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日々俳句鑑賞362 「端正に冷えてをりたる麦茶かな」 後藤立夫

夏の暑い日、麦茶ほど体に染みわたる飲み物はない。

しかし作者は「よく冷えた」とは言わず、「端正に冷えて」と言った。この「端正」には、無駄を削ぎ落とした潔さや、きちんと整った美しさがある。琥珀色の麦茶がガラスの器に静かに満たされている姿まで目に浮かぶようだ。

さらに「冷えてをりたる」という古風な言い回しも効いている。ただ冷えているのではない。過不足なく、その冷たさが落ち着き、きちんとそこに在る。どこか折り目正しく、清潔な印象さえ与える。

夏は暑さで心も体もつい弛みがちになる。そんな空気の中、この一杯の麦茶は背筋をすっと伸ばしてくれる。涼とは単に温度のことではない。暮らしや心持ちを整えてくれることもまた、ひとつの涼なのである。


『合本俳句歳時記第五版』(角川書店)より

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