📚多類婚姻譚 1608
※ヘッダー画像は表紙部分です
多類婚姻譚
凪良ゆう(京都市在住、2007年BL作品でデビュー、2020年『流浪の月』で本屋大賞受賞、2023年『汝、星のごとく』で2度目の本屋大賞)
講談社 314頁
2026.5.25初版
『流浪の月』『汝、星の如く』で
二度の本屋大賞を受賞した著者が描く、
今そこにある愛のかたち。
一番近くにいる他人。
どうして結婚はこんなに
遠くなってしまったのだろう。
一緒に生きる。
わかりあえないあなたと。
セクシュアリティ/ジェンダー、金銭感覚、世代間格差、生育環境・・・•••
あらゆる価値観の対立の中で現代を生きる
わたしたちの祈りと叫び
"令和の結婚"を描く意欲作
恋をした。それだけでよかったはずなのに。
収録されているのは5つの短編。
Thank you for your understanding
Beautiful Dreamer
小鳥たち
Position Talk
C'est la vie
物語ごとに違う「ふたり」が主人公。
好きだから一緒にいたい。
なのに、どうしてこんなに悩み、惑うんだろう。
ままならなさは多岐にわたる。
LGBT、地方育ちと都会育ち、SNS、共働き家庭と専業主婦家庭、不妊、浮気、離婚、慰謝料、家父長制、メンタル疾患、熟年恋愛、職場恋愛による異動、キャリアの中断、性差の役割分業、不倫……
選択肢は増え、手に入るものは増えたのに、どうして気持ちは離れてしまうんだろう。
中学生の頃から女性を好きな自覚があった華は、
一緒に住んでいる樹(女性)と郷里の両親に会いに行く。
「どうして男とつきあえないんだ」と言う父。
「じゃあ、どうしてお父さんは同性を愛せないの?」と反論する華。
ああ、カミングアウトなんかするんじゃなかった(p41)。
「君がつらいときは全力で支える」「精一杯努力します」と言った律に、婚約者の朱里は言う。
「それじゃダメ」「だって努力はただの目標でしょう。妻からすると『絶対いい夫になります、なれなかったら都度罰金を支払います』って公正証書を作りたいくらいなんだよ」(p194)
律は考える。
結婚はエンジンが二馬力になると同時に、トラブルも倍に増えるシステムだ。
男も女も独身の方が圧倒的に楽なのでは?(p196)
本書について新聞取材を受けた著書は
「今の日本には、ただ人と人が一緒にいて一番合理的な形が、結婚という制度しかないのが問題。もっと別の選択ができるようになればいいのになと思いますね」と語る(2026.6.12.金 朝日新聞夕刊)。
確かにね。
婚姻届を提出しないと、法律はふたりを守ってはくれない。
婚姻届を出すには、異性のふたりでないといけないし、ふたりは同姓にならなくてはいけない(どちらか一方が改姓)。
多くの場合、両性の合意だけではなく、親の希望(時には許可)がくっついてくる。
結婚するって大変だ。
維持するのはもっともっと大変だ。
著者が、自分の価値観が揺るがされたと語るのは、4編目のPosition Talk。
男性からの視点で書かれているのが、私の推しポイント。
著者が20代の男性編集者の意見も聞いたところ、自分の価値観が古いと思い知らされる場面が多々あり、常にいろんな世代の人の話を聞かないと、知らないうちに自分が古びていくと反省したと、取材で語っている。
先に書いた律と朱里は職場恋愛で同じ部署。
交際が理由で朱里が異動。
なぜ異動させられるのはいつも女性なの?
律より結果を出していたのは朱里の方なのに?
妊娠•出産したらキャリアは途切れるの?
もう私から何も取り上げないで。
律は優しく配慮があり平和主義。
朱里に強制することはないし、朱里の選択を尊重する。
でもそれって、「きみが選んだことだよね」と責任を押し付けることにならない?
感情的イコール女性的?
「興奮している相手を宥める冷静な自分」という構図を作ってマウントを取ってない?
律と朱里に加え、幼馴染みや姉、職場のハラスメントや人間関係などを絡めることで、連綿と続く男女間の固定観念や、律と朱里が心に抱える割り切れない思いが浮き彫りになる。
律と朱里は婚約を解消し、律は慰謝料を支払う。
同期の飲み会で律は言う。
「結婚願望のない子なら紹介してほしい」「意識の低い結婚ならしたいけど」「今の時代に男が結婚する必要ってどこにあるのかな」(p244〜245)
誰もが孤独なら孤独を恐れることもない……
あるある、解る解ると思いながら、先へ先へと読み進みたくなる。
それぞれの物語の登場人物が、緩く繋がっているのも楽しい。
どうしようもないと匙を投げそうになった最終話C'est la vie のラストで祥子が発する「人生はままならないってことよ」にはニヤリ。
それって、ままならないけど、捨てたものでもないってことですよね。
2026.8.28.金
当記事を収録しているマガジンはこちら
全マガジンのご案内はこちら
#エッセイ #ブログ #コラム #散文 #雑文 #身辺雑記 #うつ病 #レビュー #多類婚姻譚 #凪良ゆう #講談社 #ネタバレ #恋愛 #結婚 #婚約解消 #離婚 #不倫
いいなと思ったら応援しよう!
サポートしていただき有難うございます💝
