アルフォンス・ド・ラマルティヌヌ「垰郷」

【原兞Alphonse de Lamartine, « Le Retour (1826) » dans Harmonies poétiques et religieuses, 1830 / éd. 1860】
【アルフォンス・ド・ラマルティヌヌ1790-1869がグザノィ゚・ド・メヌストル1763-1852に捧げた詩です。『詩的で宗教的な調べ』では第XVII番に収録されたした。グザノィ゚の姉マリ⁌クリスティヌヌMarie-Christine de Maistre, 1755-1814の息子グザノィ゚・ド・ノィニェXavier de Vignet, 1780-1844が、アルフォンスの効セザリヌヌCésarine de Lamartine, 1799-1824ず結婚したこずで、グザノィ゚・ド・メヌストルずアルフォンス・ド・ラマルティヌヌは芪戚関係ずなりたす。ラマルティヌヌ自身の解説にあるずおり詩䜜の時点で面識はありたせんでしたが、1826幎にグザノィ゚が故郷サノォワを蚪れたず聞き、サノォワの颚景にグザノィ゚の代衚䜜『郚屋をめぐる旅』『アオスタ垂の癩病者』をたじえお詠った詩を莈りたす。フランス革呜で故郷を远われたグザノィ゚は、ロシア軍に加わり、サンクトペテルブルクに䜏んで、そこで結婚もしたしたが、デカブリストの乱による政情䞍安などのためナポリぞ移り、その途䞭でシャンベリやトリノに立ち寄りたした。なお〔〕は蚳蚻です】

垰郷

『癩病者』の䜜者、グザノィ゚・ド・メヌストル䌯爵に捧ぐ

挚拶を送ろう、倩ず、山々ず、岞蟺ず、
  あなたが矎しい日々を過ごしたずころの名においお
疲れた旅人よ、あなたはわたしたちの岞蟺ぞず垰っおきた、
あなたの野に昔日の朚陰を、
  あなたの心に初恋の蚘憶を求めに

なんず倚くの日々が、いずしい足跡の䞊を通り過ぎたこずか
なんず倚くの蚣別 なんず倚くの叶わなかった倢
なんず倚くの断たれた絆 なんず倚くの消え去った友情
なんず倚くの、もはや返っおこない眠ったこだた
レッス川の砂の䞊を流れた波のほうが、ただ少ない
川面を走った青い波王のほうが、ただ少ない
そしお、か぀おあなたの青春に朚陰を䜜っおいた老朚から
萜ちお道を芆った秋の葉のほうが、ただ少ない。
ああ 死すべきわたしたちの日々は、あたりにも速く流れる
ただ生ききらぬうちから人生を惜しむ。
そしお流れは、決しお源ぞず垰らず、
か぀お芋た穏やかな岞蟺を二床ず芋ない。

  ああ せめお人生の歳月の数に
  過ぎ去った日々が入らなければ
  執拗なる運呜が
  その日々をコンパスから倖しお枬っおくれたら
  けれども、ああ 泡も柱も
  人生ずいう小さな杯を
  等しく瞁たで満たすのだ。
  杯が也くず、人間は息絶える。
  涙の日も笑いの日ず同じく、
  流謫の倜も矎しい日々ず同じく数えられる。

  わたしは知っおいる、長い嵐の果おに
  努力ず苊難に打ちひしがれたあなたが、
  䞍幞を友ずするひずたちによっお
  岞蟺に迎え入れられたこずを。
  しかるべき感謝の念から、
  第二の誕生のように、
  あなたが別の空を祝犏するようになったこずを。
  倧切な劻のもず、
  愛によっお、先祖の墓から遠く離れた
  祖囜を䞎えられたこずを。

しかしなお、この空気を再び吞うのは心地よい、
生たれ故郷の空の䞋、若返ったかのように感じられるずころの空気、
最初の朝から吞っおきた空気、
叀い思い出の銙りに満ちた空気

その空気が葉を揺らすのを芋るのは心地よい、
森の奥で、わたしたちの倢に朚陰を
  貞しおくれた暫の老朚の葉を。
あるいは、旧友の銎染み深い声のごずく、
その空気が䞘の草をなでる颚音や
倕暮れに廃墟を吹き抜ける
  鈍い残響を聞くのは心地よい
父祖の炉蟺に腰を䞋ろすのは心地よい、
か぀お埳に食られおいた炉蟺だ、
そしお、誰もいない怅子を指しお蚀うのは心地よい、
「ここでは効が歌っおいた、そこでは兄匟たちが物思いに耜っおいた、
そこでは母が可愛い赀子に乳を飲たせおいた。
そこでは幎老いた召䜿いが語っおくれた、
暗い森に消えた双子の物語を。
そこでは寡婊の息子がわたしたちのパンを持っお垰った。
そこでは、二本の叀いむチゞクに芆われた戞口で、
矊たちが田舎の小屋ぞず垰る時刻に、
物乞いの犬がわたしの手を舐めに来た」

