無数の出会いが「私」というソーシャルワーカーを生んだ。
今日は5月15日ということで、この日は私にとって特別な日です。
世間的には、沖縄本土復帰記念日やJリーグが始まった日でもあるそうなのですが、1916(大正5)年の5月15日、アメリカの南部バプテスト連盟の宣教師であるC.K.ドージャー(Charles Kelsey Dozier)によって、福岡市に私の母校でもある「私立西南学院」として創立された日でもあります。
更に言えば、1983年5月15日は私の誕生日でもあります…それが言いたかっただけ(笑)
そんな私は、「あなたは、ちょっと変わったソーシャルワーカーですね」 現場でそう言われることが、私にはよくあります。
ソーシャルワーカーといえば、制度を熟知し、決められた枠組みの中で支援を調整する専門職——そんな堅実なイメージがあるかもしれません。
しかし、私が大切にしているのは、時にはその枠組みを飛び越え、地域を巻き込み、対話の場をゼロからデザインするようなアプローチです。
なぜ、私がそんな「変わり種」になったのか。 振り返ってみると、その理由はたった一つ。学生時代から社会人に至るまで、福祉の枠組みの外側で出会ってきた「規格外の大人たち」からの学びの蓄積にあります。
福祉の外側で駆け抜けた学生時代—対話と熱狂の「まちづくり」
私のソーシャルワークの根源は、学生時代に無我夢中で身を投じた「市民活動」や「環境活動」のフィールドにあります。そこは、理想を形にしようとする前向きなエネルギーに満ちた世界でした。
やりたいプロジェクトを教授たちの前でプレゼンする
専門知識の塊のような大人たちを前に、足が震えるほどの緊張感の中、私がぶつけたのは、机上の空論ではない「現場のリアルな熱量」と「社会をこう変えたい」という純粋な意志でした。
そのプレゼンを通して、論理を組み立てて、大人を動かすことの厳しさと、それでも「想いと行動力があれば、世代や立場を超えて人は耳を傾けてくれる」という強烈な成功体験を得たのです。
結果、私はチームの仲間とともに、様々なNPOや企業との連携の協力を得て、福岡市の環境啓発事業を実施することができたのです。
可視化と対話の「ファシリテーション」
複雑な感情や利害が渦巻く市民活動の現場で、プロフェッショナルたちから徹底的に叩き込まれたのは「ファシリテーション」の技術です。
中でも、「見えない思いをその場で書き出し、皆で同じ景色を見る(とりあえず書く!)」という可視化のスキルは、今も対人支援の現場で、言葉にできないクライエントの思いに形を与える最強の道具となっています。
人を巻き込む「デザイン」と「事務局の努力」
また、全国的なムーブメントを起こした環境NPOの創設メンバーたちからは、活動を持続させるための極意を学びました。義務感や「正しさ」だけでは人は動きません。「楽しさ」や「カッコよさ」で人を惹きつけるデザインの力。
そして、その華やかな表舞台を支える、徹底した「事務局(バックオフィス)」の凄み。この両輪を知ったことは、のちに地域の巻き込み方を考える上での大きな財産になりました。
社会人としての助走—「プロデュース」と「場づくり」
社会人になってからも、私の「規格外の学び」は続きます。
「ディレクターではなく、プロデューサーになれ」 ある音楽プロデューサーから言われたこの言葉は、私の視座を一段引き上げました。「ただ指示を出す(ディレクションする)だけの人はたくさんいる。人を束ね、資源やお金を動かし、新たな価値を生み出すプロデューサーになれ」。既存の福祉サービスをパズルのように当てはめるだけでなく、新たな支援の形や資源そのものを構想する今の私の原点は、ここにあります。
ある経営者からは「君の人生のテーマは愛だ」と真っ直ぐに見抜かれ、自身の内なる熱量に気づかされることもありました。
社会包摂という「場づくり」 その後、自治体の文化芸術政策の転換期に関わった際には、「文化を一部の人に提供する」のではなく、「誰もが参加できる場をどうつくるか(社会包摂)」という視点を提言しました。この「人が参加できる場のデザイン」という視点が加わったことで、私の持つ武器はさらに強力なものとなっていきました。
想いだけでは救えない。システムを動かす「翻訳ツール」
しかし、対人支援の現場に出たとき、私は一つの現実に直面します。 どんなに「愛」や「情熱」があっても、それだけでは目の前の人の生活や権利を守り切れない場面があるということです。
その壁を突破する鍵をくれたのは、行財政のスペシャリストである行政職員との出会いでした。
彼から学んだのは、一見すると無機質に見える「行政の論理」や「予算編成の仕組み」の重要性です。「この人は困っているんです」という感情的な訴えだけでは、社会のシステムは容易に動きません。しかし、法的根拠や予算の仕組みという「共通言語」を持てば、制度の壁を突破し、新たな仕組みを創出する(ソーシャルアクション)ことが可能になります。
「あたたかい心」を、「社会のシステム」に実装するための翻訳ツール。
それが、私にとっての行財政の知識であり、一人ひとりの権利を守るための具体的な「力」となりました。
強い光で傷つけないために。「アセスメント」という重心
こうして様々な技術を集めてきた私ですが、それらが一つに統合されたのは、本格的にソーシャルワークの視点、そして困難に直面している方々の切実な世界に触れたときでした。
まちづくりやアートの世界で培った「未来を切り拓くエネルギー」は、非常に強力な光です。しかし、心身のエネルギーが枯渇している方や、深い困難の中にある方にとって、外側から注がれる強い「前向きさ」や「期待」は、時に心身をさらに追い詰めてしまうリスクをはらんでいます。
