夢と酔い⑦|理想が牙を剥く
世界が、
静かに敵へと変わった。
音はある。
人もいる。
光も差している。
なのに、
どれも信用できない。
理想は、
もう背中を押さない。
前を指さしもしない。
ただ、
歯を剥いて立っている。
「ここまで来たんだろ」
「諦める理由はないだろ」
そう言って、
退路を噛み砕く。
地面に足をつけた記憶はある。
硬さも、冷たさも、確かだった。
だが今は、
どこを踏んでも沈む。
夢に酔った。
言い訳で眠った。
そして夜は、
すべてを壊した。
残ったのは、
疑い方だけを覚えた意識だ。
他人の言葉は甘い罠に見える。
励ましは、
刃を包んだ布だ。
世界が敵なら、
自分は味方か。
そう思った瞬間、
その考えさえ疑い始める。
逃げてきたのは、
世界からか。
それとも、
自分からか。
理想は言う。
「まだ足りない」
「まだ低い」
「まだ遠い」
それはもう、
夢じゃない。
命令だ。
歩く。
止まれば噛まれる。
進めば削られる。
守るものはない。
信じる理由もない。
それでも、
足だけは前に出る。
希望があるからじゃない。
戻る場所がないからだ。
この世界で、
一番信用できないのは、
他人でも、現実でもない。
——自分自身だ。
お前は今、
その牙が
どこから伸びているか
見えているか。