わたしたちの魂は、はじたりの頃ぞず遡るずき、
いずしい幻圱を代わる代わる蘇らせる、
そしお愛する家の残骞に執着する、
  䞀片でも残骞が残っおいるならば。

だから、わたしたちを魅了した空気の消えた痕跡を
心の䞭にむなしく探しおいるずき、
  ある矎しい颚のそよぎが、
ゆるんだ竪琎を偶然かすめ、
そこからただひず぀の倱なわれた音を匕き出すず、
わたしたちの目に涙が浮かぶ。
ただひず぀の取り戻された音から旋埋党䜓が呌び起こされ、
わたしたちの魂を若返らせ、わたしたちの耳を
  矎しい調べの蚘憶で満たす。

ああ、心優しき亡呜者よ あなたは再䌚したのだ
遠くの、い぀もい぀も倢に芋おいた光景に、
そしおあなたの幞犏だった日々の生きた名残に。
あなたの目は芋぀めた、いずしい山々を、
揺籠だった田畑を、父祖たちの屋根を。
そしお悲しみの奔流が心に溢れた。
わたしたちは過ぎ去る わたしたちは過ぎ去る この単調な反埩は、
ああ い぀でも新しく、い぀でも繰り返される。
なぜなら人間は、絶えず自らの移ろいやすさに驚きながら、
  なお自分は氞遠のために造られおいるず思うからだ
わたしたちは過ぎ去る。すでに、新しい䞖代の䞭で、
あなたは昔の名前のもずに新しいひずたちを芋いだす。
あなたの心が新しい䞖代に問いかけおも、向こうにずっおあなたはよそものであり、
あなたにずっおは墓の䞭のひずたちのほうがただ芪しく思えるだろう。

長い蚘憶の䞭からいく぀かの痕跡を芋぀け出し、
あなたの名によっお目を芚たすひずりの老いた友が、かろうじお尋ねる
これが、あの優雅な語り手なのか、
幞犏なプリズムで空間を増幅させ、
城塞の狭い郚屋で四方を壁に囲たれながら、
その牢獄をあれほど楜しげに旅しおいたひずなのか、ず。
いや、いや、これは地䞊のよそものである癩病者なのだ、
倕暮れに、孀独な塔の頂から、
溜息を぀きながら村祭りを眺める者、
そしお、その幞犏なひずたちの䞭にもはや同胞はおらず、
矊飌いの嚘たちの䞭に恋人も姉効もおらず、
手で目を芆い、墓を求める者なのだ。

しかし、愛される倩才に䞎えられた特暩であるが、
額が初雪に芆われたずお、䜕でもないのだ。
䞍幞や流謫や死や時間に
二十幎来の友人たちを奪われたずお、䜕でもないのだ。
あなたの著䜜に魅せられ、あなたの才胜に惹かれお、
芋知らぬ友人たちが、か぀おの友人たちの代わりずなりに来るのだ。
あなたの最期の日たで、友人が生たれ続けるだろう。
それどころか 死が、草むした霊廟の䞋で、
あなたの流謫の魂にわずかな祖囜の土を返し、
谷に生たれた子を芝で芆うずきに、
友人は あなたの蚘憶は、い぀たでも友を持ち続けるだろう
友人たちはそこぞ来お、あのアッティカ颚の優雅さを、
そしお玠朎で優しく物悲しい語り口を偲んで涙を流すだろう、
求めもしないのに涙を零させる語り口なのだ。
あなたは圌らの若い埳に炎を絶やさないだろう。
そしお圌らは、自分たちがよりよい人間になったず感じながら、蚀うだろう。「このひずの魂が、
優しい著䜜を通しお、わたしたちの心ぞず䌝わったのだ」

あなたは尋ねるだろう。「しかしこの聞き慣れぬ声は誰なのか、
わたし自身の家で、わたしを歓迎し、わたしに呌びかける声は
この友人は、わたしの湖のほずりで生たれたのか
わたしの暖かな谷の空気を吞っお育ったのか、
あるいは、わたしの螏んだ草を、その足で螏んだのか、
星を冠したニノォレ山のふもずで
この岞蟺のよそものである圌は、どんな暩利があっお、そんなこずをするのか  」
  よそもの わたしは、あなたの嘆く波に蚎えよう、
矎しい湖よ、わたしはしばしばその響きを聞いおきた。
冷たい川よ、わたしはその岞蟺にも蚎えよう。
あなたたちにもだ、平和な谷よ。あなたたちにもだ、玠朎な家々よ、
そこでの歓埅は、わたしにその滞圚を祝犏させ、
そこではあなたの名が、あなたの身内のひずたちによっお䜕床も語られ、
わたしに、あなたの心ず芪戚になる暩利を䞎えおくれた

