妖精が教えてくれた小さな勇気
マナが買い物をしていると、ふと、懐かしい
友だちの姿が目に入りました。
話しかけようと思いましたが誰かと
話していたので話し終わるのを待っていると、今度は別の人が友だちに話しかけました。
結局、話しかけられないまま、友だちは
帰ってしまいました。
その様子を見ていた妖精が、そっとマナに
ささやきました。
「あなたは相手のことを考えられる優しい子。でも、自分の気持ちも大切にしてほしいの」
「いつまでも待っているとチャンスを
逃してしまうわよ」
それからしばらくした、ある日のことです。
マナはお芝居を見に行きました。
前の席には、この間見かけた友だちが座っていました。
誰かと一緒に来ているようでした。
隣の人とのおしゃべりは、なかなか終わりません。
また会うなんて本当に偶然です。
そのとき、開演前のベルが鳴りました。
マナは少しだけ胸をどきどきさせながら、
勇気を出して声をかけました。
「お話し中にごめんなさいね。お久しぶり、
マナです。この前も見かけたんだけど、
声をかけるタイミングを逃してしまって……。」
「あら!? お久しぶり!
そのとき声をかけてくれたらよかったのに。」
友だちは、にっこり笑いました。
すると、その笑顔を見たマナは、
胸の中につかえていたものが、
ふわっと軽くなるのを感じました。
そのとき、どこからか聞き覚えのある
小さな声がしました。
「ほらね。勇気を出してよかったでしょう?」
見ると、あの日の妖精が、
ふわりと空に舞い上がっています。
「相手を思う優しさと同じように、
自分の心の声も大切にしてあげてね。」
マナは、にっこりとうなずきました。
それからというもの、マナは、小さな勇気を
大切にしながら、自分らしい一歩を
踏み出せるようになりました。
すると、不思議と、一歩踏み出すたびに、
新しい世界が少しずつ広がって
いったのでした。

あとがき
この物語は、私が見たある夢から
生まれました。
久しぶりに会った友だちに声をかけようと
思ったのに、タイミングを逃してしまい、
何も話せないまま別れてしまった夢でした。
目が覚めたあと、「話したかったな」と
いう気持ちが心に残りました。
相手を思いやって待つことは大切なこと。
でも、自分の「伝えたい」という気持ちも、
大切にしたい。
そんな思いを込めて、この物語を書きました。
小さな勇気が、誰かの心を温かく照らします
ように。
