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猫と暮らしの百科③「猫と藤田嗣治」ブックレビュ

猫文化をテーマにお届けしているこの「猫と暮らしの百科」も、今月でシリーズ3回目を迎える。どんな猫文化をご紹介しようかと悩んでいるときに理想的な本と出会った。kyotoKの一番好きな画家、藤田嗣治さんと、猫ちゃんの秀逸な本である。この夢のようなカップリングの著作こそ、この「猫と暮らしの百科」の3作目を飾るにふさわしい。猫好きな方やアート大好きな方、さらには好奇心旺盛な方も、「猫と藤田嗣治」をご堪能ください。

「猫と藤田嗣治」という本は、単純に藤田嗣治が猫をモデルに絵を描いているというものではない。この本の監修者、内呂博之氏は「猫と藤田氏は切っても切れない関係、猫あっての藤田でしょう」と巻頭に記しておられる。


「猫と藤田嗣治」2019年4月1日発行

自画像に現われる、猫と藤田嗣治のすてきな関係

藤田嗣治は自画像、藤田の愛した煙草やマッチ、猫も藤田の大切なものとして描かれている…内呂博之氏は藤田嗣治が自己ブランディングをすばらしい表現で「自己ブランディング」の装置としての自画像。と称している。

さらに内呂博之氏は、おかっぱ頭にちょび髭、丸眼鏡、そしてケースによってはピアスをつけた姿で登場する。この作品の藤田は好みのタバコ、マッチ箱、壁には女性が飾られ、藤田の代名詞のような猫の姿も見える。この作品は、藤田嗣治の世界をありのまま描いたものといえる。この作品は、16年ぶりに帰国した1929年、第十回帝展に出品、画集にも掲載され、日本に藤田嗣治像を紹介するために貢献している。

はじめて猫が自画像に登場、記念すべき作品


「自画像」1926年 
油彩・カンヴァス 
27.5×22.3cm
国立西洋美術館

猫の見つめる先に、藤田の世界を飾るモノたちが…

「キャットデザイナー」 1927年 
油彩キャンヴァス
19.5cm×24.1㎝ 個人蔵

この作品は特徴的な猫の目を通して、藤田愛用の裁縫道具をシュールレアリズム的表現で描いた一作。藤田の部屋の裁縫道具のコレクションは、個性あふれる藤田のファッションが、藤田自身の自作であったことを如実に語っている。指ぬき、針山、糸、巻き尺は愛する猫と同じく、藤田自身を物語っている。個性的なヘアスタイル、髭に特長ある眼鏡が藤田嗣治がセルフデザインであり、つねに人目を惹く過激なファッションも、藤田の自作だった。

最初の妻が女子美術学校・裁縫科出身だったことから、自作するようになったともいわれているが、衣服づくりにとどまらず、額縁、ハンガー、衝立や食器まで作るようになり、常に忙しく手を動かしていたと伝え聞く。

自画像でセルフブランディング、愛用の小物のそばには「猫」

「自画像」1929年
 油彩・カンヴァス 
61×50.1cm
東京国立近代美術館


透き通るような肌の作風「乳白色の肌」が藤田嗣治の代表作。「猫を抱く少女」もそんな技法で描かれているのかもしれない。ひざに猫を抱いているが、少女はしっぽや頭を無造作につかんでいるように見える。藤田嗣治は猫に接する子供のそうした特徴を描写し、藤田は猫の心理まで表現しているのである。

「猫を抱く少女」
1949年 油彩・カンヴァス
70×51.5cm  個人蔵(名古屋市美術館寄託)

「白い猫」
1929年 リトグラフ・紙 
33.5×45.5cm ベルナール・ビッフェ美術館
「猫」1949年 
油彩・カンヴァス 25.5×23cm
岐阜県美術館

1949年、ニューヨークで創作したガラス絵「猫の床屋」

「猫の床屋」
1949年 ガラス
10.7×10.6cm  ポーラ美術館

中世ヨーロッパで宗教画の技法として生まれたガラス絵。日本には江戸中期にやってきたそうだ。藤田嗣治は意欲的に創作したニューヨーク時代に、ガラス絵の手法で「猫の床屋」に取り組んでいる。裏側から描き、表側から観賞するユニークな作品である。


「角皿(猫とネズミ)」
1947年 陶器
33×20×6㎝ 目黒美術館

14匹の猫の自由気ままな表情を描いた、猫作品の代表作

「争闘(猫)」 
1940年  油彩・カンヴァス
81cm×100㎝ 
東京国立近代美術館

猫の本性を見極め、威嚇、攻撃、恐怖をテーマに描いた「獣」としての猫作品。藤田嗣治の猫でも、際立って有名な一作である。目や口を見開き、歯を食いしばり、あたかも歌舞伎俳優さながらに見栄を切る。攻撃的な構図は卓越した藤田の構成力、毛並みに現われる感情の起伏にも、猫を知り尽くした藤田の表現力がある。

「猫と藤田嗣治」
「猫と藤田嗣治」
2019年4月1日 初版第1刷発行
監修:内呂博之
文:浦島英世
ネコ研究者:荒堀みのり


本書の読みかた
❶作品が描かれた時代背景、作品の評価、技法などの解説
❷ネコ研究者による猫の解説
❸作品タイトル、作者名(他に著者などがいる場合)、制作年、技法
材質、サイズ、所蔵先
※❸の作品情報は原則として所蔵先ならびに参考文献のデータにしたがいました。

藤田嗣治(レオナール・フジタ):1886~1968
画家。東京美術学校(現在の東京藝術大学)卒業。1913年に渡仏。おもに裸婦をモチーフに、墨と面相筆による繊細な輪郭線を特徴とする独自の油彩画を確立。1921年にサロン・ドートンヌに出品した裸婦像が「素晴らしき乳白色の下地」と称賛され、一躍パリ画壇の寵児となった。1955年にフランス国籍を取得。1968年に生涯を終え、自ら手がけたランスの礼拝堂に眠る。



藤田ファンに待ちきれない展覧会「藤田嗣治 絵画と写真」


うれしいことに、4月29日~6月28日まで札幌芸術の森美術館で「藤田嗣治 絵画と写真」と称する展覧会が開催される。エコール・ド・パリを代表する藤田嗣治(レオナール・フジタ)は、絵画の天才としてのすばらしさに加えて、写真の被写体としても絶賛されてきた。作品に登場する猫や人形の愛らしさとともに、藤田の斬新なファッション性は、何十年も経た現代においても、時代をリードするハイファッションとして評価されている。


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