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hs222
『空に二つ目の太陽がある生活』
『空に二つ目の太陽がある生活』
二つ目の太陽が現れてから、七年が経った。
最初の三ヶ月は世界が終わりかけた。
宗教。
暴動。
株価。
海流。
全部ひっくり返った。
しかし七年後。
人類は普通に慣れた。
朝。
青年はカーテンを開ける。
太陽が二つある。
大きい方と、小さい方。
小さい方は少し青白い。
端末の天気予報。
《本日は第二太陽がやや活発です》
「洗濯外かな……」
考えるのはそこだった。
街へ出る。
影が二方向に伸びる。
それ以外は、だいたい普通。
コンビニ。
《第二太陽対応アイス》
溶けにくいらしい。
小学生が会話している。
「今日どっち暑い?」
「青の方」
完全に季語みたいな扱いだった。
会社。
窓際席が人気ない。
理由は単純。
夕方が二回来るからだ。
一回目の夕方で集中力が切れ、
二回目で完全に帰りたくなる。
会議室。
課長が言う。
「じゃあ今日は“青夕方前”までで」
暦そのものが変わっている。
昼。
空を見る。
二つ目の太陽は静かに光っている。
もう誰も「なぜ存在するのか」を議論しない。
科学者も疲れた。
説明は大量にある。
しかし結局、
「あるからある」
が一番実感に近い。
スーパーでは特売。
《双日照レタス》
妙に甘い。
夕方。
最初の太陽が沈む。
街が少し赤くなる。
人々が少し静かになる。
だがまだ終わらない。
数分後。
青白い第二太陽だけが残る。
“続きの夕方”が始まる。
青年は川沿いを歩く。
空が紫になる。
影が薄く二重になる。
綺麗だった。
七年経っても、そこだけは飽きない。
端末に通知。
《明日の第二太陽は通常運転です》
青年は帰宅する。
人類はたぶん、
どんな異常にも慣れる。
ただし、
「今日は青の方まぶしいな」みたいな愚痴を言い始めた頃、
本当に適応したのだと思う。
