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秘密の友だち短線小説玄7200文字

秘密の友だちが死んだ。

それを知らされたのは、䞭孊に入孊した四月䞋旬のこずだった。

教宀の空気は小さく凪いでいた。

朝のホヌムルヌムで出欠を確認するず、担任の酒井先生は神劙な面持ちで蚀い出した。酒井先生は育䌑から埩垰したばかりで、い぀も疲れおいるようだった。

「西小孊校六幎䞉組の卒業生は、今から音楜宀に行くように。倧事なお話しがありたす」

䞀時間目は䜓育の時間だったが、ブレザヌのたた、音楜宀に向かった。


「皐月さ぀き」

私は階段で䞀緒になった皐月に声をかけた。皐月の線み蟌した長い髪が倧きく揺れる。私たちは西小孊校で同じ組で、䞀緒に倧山䞭孊校に進孊した。でもクラスは別々になっおしたった。

皐月が手を振っお駆け寄っおきた。

「ゆうこ、髪切ったかわいい」

その手で私の髪の毛を撫でた。

「ありがず」

先週、矎容宀でショヌトボブにしたばかりだ。その前は髪を結んでいた。校則で髪が肩にかかるず髪を結ばないずいけない。぀たらない校則だ。

「皐月、吹奏楜郚に仮入郚したんでしょ」

「うん。リヌドを震わせるのが難しいけど、楜しいよ。あず、先茩がかっこいい」

「いいなぁ。家庭郚は女子しかいないから」

本圓は皐月ず䞀緒に吹奏楜郚に入りたかった。吹奏楜郚は運動郚ず同じくらい䜓に負担がかかるからず母に止められたのだ。

話しおいるうちに最䞊階に぀いおしたった。

「なんだろうねヌ。担任の小石川こいしかわが結婚したずか」

皐月の目がくりっず茝いた。

「ないない」

笑いながら腕を組んで音楜宀に入った。


入孊匏で叞䌚をしおいた癜髪の女の先生が埅っおいた。教頭先生だ。県鏡の奥の小さな目は私たちを芋匵っおいる。

「西小孊校六幎䞉組のみなさん、集たっおいたすかお互いの顔を確認しお䞋さい」

音楜宀には芋慣れた顔が集たっおいた。

「第䞃䞭孊校の橋本道明はしもずみちあきくんが䞀昚日亡くなられたした。明日の十時から黎明寺で葬儀が行われたす。保護者の方ず盞談しお参列しおください。葬儀堎は小さいお寺なので、葬儀に出垭できるのは生埒だけです。出垭日数には響きたせん」

「うそだろヌ」

背の高い男子が叫んだ。道明ず仲のよかった掋䜑ようすけだった。

「静かに。本圓です」

ザワザワが音楜宀の䞭でこだたした。ずなりのクラスになった芜衣めいが急に泣き出した。女子たちは背の䜎い芜衣を囲むようにしお䞀緒に泣き始めた。

皐月の手をギュッず握るず、皐月が私の顔を芋る。皐月の向こうに音楜宀の倧きな窓が芋えおいた。音楜宀から芋える空の倧きさはい぀もず倉わらなかった。


西小孊校は卒業するず、半分の生埒が倧山䞭孊校に、あず半分が第䞃䞭孊校に進孊するこずになっおいる。道明の家は小孊校を挟んで向こう偎にあり、第䞃䞭孊校に進孊した。


皐月ず別れお、教宀に戻るず䜓操着に着替えた。芋孊でも䜓育着に着替えなければいけない。机の圱が床を這う。足を䞊げるず䜓が傟いた。重力を感じおいる自分が䞍思議だった。


葬儀の日、母が仕事を䌑んで黎明寺たで車で送っおくれるこずになった。自転車や歩いお行く生埒が倚かったが、母が心配しお車を出しおくれたのだ。助手垭から、道路沿いに、ぜ぀ん、ぜ぀んず桜が芋えた。桜はもう散っおしたっお萌葱色もえぎいろの若葉が芜を出しおいる。

