初めての家系
私はラーメンが好きでよく外食しているけど
所謂「家系」のお店には入ったことがなかった。
全体的にこってりしてて
ごてごてで、味濃い目で
とにかくクセが強いやつ
(私の勝手なイメージ)
もちろん私だって塩分は好きなので
こってりラーメンは大好きの部類だけど
ハマってしまうのが怖かったのである。
なんとなくだけど
中毒になって足しげく通っちゃって
心も身体もビッグになりそうではないか。
私は標準体重をキープしたいのである。
自分のためにも
嫁に愛想を尽かされないためにも。
そんなある日
嫁とドライブをしていたら
家系の看板が目に入り
なんとなくへぇ…とつぶやいた際
「実はね、夫くん」
唐突に嫁が切り出してきた。
「わたしね、一回くらい、いいかなって」
え、いきなり何の話?と尋ねると
「家系、行ってもいいかなって」
なぬぅ!?
森の中で樹液を糧に生きてそうな君が
い、家系だとぉ!?
私は大いに面食らってしまった。
よくよく聞けばウチの細君は
家系に以前から興味を持っていたものの
なんとなく言い出せずにいたらしい。
私たちは無言で見つめ合い、うなづき
そして手をがっちりと組み合った。
家系夫婦誕生の瞬間である。あちゃー。
そんなわけで家系ラーメンに行ってみたのですが
うーむすごい。
床が油でテカっていてキュッキュと音が鳴る。
これは期待できるぞ…ごくり。
案内されたテーブル席に座ると備え付けてあった
「はじめての家系」なる小冊子に目が奪われる。
それにはラーメンとは別にライスを注文して
おじやにしたり特殊トッピングで丼を作ったりと
素晴らしい食し方が丁寧に記されてあった。
私は「はは…」と乾いた笑いで顔を上げた時
気付いたのだ。
店内に蔓延るラーメンエリート達に。
するどい眼光にプロレスラーのような体躯。
彼らは無言でカウンター席に座り
静かに注文をして、静かに食べ、静かに退店する。
まるで職人のような佇まいに圧倒されてしまった。
「私達のようなニワカが来る店じゃないかも」
私はすっかり弱気になってしまった。
しょんぼりである。
私と嫁はその店の看板商品である
「味噌」「とんこつ」をそれぞれ注文。
もちろんライスは付けず、単品である。
数分後、運ばれてきたラーメンを見るに
特段変わったところはない。
まず一口とスープを啜ってみると
今まで受けたことのない衝撃を味わった。
((米が欲しい))
なんと私の脳裏にほかほかライスが
浮かび上がってきたのだ。
これはつまり
スープと米を合わせて食べろという
我が脳からのダイレクト指示である。
まじかよ。
どうなってるんだ私の本能。
いやこのスープが凄いのか。
たしかにスープは美味い。
塩気があって、まろやかで、味わい深くて
もちろん太麺に合うのだけど
ごはんにぶっかけて食べても
確実に美味いに決まってるヤツ。
うーんこりゃ流行るわ。
私達は二、三言、鋭く感想を言い合い
すさまじい速さで完食してしまった。
ごちそうさまである。
「いやあ美味しかったね」
嫁も私もご満悦。
濃い味のラーメンが好きな人には
絶対にお薦めしたいのだけど
いや待ってください
やっぱりお薦めしないです。
たぶんこれ美味すぎて
中毒になるやつ。
健康診断でD判定喰らってもいいなら
どうぞ心ゆくまでって感じです。
「時間あけてもう一回行く?」
ああ
私達の健康診断もやばいかも。
