの問題ではありません。
働く側の選択肢が増えた
介護のイメージが変わっていない
受け入れる側の準備が追いついていない
複数の理由が重なっています。
そして結論を先に言うと、採用が難しいことを求職者だけのせいにしていては、何も変わりません。
採用が困難になっている5つの理由
問題の所在を正確に把握することから始めます。
簡単に辞めるという現実がある
介護業界全体として、離職率の高さは統計にも出ています。
入職して3ヶ月以内に辞めるケースは珍しくなく、施設によっては毎月誰かが入って誰かが出ていく状態が常態化しています。
この状態が続くことで、採用・育成のコストが垂れ流しになります。
補充しても補充しても追いつかない、という構造になっていきます。
ただ、簡単に辞めることを求職者の問題だけとして捉えるのは正確ではありません。
辞めやすい環境をつくっている施設側の問題が、かなり大きい。
受け入れの準備がない
教育体制がない
現場の雰囲気が悪い
入ってきた人が定着できない環境のままで採用を続けることは、穴の空いたバケツに水を注ぎ続けることと同じです。
働く場所と働き方の選択肢が圧倒的に増えた
10年前と比べて、働く側の選択肢は大幅に広がっています。
フードデリバリー
ECの物流
リモートワーク可能な事務職
副業プラットフォーム
体を使う仕事でも、デスクワークでも、自分のペースで働ける仕事が増えました。
介護という選択肢は、その中の一つに過ぎなくなっています。
特に20代・30代の求職者にとって、介護の仕事を選ぶ積極的な理由がなければ他の選択肢に流れます。
夜勤がある・身体的にきつい・給料がそこまで高くない
これらのハードルが他の選択肢と比較されたとき、介護が選ばれにくくなっています。
「他よりここを選んでもらえる理由」を施設自身が持てているかどうかが問われています。
すぐ辞めるイメージが業界全体に根強い
介護の仕事に興味を持った人が、周囲に相談すると
「介護はすぐ辞める人が多いって聞いたよ」
「人間関係がきついらしい」
という言葉が返ってくることがあります。
業界全体のイメージが、個々の施設の採用に影響を与えています。
一つの施設が頑張って良い職場をつくっても、業界イメージのせいで入り口で弾かれてしまうことがあります。
このイメージを変えるには、業界全体の取り組みが必要ですが、個々の施設としてできることは「実際に来てもらって体験してもらう」ことです。
スポットバイトや見学を積極的に受け入れ、実際の現場の空気を感じてもらうことが、イメージと現実のギャップを埋める最も確実な方法です。
教育する力が施設側にない
採用できたとしても、教育体制が整っていないために早期離職につながるケースは多いです。
受け入れの仕組みがない
新人を誰に任せるか決まっていない
マニュアルが古いまま更新されていない
指導担当が忙しくてほったらかしになる
これらが重なると、新人は孤立したまま現場に放り込まれ、3ヶ月以内に辞めます。
採用が難しいと言いながら、採用できた人を定着させる準備ができていない施設は少なくありません。
採用よりも先に整えるべきことが、現場にあります。
既存職員の意識が採用の障壁になっている
新しく来た人への態度・スポットバイトへの関わり方・現場の言葉の文化
これらが低い水準のままだと、せっかく来てくれた人が居心地悪く感じて去っていきます。
既存職員が「また新人が来た、面倒だ」という空気を出している現場には、誰も定着しません。
既存職員の意識は、一朝一夕では変わりません。
でも、管理職やリーダーが日常の関わりの中で文化をつくっていくことで、少しずつ変わっていきます。
採用が難しい原因の一部は、現場の既存スタッフの空気にあります。
施設側がやるべき3つの対策
求職者に変わることを求めるより先に、施設側が変わることです。
教える環境をつくる
新人が来たとき、
誰が担当するかを事前に決めておく
案内シートを一枚用意しておく
最初の1週間で何を覚えてもらうかのスケジュールを持っておく
これらは一度整えれば毎回使えます。
受け入れの仕組みが整っている施設には、新人が来るたびに同じ丁寧さで対応できます。
準備がない施設は、毎回ゼロから対応するため疲弊し、新人も混乱します。
教える環境をつくることは、採用活動そのものより先に整えるべきことです。
入ってきた人が定着する仕組みがなければ、採用にいくら力を入れても消耗し続けます。
今日からできること
新人受け入れ用のA4一枚のガイドシートを作ってください。
業務の流れ
注意が必要な利用者
困ったときの担当者名
この三点が書いてあるだけで、最初の一日が変わります。
来てくれた人を守る意識を持つ
新人やスポットスタッフが来たとき、守る意識で迎えられているかどうかが定着を左右します。
守るとは、放置しないこと、困っていたら気づいて声をかけること、失敗しても責めないこと、帰り際に感謝を伝えることです。
これらはコストゼロでできます。
来てくれた人が最初の一日で感じた体験が、その施設への印象を決めます。
良い体験があれば再び来てもらえます。
悪い体験があれば、それが口コミで広がっていくこともあります。
守る意識を持てる施設が、長期的に人を集め続けられます。
意識するポイント
新人やスポットスタッフが帰る前に、一言かけてください。
今日助かったこと、また来てほしいこと——この二点を伝えるだけで、記憶に残る施設になります。
業務中の雰囲気をつくる
求人票に書かれた言葉より、実際に一日働いて感じた現場の空気の方が、ずっと正直にその施設を伝えます。
挨拶があるか
スタッフ同士の言葉が穏やかか
困ったときに声をかけやすいか
これらが揃っている現場は、来てくれた人が自然と馴染んでいきます。
雰囲気は一日でつくれるものではありません。
でも、リーダーや管理職が日常から意識して関わることで、半年、一年と時間をかけて変わっていきます。
現場の雰囲気をつくることは、採用広告を打つことより遠回りに見えて、実は最も確実な採用戦略です。
今日からできること
朝の申し送りの最初に、リーダーが笑顔で一言話しかける習慣をつけてみてください。
たったそれだけで、その日の現場の空気が変わります。
まとめ:求職者だけが悪いわけではない
採用が難しいとき、施設側は求職者の質や意欲の問題として捉えがちです。
確かに、簡単に辞める人がいることは事実です。
でも、その人たちが辞めやすい環境をつくっているのはどちらかを問い直すと、施設側に変えられることがたくさんあります。
教える環境がない・受け入れる準備がない・既存スタッフの空気が重い
これらは施設側の問題です。
求職者に変わることを求めるより先に、来てくれた人が定着できる環境を整えることが、採用難を乗り越える現実的な道です。
求職者は変えられません。でも施設は、今日から変えられます。
採用できない施設は、採用活動に問題があるのではなく、採用した後の環境に問題があることが多いです。
まず中を整えることが、外から人を呼び込む最初の一歩です。
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