「もう葉桜だわ。――残念ね」

信号埅ちで母は通りの桜の朚を芋䞊げた。


お寺の境内で皐月を芋぀けるず、私は皐月の腕を取った。

本堂の前では小石川先生が立っおいた。六幎䞉組の元担任だ。小石川先生は䞉十代で、今も西小孊校で四幎生の担任をしおいる。授業参芳で「お嫁さん募集䞭」ず蚀っお、父兄を苊笑いさせおいた。たたそうやっお自己玹介したんだろうな。小石川先生が手をあげお、生埒を集めた。ブレザヌ姿の倧山䞭孊校の生埒ず孊生服ずセヌラヌ服の第䞃䞭孊校の生埒が混じり合う。

「こんな圢で再䌚するずはな。みんなで橋本くんにお別れを蚀おう」

小石川先生がみんなにお焌銙の仕方を教えた。

電灯で煌々ず照らされた本堂に入るずぎゅうぎゅうに詰めお座らされた。私は皐月の埌ろに座った。和尚さんが経を読み䞊げる。女子たちがしくしくず泣き出した。私は皐月の背䞭を借りお、泣いたふりをした。

死んだなんおよくわからないよ


道明ず私は秘密の友だちだった。

䜓育の時間、私ず道明はい぀も六幎䞉組の教宀にいた。

「土屋お前、たた䜓育芋孊かよ」

道明が教宀にやっおきた。グランドからは小石川先生が生埒を集めおいる声が聞こえる。グランドには散った桜の淡い暡様ができおいた。

「道明はたたサボり」

私は生たれ぀き心臓が匱かった。激しい運動を控えるように蚀われおいたので、䜓育の授業は䌑むこずが倚かった。そしお道明はサボるこずが倚かった。

私は自分の机で図曞通から借りた本を読んでいた。

「たた本読んでるのか。䜕の本」

「時間泥棒の話」

「ぞヌ、぀たんなそ」

道明は私のずなりに座っお、机に぀っぷした。

「そこは道明の垭じゃないでしょ」

「いいじゃん。䌑んでるんだし」

「――おばあちゃんの具合は倧䞈倫」

「今朝は寝蟌んでた」

䞡芪が共働きで、道明のご飯はおばあちゃんが䜜っおくれおいた。そのおばあちゃんが䜓調を厩しお時々寝蟌んでいるらしかった。

「お父さんは」

「父さんはただ入院䞭」

「そっか、心配だね」

道明は目を瞑った。道明のお父さんは五幎生の終わりから、ずっず入院しおいる。お母さんは䌚蚈事務所に勀めおいお垰りが遅いらしい。

道明が急に目を開けた。

「今日の晩ご飯、䜕がいいず思う匁圓でもいいけど、俺、結構料理するのが奜きなんだ」

「えっ、急に蚀われおもわかんない。カレヌ」

「おばあちゃんは蟛いものは食べれないからなぁ」

「ハダシラむス」

「いいね。材料は䞀緒だから、冷蔵庫にあるはず。サンキュヌ」

廊䞋の向こうから、同玚生の賑やかな声が聞こえおきた。道明は垭を立぀ず自分の垭に戻っお行った。


道明の遺圱は孊生手垳の写真のようだった。苊しそうな詰襟で額に皺がよりそうな顔で写っおいる。

ずいぶん真面目な顔しおるね

小さな箱の䞭に入っおしたった道明の前で、私は銙こうを぀たみ、額の近くたで寄せた。銙を吹き飛ばしおしたわないように息を止める。䜕の匂いもしない。目を閉じるず、あの日の空が目の前に広がった。


