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値上げの貼り紙に、理由を長く書くな——9月実施までの最終準備

先週、値上げをやるなら9月だと書いた。お盆は単価が特殊に上がる期間で、そこでの反応は判断材料にならないからだ。そして10月には最低賃金の改定やインボイスの控除の変更が控えている。逆算すると、8月中に決めて、9月頭に告知し、9月中旬に実施する。

今日はその告知の話をする。何をどう伝えるか、という実務だ。

まず結論から書く。貼り紙に、理由を長く書いてはいけない。

多くの店が逆をやる。原材料が高騰しており、エネルギー価格も上昇し、企業努力を重ねてまいりましたが、誠に不本意ながら——という文章を、丁寧に長く書く。気持ちは分かる。私も飲食を経営していた頃、同じことをやった。

だが、長い説明は言い訳に見える。

読む側の立場に立つと分かる。客が知りたいのは、いつから、何が、いくらになるのか。それだけだ。そこに至るまでの事情説明が長いほど、「そんなに正当化しないといけないことなのか」という印象が残る。丁寧さのつもりが、後ろめたさとして伝わる。

だから貼り紙に入れる要素は、4つでいい。

ひとつ、実施日。「9月◯日より」と、日付を明記する。「近日」「順次」は書かない。曖昧な予告は、来店のたびに不安を残す。

ふたつ、対象。全品なのか、一部なのか。一部なら、どのカテゴリか。ここを曖昧にすると、対象外の商品まで「上がったはず」と思われる。

みっつ、新しい価格。主要な品目だけでいい。全品目を並べる必要はないが、看板商品は必ず入れる。

よっつ、一言の謝意。一文で足りる。「これからもよろしくお願いします」程度でいい。理由を書くなら、それも一文に収める。

これだけだ。A4一枚に、余白を持って収まる量になる。

そしてもう一つ、貼り紙より先にやることがある。スタッフへの共有だ。

これを飛ばす店が本当に多い。貼り紙が出た日に、客から「これ上がるの?」と聞かれたスタッフが「あ、そうみたいです」と答える。この瞬間、店の判断が「店の外からやってきた出来事」になる。値上げそのものより、店が説明できない状態のほうが信頼を削る。

スタッフに伝えるのは、実施日と対象と価格、そして聞かれたときの答え方を一つ決めておくこと。長い説明は要らない。「9月から一部の価格を見直します」と言えれば十分だ。

告知のタイミングは、早いほうがいい。私は直前まで迷って、結局ぎりぎりに貼ったことがある。黙って上がっていたと受け取られることが、いちばん失点になる。同じ内容でも、2週間前に知らせるのと当日に知らせるのとでは、受け取られ方がまったく違う。

SNSがあるなら、貼り紙と同じ文面をそのまま出す。媒体ごとに言い回しを変えない。表現が違うと、どちらかが本音に見える。同じ文面が同時に出ていることが、いちばん誠実に見える。

最後に、値上げの後にやることを一つ。実施から2週間、客数を毎日記録する。値上げの影響を測れるのは平常時だけで、9月中旬から下旬はその条件が揃っている。ここで数字を取っておけば、次に価格を動かすときの判断材料になる。10月に入るとコスト側の変化が重なって、原因の切り分けができなくなる。

今日できる一つのこと。A4の紙に、実施日・対象・新価格・一言の4行だけを書いてみてほしい。書けないなら、まだ決まっていないということだ。日付が入らないなら日付から、価格が入らないなら価格から決める。告知文が書けた時点で、値上げの準備は8割終わっている。


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