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図書館本123冊目『斜め45度の処世術』 小川 哲 170P 2026年 啓発本のような、あるあるのような、ひねくれエッセイ

小川哲さんの作品では、『君のクイズ』『言語化するための小説思考』『嘘と正典』を読んでからの本作。

37篇のエッセイ集。
一篇につき4ページ。
ページ内の余白がとても広くとられているために文字数は少なめ。
通勤読書2日目には読み終えていた。

ほんの、2日足らずの付き合いだったけど、通勤が楽しかった。

37篇ひとつひとつのタイトルは「処世術」らしく、啓発本を思わせるものが多い。

各タイトルは右ページの端に大きな文字で、思いっきり余白をとってドーンと配置されている。

「性格がいいってなんだろう」
「説明上手になるために必須の2つの能力」
「人間関係に悩むのは傲慢である」
「潜在的な価値観を浮き彫りにする方法」…

電車の中でこれらのタイトルがちらりと目に入った人は、
「このオバサン、なんか自己啓発をたくらんでるな。ムリムリ。」などと思ったかもしれない。

私も勝手に心の中で
「違うの違うの、これは小川哲さんのエッセイなのよ。『君のクイズ』の人なのよ。ひねくれてるのよ。」
などと言い訳をしていた。


各エッセイでは、見事な例え話やら、著者自身の経験談やらをもとに、ひねくれた変な角度(それが45度あたり?)からの処世術を語ってくれている。
面倒くささが、可笑しい。

私自身にも覚えのある、苦笑いするしかない話には苦笑いをして、
「この人も面倒くさ、アハハ」と面白がりながら、あっという間に読み終えた。


一番可笑しくて、笑いを堪えるのに苦労した一篇は、

「脳内を悟られたくない」

カレーを作ろうと、スーパーで材料をカゴに入れてレジに並ぶも、レジの人に「カレーを作るつもりだ」と思われたくないのでフェイクでブロッコリーを追加で取ってくる。

それをレジの人に「フェイクでブロッコリーを入れたな」と思われたくないので、シチューのルーも入れてきて「迷彩」をほどこす。

私も、フェイクにブロッコリーはないけれど、「迷彩」はほどこすので、「あるある!」などと面白く読みながらも、まだ吹き出すには至らなかった。
( ”『迷彩』をほどこす” いいなこれ)

しかし、さらなるフェイクに「しらたき」「みりん」という単語が目に入ってきた瞬間、ついに私は
(ぷぷっ、あかんっっ)
と耐えきれず、あわてて文字から目をそらした。

そらした視線をページ下部に移動させ、左右のページナンバーの数字を交互に読んで笑いを逃がす。(136,137,136,137…)

用心して、ブロッコリーの件まで戻って読み始めるも、やはりまた「しらたき」「みりん」の文字に反応してしまい、
(ぷぷっ、まだあかんっ)
と、また目をそらし、今度は本の最後の方のページを開いて、そこの文字を読んで耐える。

”落丁・乱丁本はお取り替えいたします。無断複写・転載を禁じます。”


この文をこんなに丁寧に読んだことはなかった。
おかげでなんとか笑いを堪えてその一篇を読み終えられた。

肉ジャガの可能性まで提示するとは… これが斜め45度のひねくれどころか。

他の話もいろいろと可笑しい――

「”お薦め”は信頼に関わる」では、お母様への目線が可笑しい。

 たとえば、ある書評家が「『A』という本がいい」とお薦めしていたとする。その本を僕の母も「面白かった」と言っていて、友人も「面白い」と言っていた。僕はその書評家に60というお薦めポイントを設定している。母の値は0で、友人の値は30なので、60+0+30=90。あとは10ポイント以上を設定している他の誰かがお薦めした段階で、僕は『A』という本を買いに行く。

今、自身で咄嗟に設定した「お薦めポイント制度」とは言え、お母様の「お薦めポイント」の値が0って。
60+0+30=90って、わざわざ式に組み込むこの0が可笑しすぎる…
お母様の「お薦め」への信頼度の低さ、というか、無さ…


他にも、「誹謗中傷されても“喰らわない”考え方」での、ツイッターで小川さんに対して「髭を剃れ!」とつぶやいていた人から始まる考察も可笑しい。
小川さんは、自身がテレビ出演したときの反応や、著作へのレビューをネットでよく検索しているのだけれど、前向きにひねくれていている。


『言語化するための小説思考』『斜め45度の処世術』のエッセイを読んだら、小川哲さんの長編を読みたくなってきた。

かつて、一度借りながらも、重量感に負けて数ページ読むだけで返却するに至った『地図と拳』(山田風太郎賞、直木賞受賞作)
私か図書館が文庫版を購入してから読もうと思っていたけれど、またあの分厚くて重い単行本で読みたくなってきた。

私①「なんでやねん。文庫にしときって… 町田康さんの『告白』も、単行本で借りて、読み終えてから文庫本買ったやろ。最初から文庫本にしとけば楽やったのにって思ったやろ?」

私②「そやけど、『地図と拳』が面白なかったらどーする? 図書館の本やったら返せばいいけど…」

私①「とりあえず、デッカい単行本で読み始めて、最後まで読みたいけど腕がもうムリーって思ったら文庫本買う?」

私②「あぁ、それならありやな。でも、まず上巻だけ買う? やっぱり上下巻買うよな~ 解説とかあるしな~(先に解説を読もうとしている…)」

私はこういうところで面倒くさい…
(もう、買って積んどきなさい。)





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