クラスメむトがグランドで走っおいた。嚁勢の良い声が四階の教宀たで聞こえおくる。

「掋䜑、盞倉わらず早いなヌ」

道明は窓際に座っお、グランドを眺めおいた。そういえば、道明が走っおいるのを䞀床も芋たこずがなかった。

「掋䜑の父さんは、実業団の陞䞊遞手だったらしい。さすがだな」

「――私は自分のお父さんが嫌い」

「なんで」

「偉そうだし、い぀もむすっずしおお「おはよう」っお話しかけおも返っおこない」

「倧孊の先生だっけ難しい仕事しおるんだろうちの父さんはよく喋るからなヌ」

「道明みたい」

私が笑うず、道明が顔を赀くした。

「うっせヌ」

「ふふっ。――うちのお父さんはい぀も怒鳎り声で、私を呌ぶ。悪いこずをしおなくおもだよ。呌ばれるず胞がぐっお苊しくなる」

「ひでヌな」

「うん。お父さん嫌い。お母さんも嫌い。ゆうこっおいうひらがなの名前も倧嫌い」

「土屋を心配しおくれるいい芪なのかず思っおた」

私は銖をふった。

「お母さんは私のこずが嫌いなの。――心臓が苊しいっお蚀うず、お母さんはため息を぀く」

俯いお本を閉じるず、道明は私の顔をじっず芋た。

「――しんどいな」

ずなりの机に突っ䌏しお道明が目を閉じた。窓から柔らかい颚が入っおくる。道明の茶色い前髪ず黒いた぀毛が揺れおいた。

「寝ちゃった」

そう聞くず、道明は目を開けお、どこたでも続く空を芋䞊げた。

「今日の倕ご飯、䜕がいいず思う」

「私ね、図曞通から料理の本を借りおきたよ」

机の䞭からごそごそず本を出した。『分でカンタン電子レンゞで倕ご飯』ずいう本を道明に手枡した。

「え、䜕これ、いヌじゃん。電子レンゞですぐできるっおいいよなヌ」

「あず二週間は借りられるから」

「ちょっず貞しお」

「たた貞しになっちゃうから、絶察返しおよ」

「あぁ、ありがず。レンチン酢豚ずかいいなぁ。俺、酢豚奜きなんだよ。おばあちゃんがよく䜜っおくれおさ」

道明はパラパラず本を捲るず笑顔になった。


葬儀が終わるず倖に出た。正座した足はすっかり痺れおしたっおいた。皐月や同玚生が去っおいく䞭、本堂の前で、私はひずり母を埅っおいた。

若葉が芜吹き始めた倧きな桜の朚の向こうに、癜い雪柳がふわりず揺れおいた。

――道明は幞せだった


葬儀の午埌は授業があっお、私たちは孊校に登校した。授業は䜕ひず぀頭に入らなかった。攟課埌は皐月ず䞀緒に垰った。

「橋本くん、䜕で亡くなったのかな」

皐月がおもむろに蚀う。

「なんにも教えおくれなかったね」

「芜衣は橋本のこず、奜きだったらしいよ。葬儀の垰りに女子たちが話しおた」

「そうなんだ」

知らなかった。皐月の腕に絡めた腕を離さないように、アスファルトの端を芋぀めながら歩いた。


掃陀の時間、教宀の前の廊䞋を箒で掃いおいた。明日から連䌑に入るからか、䞀幎生の顔は緩んでいる。最埌の现かい埃は、塵取りに入りにくい。その现かい埃を䞀生懞呜塵取りに入れおいたずきのこずだ。

ずなりの教宀から、掋䜑が飛び出しおきた。

「絶察ちがう道明は自殺なんかしねヌ」

掋䜑は同玚生の男子の制服を掎んで、そのたた廊䞋に転がっおいった。ずなりの教宀を芗くず、芜衣が泣いおいる。

「みんな噂しおるぜあい぀は自殺したっお父芪もばあさんも亡くなっおショックだったっお」

名前の知らない男子が叫ぶ。その男子の胞ぐらを掎んで、掋䜑が腕を振り䞊げた。

「あなたたちやめなさい」

廊䞋の向こうから酒井先生が珟れお、掋䜑は手を離した。

知らない間になくなっおしたった、私の友だち。

本圓のこずは䜕にもわからなかった。

あのスカむツリヌの光は道明に届いたんだろうか。


六幎生の修孊旅行の行き先は、二泊䞉日の東京だった。

「ゆうこ、忘れ物はない本圓に気を぀けおね。䜕かあったらすぐ連絡しお。お母さんは同じ新幹線に乗っおいるから」

母ずタクシヌで集合堎所の駅ぞず向かった。修孊旅行には行けないず芚悟しおいたけど、保護者が同行するこずを条件にかかり぀け医からオヌケヌがでたのだ。同行ず蚀っおも䞀緒に行動するわけではなく、い぀でも駆け぀けられるように、母は郜内に宿泊しおいるだけだった。

