読書記録|マリアビートル(副題:蜜柑と檸檬への愛を叫ぶ)
🍊蜜柑と檸檬の話しかしてない🍋
⚠️ネタバレしかしてない⚠️
⚠️読んでない人には何も分からない文章(申し訳ありません)⚠️
⚠️未読の方は回れ右!!!!!⚠️
『マリアビートル』はこれまでに何度も何度も読み返している大好きな本である。蜜柑と檸檬が出てくる唯一の話だから大好きだけど、でも最後に二人は死んでしまうから読み終わると胸が引き裂かれるほど辛い思いもする、という私にとってはなんとも複雑な思いを抱かせる小説でもある。
今回、久し振りに読むから好きなシーンや好きなセリフ、気に入っている箇所に付箋を貼ろう、と思いながら読み、最後に付箋の箇所を見返したら、ほぼ蜜柑と檸檬に関する所ばかりに付箋を貼っている結果となった。お前が好きなのはもはや『マリアビートル』ではない。『蜜柑と檸檬』だ。と改めて自分に言い聞かせた。そうです。この文章は蜜柑と檸檬の二人のことがたまらなく好きな人間が書いております。

無意識に手に取っていた
蜜柑味と檸檬味のグミだよ(末期)
しかし何度も読んでいるのはずなのに先の展開が気になる。何度読んでも木村のことは嫌いだから最初の方はページをめくるペースがなかなか進まないし、王子のことは何度目だって毎回新鮮な気持ちで憎んでいる。七尾ちゃんのことは憎みたくても憎みきれないやつめ、と思っている。
王子め、意地悪なディーゼル!檸檬のこと殺しやがって!!!!!一生許さないからな!!!!蜜柑のことも間接的に王子が殺したようなもんだと思っているので本当にこれは痛い目見せてやらないと気が済まないよ。ええ、私は王子が蔑む類の単純で愚かな人間なので、怒りは怒りのまま素直にここで吐き出しますよ。お前、最後は木村の父ちゃん母ちゃんに成敗されちゃうからね。木村の父ちゃん母ちゃん、こてんぱんにやっちゃってください(こてんぱん、って表現を未だに使う人間、どのくらいいるのだろう)。
七尾ちゃんのことは結構好きだけど、なんで蜜柑の首折ったの!!!!ていう思いは一生消えないし、初読の時の衝撃は本当に凄まじかった。もはや唖然だった。そんな……こんな展開って……ってほんとに声が出た。殺し屋だから殺されても自業自得、因果応報、って言われちゃそうなんだけどさ。でもさ、蜜柑と檸檬の二人の最期は、こんなのあんまりだよ、って毎度思うよ。それでもこの本は好きなんだけどさ。だって蜜柑と檸檬が生きていたころのやり取りを読めるのはこの本だけなんだよ。え、つら(唐突に実感する)。
蜜柑と檸檬のことが好きすぎて私も「果物」のシャチハタ作ろうかなって本気で思ってる。蜜柑と檸檬のコントみたいなやり取りも、お互いのいない所で相棒の話をしているシーンも好き。以下、好きなシーンの中でも特に好きな箇所を抜粋。
「あの、お名前はいったい」峰岸のぼんぼんが言う。
「芥川龍之介と梶井基次郎」蜜柑は続けて、言った。
「ビルとベンも、ハリーとバートも双子だ」
「俺たちは双子じゃない」
大好きな自己紹介シーン。芥川龍之介も梶井基次郎も大好きなので本当にたまらない。伊坂幸太郎先生、ネーミングセンスが最高です。
蜜柑と檸檬はいつも二人で仕事をしているし背格好も似ているけど、双子じゃない。そこポイントですよ。
「俺と一緒に仕事をして何年だよ。かなり長いはずだ。いい加減、トーマス君の仲間の名前くらい覚えろよ」
「じゃあ、おまえは、俺の薦めた、『禁色』を読んだか?『悪霊』は読んだか」
「やだっての。おまえの薦めるやつは、文字しかない」
「おまえの薦めるやつには、蒸気機関車しかいない」
文学を愛する蜜柑と機関車トーマスが好きな檸檬。背格好は似ていても性格は真反対で、そんな二人が繰り広げるやり取りは軽快でテンポが良く、電車で読んでいても思わずくすっと笑ってしまう。要注意である。特に檸檬は、可愛げがある。ずるいやつだ。殺し屋の男に可愛い要素があってたまるか。そんなギャップ、みんな好きに決まってるだろ(主語デカ)。ちなみに蜜柑も、自分の名前にちなんだミカンのイラストのシールを持ち歩いてる描写があるから、こいつもずるいやつだ。二人揃って可愛いやつらめ。おまえら本当に殺し屋か?
