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脱北者が日本で感じた生きづらさ#136

こんにちは。

日本に来て最初にお世話になった親戚の家を飛び出し、夜間中学校に通うようになった頃の話。自分だけのプライベート空間を手に入れた私が早々に感じるようになったのは、途方もない息苦しさでした。

自分が住んでいる部屋に入ってしまえば、そこからは一人の世界。
単身脱北して、寂しさや不安に苛まれていた私にとって、この状況はかなり堪えるものでした。

私が約20年ほど暮らしてきた北朝鮮という国は監視社会ですから、プライバシーとは程遠い生活を送っていました。
関心があってもなくても、周囲をよく見る必要があります。どこの誰が政府のスパイかわからないため、いつも緊張状態で生活していたのです。

そして、周囲とよい関係を保たなければいけませんでした。
そのためには、いくつか注意すべきポイントがあります。

・韓国メディアを見ている
・日本の雑誌や音源(テープ・CD)などを持っている
・金一家や政府について少しでも批判的な話をする
・商売が繁盛しているのに、適切に(?)賄賂を払っていない
などなど…

どれも運が悪ければ公開処刑になる可能性がある事項ですが、北朝鮮で暮らす人の中で、これらにまったく抵触せずに生活しているケースは少ないと思います。

北朝鮮で安定した生活を送っている人は、まず人を信用しません。
少しでも減点要素が露見したと思えば、すぐに賄賂で帳消しにします。
周りと(賄賂で)関係を保つことを怠らなければ、大事に至らず生きていけます。

当局に密告され、”終わってしまった”人たちをあまりにもたくさん見てきたため、「自身がいつそうなるかわからない」と誰もが感じ、みな日々気をつけています。

北朝鮮で暮らす人々は人生の全般を通して、こういった洗脳を受け続けるため、遺伝子レベルで刻み込まれているのではないかと思います。

国家→個人(政府機関による監視・干渉)
集団→個人(学校・職場など所属集団による監視・干渉)
個人↔︎個人(相互監視・干渉)
といったように、あらゆるレイヤーで個人に干渉しようとする国で生きてきた私がある日、日本のようなプライバシーを尊重する社会に放り込まれたら(自ら飛び込んだのですが)、「生きづらさ」を感じるのは当然かもしれません。

来日後の暮らしを支えてくださる方々に、日本の悪いところをあげつらいながら、「日本ではやっていける気がしないため、韓国に行きたい」と訴えたこともありました。

当時を振り返ってみると、”違う星に来てしまった”という感覚さえあったと思います。

若かったせいか、”北朝鮮さえ抜け出せばどうとでもなる”と思っていた私でしたが、北朝鮮の常識と世界の常識はあまりにもかけ離れていて、完全に「世間知らずの困ったちゃん」でした。

生きるためのアルバイトと学歴を積み直すための通学に明け暮れていたある日、電車に乗っていてふと思いました。

こんなにたくさん人が乗っているのに、人が立てる音がしない。
会話している人がいてもほどほどの音量で、笑い声もあまり聞こえない。
多くはスマートフォンを見ているか、静かに座っている。

少し”怖い”という感じもありました。
人がこんなに乗っているのに、これほど静かでいいのだろうかと。

ただ、過酷な日々に追いまくられていた私にとって、その静けさはとてもありがたく、気づかないうちに眠り込んでいました。
(私はどこでも寝られるタイプです🤭)

目を覚ますと、自宅最寄の一つ前の駅に着いているではありませんか。
家に帰ってから、ちょっとスッキリした頭で、学校の宿題をしたり、入浴したりして、良い時間を過ごしました。

バイトに追われ、学校に追われ…普段とほぼ同じような1日でしたが、なぜかその日から「こういう生活も悪くないかも」と思うようになりました。

当時の睡眠時間は、平均4〜5時間ほど。
電車内の仮眠が私を支えてくれていたような気がします。

そして、日本には、私の安い給料でも楽しめるものがいっぱいあるということも、段々わかってきました。
サイゼリヤや牛丼屋さんはワンコインで美味しい食事が取れるし、100円ショップの常連でした🤭
(今でも100円ショップは大好きです。Instagramでも100均のものを活用する動画をよく見ています)

そして、人気のお店には皆きちんと列を作って待っていて、だいたい何分待っていれば入店できるのか予測がつくところも、慣れてきたら心地よかったです。

北朝鮮には、人気店(だいたい国営)に列を作って並ぶという慣習はなく、オープンしたら一気に雪崩れ込む形になるため、たいてい力持ちの若い男性が勝ちます。
国全体が貧しいため用意されている在庫は少なく、あっという間に売り切れになっていまいます。そのため、身体能力の劣る人はあきらめるしかありません。

お金がある人はお店に賄賂を渡し、裏門からVIPのように入ります👍
北朝鮮にいた時は私もその中の1人だったため😅日本の並び待ち文化に慣れるまで、少ししんどい想いをしました。

現在の私は先着順の並び待ちについて、平等でいいシステムだと心から思っています。
待ちきれなかったら、少し人気がないお店に行くか、時間をずらせばよく、選択肢が多いのがよいです。

(飲食店のアルバイトばかりでしたが)仕事さえすれば、安い給料だとしても確実にもらうことができます。それをやりくりすれば、毎日きちんと生活していくことができます。

この予測可能性が、日本での暮らしで一番気に入ったポイントかもしれません。

そして、生活していく中で困ったことは、役所を含め公共機関に聞けば丁寧に教えてくれます👍

北朝鮮の公共機関は人々を監視するために存在しているものであり、困った庶民を助けてくれることはほとんどありません。
仕方なく用事があって公共機関を訪ねる時は必ず賄賂を忍ばせていきます💦
賄賂を受け取ったら問題になる日本とは大違い😱

並外れたお金持ちになりたい人や特定の分野で世界のトップを狙う人には、日本は物足りなく感じるかもしれません。

しかし、平穏な日常を求める人にとって、これ以上の環境はないと思います。

誰も干渉してこない。
誰も勝手に踏み込んでこない。

今は、日本の社会は”自立した社会”なのだと思っています。

「人と人との距離」のようなものかもしれません。

近すぎず、遠すぎず、でも必要以上には近づかない。

そのバランスの中で、日本の社会は成り立っているように見えました。

時間が経つにつれて、私はその静けさに慣れていきました。

電車の中で静かに過ごすことも、
街で知らない人と関わらないことも、
自然なこととして受け入れられるようになりました。

むしろ、今ではその静けさに、落ち着きを覚えるようにすらなっています。
私にとって、日本社会は今も「生きやすい」とまではいかないけれど、「生きていくには十分な」社会だと思います。

そして、(北朝鮮を知っているからこそ)日本で生まれ育った人より日本が好きになってしまいました。

強いて言うなら、細か過ぎる書類の作成やひらがなとカタカナ、半角字&全角字などの日本語にまつわる細かいルールはいつまでも経っても難しく、課題として残りますが😅

ではまた。

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