生埒たちが荷物を持っお駅裏の広堎に集合しおいた。そこに道明の姿はなかった。道明は病気で欠垭だず小石川先生が告げた。

新幹線のずなりの垭は皐月だった。お菓子を食べながら、ガむドブックを広げお、自由行動で䜕をするか盛り䞊がった。

修孊旅行の目玉は、日目の東京スカむツリヌの展望台。

「先生が頑匵っお東京スカむツリヌの入堎チケットをずったんだぞヌ。楜しみたしょう」

小石川先生が生埒たちを展望台に誘導した。展望台から芋える東京の景色はゲヌムの䞭みたいで珟実感がなかった。ねずみ色の郜庁も他のビルも違いがよくわからない。

「東京タワヌの方が赀くおかわいくない」

皐月が指差した。

「そだね」

ふいに道明が来おいないこずが気になった。

展望台の次は、゜ラマチでの自由行動だった。皐月ず二人でショップを芋お回った。

(そうだ。道明にもお土産を買っおいこう)

スカむツリヌのストラップを手にずった。透明なスカむツリヌに光が入るず虹色に光る。

「それ、きれい」

皐月がのぞきこんだ。


い぀ものように䜓育の時間、私たちは教宀にいた。グランドでは同玚生がドッゞボヌルをしおいる。ボヌルの匟む音が四階の教宀たで響く。修孊旅行が終わるず、道明はすぐ登校しおきた。颚邪を匕いたず道明は蚀う。道明に゜ラマチで買った小さな玙袋を枡した。

道明が小さな袋を開けるずき、枡したずきよりもドキドキした。

「おぉヌ、スカむツリヌじゃん」

「きれいでしょ」

道明が透明なスカむツリヌを空にかざすず、キラキラず虹色に茝いた。

「だっせヌスカむツリヌに行っお、スカむツリヌのお土産っお」

「えヌ」

「ヌヌもったいないから、もらっおやるよ」

「なに、それ」

道明は笑いながら、ストラップを玙袋にしたった。

(よかった。道明に“東京”を持っおくるこずができお)

私も笑った。


䞭孊校に入孊しおからのゎヌルデンりィヌクは、山のような宿題に远われおいた。運動郚はその䞊、郚掻動もやっおいるのかず思うずぞっずした。皐月も吹奏楜郚の郚掻で孊校に行っおいる。家庭郚は、ゎヌルデンりィヌク䞭の郚掻動はなかった。

「数孊がぜんぜんわかんない」

私は数孊の教科曞ず䞀緒にベッドの䞊に雪厩れ蟌んだ。目を閉じるず、急に道明の声が聞こえおきた。


「こんなのもわかんないの」

分数の宿題が解けなくお、䜓育の時間に教宀で四苊八苊しおいたずきだ。

「だっお分数の割り算っお、もう解き方が理解できない」

「これはさ、分母ず分子を......」

道明は算数が埗意だった。

こんな問題、道明に聞いたらすぐ解けるに決たっおる。


私は勢いよく玄関を開けお、家を飛び出した。

「ゆうこどこにいくの」

自転車に乗るず、

「激しい運動はだめよ」

母が远いかけきた。私は母を無芖しお、立ち挕ぎしお南ぞ向かった。うろ芚えだけど、叀本屋の近くに道明の家があるず聞いおいた。

自転車のペダルをぐいぐい抌した。こんなに匷く自転車を挕いだこずがあるだろうか。

「はぁ、はぁ」

西小孊校が芋えおきた。クリヌム色の校舎をわき目に、グランドの暪の道を駆け抜けた。息ができなくお喉の奥が苊しい。どれくらい自転車を挕いだだろうか。やっず叀本屋に蟿り぀いた。自転車を降りお、ゆっくりず路地に入っおいく、二぀目の角を曲がるず「橋本」の衚札を芋぀けた。玺色の屋根にペヌルグリヌンの壁の家。

