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『世界、こちらが気づくと急に照れ始める』

『世界、こちらが気づくと急に照れ始める』
朝六時五十四分。
青年は住宅街を歩いている。
空。
薄い青。
朝日。
少し低い。
風。
弱い。
全部、 ちょうどいい。
ちょうどよすぎる。
青年は最近、 少し疑っている。
この世界。
たまに気を遣ってないか。
もちろん証拠はない。
ただ。
疲れた日に限って、
帰り道の夕焼けが妙に綺麗だったり。
落ち込んだ日に限って、
パン屋から焼きたての匂いがしたり。
考え事をしている日に限って、
川面がやたら静かだったりする。
偶然。
たぶん偶然。
でも。
その偶然が、 少しだけ上手い。
青年は公園の横を通る。
ブランコ。
誰もいない。
朝露。
ベンチ。
静か。
その時。
木の葉が一枚落ちる。
ひらひら。
くるくる。
青年の足元へ。
それだけ。
本当にそれだけ。
なのに何となく立ち止まる。
世界は時々、
何も言わない。
何も教えない。
何も説明しない。
ただ葉っぱ一枚落としてくる。
妙にずるい。
青年は空を見上げる。
雲。
流れる。
朝日。
透ける。
その瞬間。
ほんの一瞬だけ、
「どう?」
みたいな気配がした。
青年は思わず笑う。
すると風が吹く。
雲が少し崩れる。
鳥が飛ぶ。
なんだか、
見られていたのがバレた人みたいに。
世界が少しだけ、 視線を逸らした気がした。
たぶん気のせい。
たぶん。
でも最近の現実は、
無関心を装うのが、 少し下手になってきている。

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