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コンパス備忘録|ゲームで経営を学ぶとはどういうことか


「研修をやっても、現場が変わらないんです」

「研修を受けさせても、現場が変わらないんです」。社員教育の相談で、よく聞く悩みです。

知識として教わったことは、現場に戻ると忘れます。これは受講者のやる気の問題ではなく、学び方の問題です。今日は、私がインストラクターを務めるMG研修(MQ戦略ゲーム)を題材に、「体験から学ぶ」とはどういうことかを書きます。

「どうやったら儲かるか」は教えない研修

MG研修は、ボードゲーム形式で会社経営を疑似体験する研修です。1976年西順一郎先生を中心にソニーCDIで開発され、50年以上にわたって企業研修の現場で使い続けられています。

自分が続けていて言うのもなんですが、かなり変わった研修です。講師が正解を教えてくれません。「どうやったら儲かるか」は一切教えない。ルールの説明と、帳簿の書き方と、計算間違いのサポートだけ。あとは自分でゲームを回して、失敗して、気づいて、次にどうするかを考える。そういう研修です。

2日間で何をやるのか

MG研修は2日間の合宿形式が基本です。参加者はそれぞれ「社長」として、材料を仕入れ、工場で加工し、商品を作って、市場で売る。この一連の流れを繰り返します。

ゲーム盤の上には材料倉庫、工場、製品倉庫、営業所がある。カードを引いて仕事を選び、意思決定を繰り返す。カード1枚につき仕事は1つだけ。「やるか、やらないか、何をやるか」を選び続けることが社長の仕事、というわけです。

1日目だけで練習ゲームを含む3期をプレイして、そのたびに決算書を作ります。夜にはMQ会計の講義が入る。この段階には大半の受講生が赤字になっているので、その悔しい経験を踏まえて「明日は見てろよヽ(`Д´)ノプンプン」と思いながら、明日の作戦を考えつつ、講義を聞くといった感じです。

初回はほぼ赤字になる

インストラクターとして研修を始めるとき、私は必ずこう伝えます。「初めての方、残念ですが今日はほぼ間違いなく赤字になります。」

これは脅しではなく、事実です。そして安心してもらうための言葉でもあります。初めてMGをやる方が黒字を出すことは非常に稀です。何をどの順番で買えばいいか分からない、決算書の書き方も分からない、周りの経験者がどんどん先に進んでいく。「初参加のとき、何もわからなくて焦った」という感想は本当に多いです。

でも、この「わからない」が学びの入口です。理論を先に教えてから実践する研修(理入型)と違って、MGは体験してから気づきを得る(行入型)。先に失敗しておくから、後から入る講義の一言一言が実感として刺さる。冒頭の「現場が変わらない」問題への、これが一つの答えだと思っています。

MGが50年続いている理由

正直、効率的な研修ではありません。2日間かけて、参加者が自力で何度も決算書を書いて、失敗と成功を繰り返す。目先の効率を重視する「タイパ」「コスパ」とは真逆の世界です。

それでも50年以上続いている理由は、MG研修が育てようとしているものが3つあるからだと思います。

一つ目は「意思決定」。ゲームの中で何十回も判断を迫られるので、意思決定の筋力がつく。

二つ目は「会社全体の俯瞰」。営業だけ、経理だけ、という部門視点ではなく、会社の流れ全体を見ながら自分の動きを決める力が養われる。

三つ目は「会計の基礎」。決算書を何度も手で書くことで、数字の意味が体に染み込んでいく。

もう一つ、MGには「3原則」というものがあります。「楽しくなければMGではない」「美しくなければMGではない」「効果がなければMGではない」。楽しくやるから前向きに学べる。字を丁寧に書き、研修機材を大事に扱い、机を整理整頓するから計算ミスが減る。そして1回で劇的に変わるのではなく、毎回1つずつ気づきを持ち帰ることで、じわじわと経営が変わっていく。

私自身、インストラクターとして何年もMGに関わっていますが、いまだに自分のゲームで「しまった」と思う瞬間が毎回あります。MG100回帳には50期のスタンプ欄に「経営がわかる」と書いてあります。1回の研修で進むのは5期ほど。つまり最初から5回、10回、20回…と「続けて学ぶ」設計の研修なのです。

研修を選ぶ前の3つの確認点

MGに限らず、自分や社員の研修を選ぶときに確認してほしいことを3つ置いておきます。

  • その研修は「答えを教わる」型か、「体験して気づく」型か。どちらが良いということではなく、知識の補充なら前者、判断力や行動を変えたいなら後者が向きます

  • 学んだことを現場で試す場面まで設計されているか。研修自体の設計もそうですが、次の日から社内で何を変えるか?を経営者が決めておくことが重要だと思います。

  • 1回きりで終わる前提か、続けて学ぶ前提か。判断力は筋力と同じで、1回では付きません

「研修をやっても現場が変わらない」のは、研修が無駄なのではなく、目的と型が合っていないだけかもしれません。自社の何を変えたいのか?を先に決めて、それに合う学び方を選んでください。


※体験型研修(MG、ビズストーム、TOC等)・MQ会計による採算性改善・事業承継・経営計画策定など、経営支援のご相談は合同会社コンパスマネジメントまでお気軽にどうぞ。

#中小企業診断士 #MG研修 #MQ会計

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