ズバット 超音波
ズバット 超音波
目が見えない。
暗闇の中では、何も見えない。
けれど、何もないわけではない。
ズバットは翼を広げる。
そして、
夜の奥へ向かって超音波を放つ。
ピィィィ……。
音は洞窟の壁にぶつかり、
キィン…… と反響する。
遠くの壁から、
ポーン…… と、
かすかな音が返ってくる。
それだけを頼りに、
ズバットは飛ぶ。
洞窟の天井から、
ポタ…… ポタ……
と水滴が落ちる。
その音さえ、
暗闇の中では道標になる。
見えない。
だからこそ、聞く。
誰かには見えているものが、
自分には見えない。
みんなが当たり前のように持っているものを、自分は持っていない。
そんなことを考える夜もあるのだろう。
自分には何かが欠けている。
明るい場所へ行けば、
きっと誰かと違うことを思い知らされる。 それでも、暗闇の中では違った。
音がある。
風がある。
水滴がある。
壁がある。
そして、自分が飛んでいる。
他人から見えないものを感じ取る。
それは弱さなのか。
それとも、
自分だけが持っている感覚なのか。
蝙蝠葛が、
暗闇の中でつるを伸ばしている。
どこへ伸びていくのか、
その先は見えない。
それでも、つるは伸びる。
夜顔の白い花が、
暗闇の中で静かに香る。
見えなくても、
そこに花があることは分かる。
ズバットもまた、
暗闇の中で超音波を放つ。
ピィィィ……。
返ってきた音を聞く。
また飛ぶ。
見えないまま進んでいいのだろうか。
先が見えないのに、
どこへ向かえばいいのだろう。
迷う。
けれど、
立ち止まっても暗闇は変わらない。
ならば、もう一度。
ピィィィ……。
音を放つ。
返ってきた音が、
ほんの少し先の世界を教えてくれる。
見えないから進めないのか。
それとも、
見えないからこそ、
進むしかないのか。
答えは、暗闇の中にない。
ただ、音だけが返ってくる。
ポタ…… ポタ……
そしてまた、
ピィィィ……。
ズバットは飛ぶ。
未来が見えないまま。
自分の行く先も分からないまま。
それでも、
聞こえるものを頼りに。
見えない世界を、
自分の翼で進んでいく。