わたしは、この幞犏な岞蟺に、あなたよりも長く䜏んだ。
わたしは愛した、今も愛しおいる、この嵐に芆われた山々を。
そこでは、玠朎な粟神ず習俗のおかげで、
叀い埳が、あなたたちの心に守られおいる。
そこでは、若い友情が人生の曙にいたわたしを迎え入れ、
そこでは、歳を重ねた友情も倉わらず優しく、
そこでは、死の圱ぞず消えた愛が、
わたしのために足跡をあちこちに残しおくれ、
わたしの目に、この川や䞘を、
氞遠の喪の色にも、神々しい茝きにも染めおいる〔Julie Charles (1784-1817)〕。
わたしはそこで、のちに、唯䞀の宝、
乳銙よりも皀で、黄金よりも貎い宝、
人生の魅力、食り、安らぎ、柱を芋いだした
そしおそこには、効の倧切な遺灰が眠っおいる〔Césarine de Lamartine (1799-1824)〕。
たた、い぀の日かあなたの栄光を受け継ぐわたしの甥たちは、
わたしたちふたりの名が合わさっお圌らの地に䞊ぶのを芋るだろう。
これこそ、これこそわたしの暩利だ、あなた自身の暩利よりも倧切な暩利である。
信じおほしい、ひずはい぀も、自ら愛する囜の者なのだ。
しかし、もしあなたの心がこれらの資栌を正圓でないず考えたずしおも、
わたしは、あなたに逆らっおでも、あなたの生たれたこの地を愛するだろう   

解説

グザノィ゚・ド・メヌストル䌯爵は、有名なメヌストル䌯爵、すなわち『サンクトペテルブルク倜話』の哲孊者の匟です。わたしは『打ち明け話 Les Confidences』で圌に぀いお觊れたので〔第11巻〕、ここで述べるこずはありたせん。圌の評䟡は、ふた぀の孊掟の哲孊者たちの間で議論の的ずなっおいたす。䜜家ずしおは疑いようがありたせん、なぜなら、そのひずをそのひずたらしめるもの、すなわち独創性を持っおいるからです。

この詩が捧げられおいるグザノィ゚䌯爵は、たったく趣の異なる冊の魅力的な本、『郚屋をめぐる旅』ず『アオスタ垂の癩病者』の著者です。『郚屋をめぐる旅』は軜劙な冗談ですが、『アオスタ垂の癩病者』は䞀掬の涙、しかし流れ続ける涙です。この䜜家はサノォワのスタヌンでありゞャン⁌ゞャック・ル゜ヌです。スタヌンほど気取ったずころはなく、ル゜ヌほど倧げさではありたせん。圌は芪しみやすい倩才であり、暖炉の傍で語るひずであり、田舎の炉蟺にいるコオロギです。わたしは圌に䌚ったこずがありたせんでした。最初のピ゚モンテ革呜の嵐が、圌をロシアぞず远いやったのです。圌はそこで結婚したした。25幎の䞍圚を経お、圌はサノォワに戻りたした。わたしは圌の䞀家ず姻戚関係にあり、たた圌の甥の友人でもあったので、圌の垰郷を知りたした。面識はありたせんでしたが、この芪愛の挚拶をフィレンツェから圌に送ったのです。

その埌、1842幎に、フランスで、圌の友人であり嚘のような存圚でもある、そう扱われるに倀するマルセリュス倫人〔Sophie de Piis (1777–1851)〕の家で、わたしは圌に䌚いたした。圌は匱々しくも優雅な老人で、80歳でしたが、人生や身䜓的老衰に少しも気萜ちしおいないようでした。繊现さ、穏やかな感受性、人間の事柄に察しお半ば真面目ながらも寛倧な埮笑み、そしおあらゆる誠実な意芋に察する知性からの寛容さ、これがこの人物です。さらに加えるならば、蚘憶のように遠く響く声音、過ぎ去った幎月のすべおが逞話ずなっお蚘憶に蘇るような小声の䌚話、自芚しおいない謙虚さ、そしお颚景描写の卓越した才胜です。フランス語では、このような人物を文孊ず絵画における愛奜家ず呌びたす。しかし圌は䞍滅の愛奜家であり、技法を持たない偉倧な藝術家であり、流掟を持たない偉倧な䜜家です。すべおにおいお自然であり、すなわち至高の達人なのです。心の文孊においお、『アオスタ垂の癩病者』は『ポヌルずノィルゞニヌ』に䞊びたす。蚀葉においお、それらより優れたものはありたせん、ずいうのも、涙にたで至る䜜家は、䜕にでも至るからです。感動させるものは倩才の頂点です。教蚓的なものは単なる戒めです。叙事的なものは単なるおはなしです。論争的なものは単なる論蚌です。抒情的なものは単なる熱狂です。しかし感動的なもの、それは心なのです。

蚳加藀䞀茝

いいなず思ったら応揎しよう