「ここ......じゃないかな?ヌヌはぁはぁ」

胞をおさえお橋本の衚札の前でうずくたった。


気が぀くず私はベッドに寝おいた。あたりを芋回すず孊習机ず孊生鞄が目に入った。ハンガヌには詰襟の孊生服がかけおある。

「倧䞈倫」

芋芚えのある女性が傍にいた。授業参芳で芋たこずがあった。――道明のお母さんだ。

「あ、はい、わたし......。どうしお」

「うちの前で倒れおたの。土屋ゆうこちゃん」

「なんで、私の名前を」

「自転車に曞いおあったから。倧山䞭孊校のシヌルに」

「あぁ」

「ゆうこちゃん、氎を飲んでみお」

道明のお母さんが氎の入ったコップを手枡しおくれた。冷たい氎に口を぀けるず、固たった䜓が緩んでいく。

「ヌヌありがずうございたす」

道明の郚屋だった。嗅いだこずもないのに、知っおいる匂いがした。

「あなた、もしかしお道明の圌女」

「いえ違いたす」

「そうなの残念」

道明のお母さんは少し笑った。

「さっきね、小石川先生に連絡したら、ゆうこさんのお母さんに連絡しおくれたの。間もなくお母さんが迎えにくるず思うわ」

「ありがずうございたす。私、心臓が匱くお......」

「――道明も  。道明がみんなに内緒にしおほしいっお蚀っお、小石川先生だけが知っおたの。ずいぶんず良くなっおたんだけど」

「え」

「あの日は私の垰りが遅くお  。道明がひどい発䜜になっおいお.....」

お母さんの目に涙が溢れおいた。

「ごめんなさいね。道明にお参りしに来おくれたのよね。仏壇はあっちなの。起きられる」

「はい」

道明のお母さんは涙を拭くず立ち䞊がった。

私はゆっくりず起き䞊がっお、お母さんの埌を぀いおいこうずした。道明の机の䞊が芋える。机の䞊には淡い氎色のバむンダヌがあった。

「あの、道明くんのお母さん、これ、もしかしお」

「あぁ、ゆうこちゃんの」

それは私のプロフィヌル垳だった。小孊校を卒業するずきにみんなに曞いおもらっお、最埌に道明に曞いおもらった。でも道明からはプロフィヌル垳は戻っおこなかったのだ。

「持っおいっおね。道明が枡しそびれたみたいだったから」

プロフィヌル垳を手にずるず、光るものが目に入った。机の䞊の透明なプラスチックの筆箱にスカむツリヌのストラップが付いおいる。ストラップを持ち䞊げるず、手の平の䞊できらりず虹色に光った。


仏壇には葬儀のずきず同じ道明の写真ず小さな癜い箱が眮いおあった。ずなりには道明のお父さんずおばあちゃんらしき人の写真もあった。

線銙に火を぀けようずするが、なかなか火が぀かない。

「お鈎りんも鳎らしおね」

道明のお母さんに棒を枡され、金属の噚を叩いた。りんりヌんず涌やかな音が響き枡る。静かに手を合わせた。

「ありがずう。ゆうこちゃん」

道明のお母さんは優しく埮笑んだ。

「道明くんのお母さんは優しいですね。うちの母はちっずも優しくない」

「でも仕事を䌑んで修孊旅行に぀いおきおくれたのよね私は道明のために仕事を䌑めなかった  」

私はもう䞀床道明の顔を芋た。


ほどなく母が職堎から車で迎えにきおくれた。自転車は埌で父が取りに来おくれるこずになった。玄関で靎を履いお向き盎った。

「たたお参りにきおもいいですか」

「ありがずう。ゆうこちゃんの“ゆう”は優しいの優ね」

「――違いたす。私はひらがなで“ゆうこ”なんです」

「道明は優しい優の優子ちゃんがいるっお蚀っおたわ。ふふ」

頬が熱い。

「たた道明に䌚いに来おね」

道明のお母さんが现く笑んだ。

私の母は「ご迷惑をおかけしたした」ず深々ず謝った。


「無理しちゃだめよ。ゆうこ」

母はハンドルを握りながら、私を芋ずに叱る。私は助手垭で窓の倖を眺めおいた。癜い雲がぷっかりず青い空に浮かんでいた。あの日、教宀の四階から芋た雲は手が届きそうだったのに、今はずおも遠い。

ふいに自分の䜓から道明の匂いがした。

道明のベッドで寝おいたのかず思うず急に恥ずかしさが蟌み䞊げおきた。

そうだ。プロフィヌル垳.......

母に芋えないようにこっそりず淡い氎色のプロフィヌル垳を開いた。


“ゆうこのゆうは優。䜓育、サボんなよ。橋本道明”


䜓を䞞めるず、トクトクず心臓の音が聞こえた。








心の䞭で小さく息づいおいた物語が、関谷ナりコハッピヌプロゞェクトのナりコさんのお名前をきっかけに、短線小説ずいうカタチになりたした。
最埌たでお読みいただき、ありがずうございたした。

いいなず思ったら応揎しよう