1.転職エージェントのその言葉、本当の意味知ってますか?
元エージェント&元RPOが明かす、エージェントの本音と建前の翻訳集
「今がベストなタイミングです」「御社にとても合っていると思います」——転職活動をしたことがある人なら、一度はエージェントからこう言われた経験があるはずだ。
素直に受け取って動いた人もいれば、なんとなく「盛ってるな」と感じつつ流した人もいるだろう。その直感、だいたい正しい。
私は人材紹介会社で3年、その後RPO(採用代行)で1年、企業の採用現場に身を置いてきた。求職者を「送り出す側」と「受け入れる側」の両方を見てきたからこそ言えることがある。エージェントの言葉には、ほぼ必ず建前がある。そして建前の裏には、たいてい生々しい仕組みが隠れている。
今回は、よく聞くフレーズを"翻訳"しながら、その裏側を解説していく。エージェントを嫌いになってほしいわけではない。仕組みを知った上で付き合えば、エージェントは強力な武器になる。知らずに言われるがまま動くのが一番もったいない、というだけの話だ。
そもそも、なぜ建前が生まれるのか
エージェントは基本的に「成功報酬型」で稼いでいる。求職者が入社して初めてお金が発生するビジネスモデルだ。つまりエージェントにとっての最短ゴールは、あなたの理想の転職ではなく、あなたがどこかに決まること。この一点をまず頭に入れておくと、以降の翻訳が驚くほどしっくりくる。
本音と建前、翻訳集
1.「今がベストなタイミングです」
建前:あなたのキャリアにとって絶好の機会です。
本音:今月のノルマにあと一枠必要です。あるいは、この求人は決裁期限が近く、悠長に選考している時間がありません。
もちろん本当にタイミングが良いケースもある。ただし「なぜ今がベストなのか」を聞いて、明確な理由が返ってこない場合は、単なる急かしだと思っていい。
2.「御社にとても合っていると思います」
建前:適性を見抜いた上でのご提案です。
本音:手元にある求人の中で、一番決まりやすそうな組み合わせです。
エージェントは基本的に、自社が保有する求人の中からしか紹介できない。世の中の求人全部を比較して「合っている」と言っているわけではないことを忘れないでほしい。
3.「他にも候補者がいるので、早めのご判断を」
建前:人気求人につき、競争率が高いです。
本音:あなたに時間をかけられている余裕がありません。あるいは単純に、決断を急がせるための常套句です。
これは本当のときも嘘のときもある。見分け方は簡単で、「他の候補者の選考状況を具体的に教えてもらえますか」と聞いてみること。答えが曖昧なら、まず煽り文句だと思っていい。
4.「非公開求人なので今しか紹介できません」
建前:特別なご縁です。
本音:非公開求人は世の中に山ほどある。単に「他では見られない」という希少性を演出しているだけのケースも多い。
非公開である理由(採用の機密性が高い、応募が殺到するのを避けたいなど)を聞いて、納得感があるかどうかで判断するといい。
5.「面接の感触、良かったと思いますよ」
建前:手応えのある面接でした。
本音:次の選考に進んでもらうための励まし。実際の評価とは無関係なことも多い。
面接直後のフィードバックは、正直なところエージェント自身も企業の本音をまだ聞けていない段階で言っていることが大半だ。話半分に聞いておくくらいがちょうどいい。
6.「御社の年収レンジだと、この金額が妥当ですね」
建前:市場相場に基づいた適正額です。
本音:紹介手数料は年収に連動することが多いため、極端な安売りをする理由はエージェント側にもない。ただし、早く決着をつけたい場合は、逆に妥協を促されることもある。
年収交渉の場面では、エージェントの利害と自分の利害が一致しているとは限らない、という前提を持っておくと冷静に判断できる。
7.「他社の選考を辞退して、こちらに集中しませんか」
建前:本気度を見せた方が印象が良いです。
本音:あなたが他社で決まってしまうと、自社の取り分がなくなる。
これは求職者側にとって、はっきり言ってエージェントの都合でしかない。他社との比較検討は、本来あなたの権利だ。
8.「書類、少し盛って書いておきますね」
建前:通過率を上げるための工夫です。
本音:話を盛りすぎると、面接での実態とのギャップに苦しむのは求職者自身。トラブルの火種にもなりうる。
多少の表現の工夫は必要だが、事実と乖離した内容には注意した方がいい。責任を取るのは自分だ。
がしかし!それでも、エージェントを使わない理由にはならない!
ここまで読むと「エージェントって信用できないのでは」と思うかもしれないが、そうではない。ビジネスモデル上、多少のポジショントークが発生するのは当然のことで、それ自体が悪だとは思わない。
問題なのは、その仕組みを知らずに、言われるがまま動いてしまうことだ。仕組みを理解した上で、「今の提案は自分にとって本当に得か」を自分の頭で判断できるようになれば、エージェントは強力な味方になる。
次回は、この理解を前提にした「エージェントを使い倒す実践ノウハウ」を書く予定なので、そちらも合わせて読んでもらえると、より実践的に活用できるはずだ。