良かれと思った支援の光が、相手の歩幅を無視した瞬間に、人を傷つけるものに変わってしまう。
その現実に直面したとき、私はソーシャルワークにおける「アセスメント(多角的評価)」と「意思決定支援」の重みを再確認しました。
強い光をいきなり当てるのではなく、今その人はどのような状態にあり、何を望んでいるのかを丁寧に測り取る。そして、支援者が先導するのではなく、その人自身が「どの窓を、どれくらい開けるか」を自ら決められるよう、傍らで支え続ける。
このフィルターを通して初めて、これまで集めてきた「人を巻き込む力」や「行政を動かす知識」は、相手を傷つけることなく、その人の尊厳を回復するための本当の力に変わりました。
ソーシャルワークの源流との出会い
この当時、私が師事していた「まちづくり」の師は、アメリカで社会学を修め、「対話と住民参加型のコミュニティデザイン」のメソッドを日本に持ち込んだパイオニアでした。
一部の専門家がトップダウンで決めるのではなく、地域に暮らす多様な人々の声に耳を傾け、泥臭く合意形成を図っていく。環境に介入し、地域全体の力を引き出していくこのダイナミックな実践こそが、のちに私が知ることになる「ソーシャルワーク(コミュニティ・オーガナイゼーション)」の最も本質的な源流の一つでした。
つまり、私が学生時代から無我夢中で実践してきた、市民活動。そして、社会人になって師から、あらためて、叩き込まれてきたグループワークとファシリテーションの技術と「まちづくり」の視点そのものが、ソーシャルワークの最も本質的な源流だったのです。
他者の痛みや困難に向き合うとき、自分の中にある価値観やエゴを脇に置き、フラットな「器」として相手に寄り添う。専門職としての「自己覚知」を経て、私の中でバラバラに散らばっていた経験や知識は、ようやく一つの確かな「重心」へと統合されたのです。
この実践が「当たり前」になる社会へ
想いだけでも、力だけでも、人と社会は救えません。
私は、これまで出会ってきた様々な分野の師(とも)たちから受け取った技術を携えながら、決して自分の価値観を押し付けることなく、目の前の人の歩幅に寄り添う「ソーシャルワーカー」でありたいと思っています。
ただ、私は「変わり種のソーシャルワーカー」として、自分だけが特別であり続けたいわけではありません。
私が目指しているのは、想いと力を統合し、丁寧なアセスメントに基づいて目の前の「個人の尊厳を守る」ことにとどまらず、そこから見えてきた課題をもとに、人がつながる「地域のコミュニティをデザイン」し、さらには行財政の知識を駆使して「社会の仕組みそのものを変えていく」ことです。
個人の支援(ミクロ)から、地域(メゾ)、そして制度・政策(マクロ)へと繋げていくこのダイナミックな実践が、決して特別なものではなく「誰もができる、当たり前のソーシャルワーク」になる社会を目指しています。
そして、自己覚知を経て私の中で統合されたこの実践知を、今後、AIとDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈でさらに社会へ拡張していくこと。それこそが、私が次に見据えている未来です。
テクノロジーの力を掛け合わせることで、かつて私が無我夢中で集めた「ファシリテーション」や「翻訳」はさらに進化し、誰もが本質的なアセスメントと社会変革を行える未来が必ずやってくると信じています。
私がこのnoteで、自らの実践や葛藤を言語化し、オープンソースとして発信し続けていることも、来るべき未来の「ソーシャルワークのOS」を構築するための挑戦の一つなのです。
「変わり種」という言葉が、いつか死語になる日を信じて。 私はこれからも、未来の社会システムをデザインしながら、目の前の人と繋がり続けていきます。
自己紹介
筆者は、福岡市で障がい者就労支援に携わるソーシャルワーカーです。障害福祉・児童福祉・生活困窮者支援といった複数領域にまたがる実践を行ってきました。
職業指導員、放課後等デイサービス、居宅介護、自立援助ホーム、生活困窮者支援に加え、プライベートにおいても約10年間、障害児の支援に継続的に関わってきました。
制度内外の両方で支援に関わってきた経験から、発達・心理・生活・就労といった課題が相互に影響し合う構造を実感しています。
現在は就労継続支援B型事業所の生活支援員として、こうした複合的な視点をもとにアセスメントを行い、支援の再構築に取り組んでいます。
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NewtypeSocialworks 代表
理論と実践をつなぐ視点から、
福祉・教育・地域づくりについて発信しています。
このnoteは、学びと実践の途中経過を記録する場所でもあります。
同じ現場に立つ方や、福祉に関心のある方と、
ゆるやかにつながれたら嬉しいです。
一般社団法人翔明会
就労継続支援B型事業所 つなぐコミュニティーズ県庁前店にて、
生活支援員として、相談援助・就労支援・地域連携を行っています。
なお、つなぐコミュニティーズは福岡市西区・北九州市西区黒崎にあり、
関心のあるテーマは、
・感情に寄り添う支援
・地域の中で人が役割を持って生きること
・生成AIやDXを福祉の現場でどう活かすか
<つなぐコミュニティーズ豊浜店>
<つなぐコミュニティーズ県庁前店>
つなぐコミュニティーズでは、PCスキルを身に付けるために企業と連携して、スキルアップトレーニングを行っています。
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