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ぶらり歴史散歩にでかけよう 兵庫県川西市・多田神社ー武士の誕生を思う

平家を滅ぼし、鎌倉時代を築いた源氏一門は清和天皇から臣籍降下した清和源氏が源流といわれます。清和天皇から4代目にあたる源満仲が武士団を結成し、その中から生まれたいくつかの流派が“武士の時代”を切り開いたのだそうです。武士の時代は明治維新まで延々と続くことになります。この清和源氏の大きな流派の一つ、摂津源氏の本拠地が兵庫県川西市にありました。その地にある多田神社は満仲らを祭神として祀っています。
        初出 「彩」(きたしん総合研究所刊)2016年5月号
        電話番号等文中の情報は取材当時のままです

武士の倫理的気分


JR川西池田駅前にある源満仲

「かれらは潔さを愛し、そのことにおのれの一身を賭けた」。作家、司馬遼太郎は鎌倉武士を語るとき、「名こそ惜しけれ」という「倫理的気分」をその特徴とした。この時代は、だまし討ちや裏切りが横行した時代でもあるが、そんな混沌の中から醸成された倫理といえるのかもしれない。

武士という語は奈良時代からある。武芸を職能とする戦士のことだ。だが、平安中期以降に現れ、武士団を形成する中世の武士には、さらに「所領の領有者」という側面が加わる。弓射騎馬に秀で、11世紀半ばには社会的身分として定着、諸国の地方役所である国衙こくがに登録され、都への運上物の護送や国司の衛兵などとなり、中央では官人貴族に仕え、家政や身辺警護、紛争処理にあたった。

その一方でかれらは開墾地主でもあった。やがて地方の争乱の鎮圧などを通じて源平二氏に集約されていくが、その後、冒頭の倫理的気分が醸成されていく。その背景には何があったのだろうか。

桓武平氏と清和源氏


随心門。古格ある寺院の趣き。多田神社は明治の廃仏毀釈まで寺院(多田院)だった

臣籍降下して生まれた源氏は天皇別に平安期から江戸期までに21流派が生まれたが、このうち清和天皇(850~880)の孫の経基つねもと王の流派が武士の時代を切り開く画期となった。
経基の子満仲が摂津多田に館を構えて武士団を形成。その長男、頼光も摂関家である藤原家と結びつきを強め、中央で勢力を伸ばし、摂津源氏の祖となった。
一方、三男の頼信は東国の平忠常の乱を鎮圧して東国進出のきっかけをつくり、河内に居を定めて河内源氏を称した。
当時の藤原貴族は、地方の政治を国司らの圧政にゆだね、荘園の年貢は容赦なく取り立てた。地方の豪族はそんな支配に対抗する統率者を求めていた。東国に根を張った源氏は中央政権との結びつきを背景に彼らの間の土地争いなどの仲裁や保護などを通じて東国武士らを掌握、義家―義朝―頼朝と世代を継ぎながら強い主従関係を築いていった。

多田神社本殿(国指定重文)。拝殿(タイトル写真=国指定重文)の奥にある
神社境内にある清和源氏同族会の「謹告」

一方、桓武天皇の曽孫、高望たかもち王を祖とする平氏は平忠常の乱を契機に東国での勢力が衰え、瀬戸内海沿岸など西国支配に中心が移ってゆく。源氏が源義家ののち中央で衰えを見せたのにかわり、隆盛をみせた。

白河天皇の寵愛を受け、昇殿を許された忠盛、平氏武士団の棟梁として保元の乱で後白河天皇を支え、絶大の信頼を得た清盛と、平氏の全盛期が到来したが、平氏は公家化し、それが源頼朝らによる平氏滅亡につながってゆく。
 

信でもって支えられ

満仲、頼光公の御神廟

猪名川を背にして多田神社の石段を上がると多田大権現という扁額のかかる南大門に迎えられた。その奥の随神門も神社というより古格ある寺院の趣き。
多田神社は満仲が75歳のとき創建した多田院がはじまりで、明治の廃仏毀釈まで寺院だったのだ。
祭神は満仲と酒呑童子退治で知られる頼光、平の忠常の乱の頼信、前九年の役の頼義、後三年の役の義家(八幡太郎)の五公。

神職に案内してもらって拝殿奥の本殿区域に入ると、檜皮葺の本殿の奥に満仲と頼光両公の御廟所があった。源氏の流れを汲む足利尊氏を始め歴代将軍の遺骨も分骨されている。社殿の多くは徳川家綱の再建。“武士の源流”として崇敬されてきたのがわかる。

「鎌倉ぶりの心は、信でもって支えられていた」と司馬遼太郎は語る。「所領の安堵」を介在に頼朝と坂東武士との間に築かれた信頼関係がのちの武士道や商人倫理に昇華されてゆくのだ。そう思って境内の涼やかな空気に浸った。

清和天皇廟遥拝所

メモ

 多田神社(川西市多田院多田所町1-1、電話072-793-0001)は能勢電鉄多田駅から徒歩約15分。毎年4月第2日曜日に懐古行列による源氏まつりがおこなわれる。三ツ矢サイダーの三ツ矢は満仲が城築城の際、神のお告げで矢を放ったことを由緒とする。近くから湧き出た天然鉱水「平野水」が明治期にサイダーになった。多田駅から一駅の平野駅の北に三ツ矢サイダー発祥の地(平野鉱泉工場跡)がある。



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