「檸檬」と蜜柑はぼそっと名前を口にする。
音が耳に戻ってくる。新幹線の走る響きが、蜜柑の体の芯を、ぶる、っと震わせた。
檸檬の顔が浮かぶ。今、目の前で、瞼を閉じ、その瞼の上に血が被さっている男ではなく、いつも隣でうるさく話しかけてきた檸檬の顔だ。「俺だって言われてえよ、おまえは本当にいい機関車だな、ってな」と子供のように目を輝かせた表情を思い出し、蜜柑は自分の胸が裂け、細かく割れ、そこに冷え冷えとした風が吹き込み、小さくざわめくような感覚になり、しかも、そのようなざわめきは初めてであったために、動揺する。
小説の文章が頭に響く。「われらは滅びゆく、おのおの一人にて」
共有した時間がいくらあろうと、消える時はそれぞれ、一人ずつだ。
殺された檸檬の死体を見つけた蜜柑。呆然と檸檬の名前を呟く蜜柑の様子があまりにも辛くて、胸の奥になにかが詰まったように息苦しくなる。こんな時に、蜜柑の頭に最初に浮かぶのは、子供のように無邪気な檸檬の顔なんだ。そうなんだ。つまりそんな檸檬の顔が蜜柑にとっては日常で、当たり前だったってことだろ……
「蜜柑さんも、トーマスに詳しいんですね」とかろうじて言った。
そこで蜜柑が少し、表情をゆがめた。不本意に感じたようだったが、笑みも混ざっている。「それはな」と言う。「あれだけいつも、あいつに言われてれば、少しは覚える」と苦々しさを浮かべた。そして、自分の尻ポケットから丸めた文庫本を取り出した。
「今、死体を探ったら、あいつのジャケットからこれが出てきた」
背表紙が橙色で、表紙には題字と作者名しか書いていない、殺風景ともいえるその文庫本を触り、栞の位置を見ながら、「頑張って、ここまで読んだみたいだな」と淡々と言った。「あいつも俺も負けず嫌いで」と呟き、さらに小さい声を出す。「素直じゃなかったわけだ」
そんな顔するなよ、蜜柑(涙)(涙)(涙)
今この文章を書くためにこのページを読み返して、懲りずにまた号泣している。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらこの文章を書いている。
いつもここの、檸檬の死体を見つけてからの蜜柑が苦しくて、何度も何度も読んでいるはずなのに耐えきれなくて泣く。お互いに憎まれ口をたたいていても、陰では相手の好きなものがどんなもんなのか理解しようとして、本来なら興味も無かったのに頑張ってんの、典型的な不器用な男達すぎるだろ。ただのビジネスパートナーだけじゃない何かが、そこには絶対にあるだろ。
本当に、どうして蜜柑と檸檬が死ななきゃいけなかったの……
「でもよ」檸檬がそこで真剣な表情で口を開く。「俺はそう簡単には死なねえよ」
「だろうな。おまえは、死んでもまた、生き返るようなしぶとさがある」
「蜜柑、おまえもだ。俺もおまえも、死んでも絶対、生き返る」
「果物は翌年になってもまた実をつける。それと一緒か」
「復活するんだ」
復活してほしいよ……
またお互いにくだらねえな、って思うようなやり取りを見せてくれよ……
苦しいのに、読んだら自分が苦しくなると分かっているのに、それでも彼らのやり取りが恋しくなって、どうせまた私はこの小説を読むことになる。本当に、ここまで私を喜ばせると同時に苦しめる小説は他にない。
伊坂先生、蜜柑と檸檬という魅力的な人物を生み出してくれて、本当にありがとうございます。私はこれからも蜜柑と檸檬に思いを馳せて生きていきます【完】
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