「日本にはもう一つの金鉱山がある。」捨てられた電子機器から金を生み出す
私たちは毎日、スマートフォンやパソコン、ゲーム機などの電子機器を使っています。しかし、それらが壊れて処分されたあと、その内部に眠る貴重な金属について考える人は多くありません。
実は日本では、不要になった電子機器が「都市鉱山」と呼ばれています。地下ではなく、街の中に存在する鉱山です。
基板は小さな金鉱山だった
私たちが普段使っているスマートフォンやパソコン、家電製品の基板には、金だけでなく銀や銅、パラジウム、ニッケル、レアメタルなど、多くの貴重な金属が使われています。これらの金属は、半導体やEV(電気自動車)、AIサーバー、通信機器など、現代社会を支える最先端技術に欠かせない重要な資源です。
福岡県北九州市に本社を置くリサイクル企業「アステック入江」では、独自の技術によって、使用済みの電子基板からこれらの金属を回収しています。
特に注目されるのが金です。基板の種類によっては、1トンを処理することで100グラム以上の金を回収できるものもあります。
一方、天然の金鉱山では、1トンの鉱石から採れる金は数グラム程度にとどまるケースも少なくありません。もちろん、すべての電子基板がこれほど高い含有率を持つわけではありませんが、高品質な電子基板の中には、天然の金鉱石を上回るほど高濃度の金属資源を含むものもあります。
資源価格が高騰する現在、役目を終えた電子機器は単なる廃棄物ではなく、貴重な資源を再び社会へ循環させる「都市鉱山」として、その価値がますます高まっています。
日本は世界有数の「都市鉱山大国」
サステナビリティ技術設計機構の推計では、日本の都市鉱山には世界全体の埋蔵量の約10%に相当する金が眠っているとされています。
もちろん、それをすべて取り出せるわけではありません。
それでも、日本国内には大量の使用済み電子機器が蓄積されており、資源としての価値は年々高まっています。
「資源を掘る」から「資源を回収する」時代へ
日本は資源の多くを海外からの輸入に頼っています。しかし、役目を終えた電子機器を資源として再利用する「都市鉱山」は、国内で循環できる数少ない資源の一つです。
新たな鉱山を開発する必要がなく、廃棄物を資源へと生まれ変わらせることができるため、環境負荷の低減にもつながります。また、資源価格の高騰や国際情勢の変化によって資源安全保障の重要性が増す中、都市鉱山は経済だけでなく国家戦略の観点からも注目されています。
ただし、都市鉱山の価値は、電子機器が大量に存在するだけでは生まれません。重要なのは、そこから金やレアメタルを効率よく取り出し、高純度で精製する技術です。
こうした高度なリサイクル技術は、日本企業が世界でも強みを持つ分野の一つとされています。
これからは、地下から資源を掘り出すだけでなく、街の中で使われた製品から資源を回収し、再び社会へ循環させる時代になっていくのかもしれません。都市鉱山は、日本が持つ「もう一つの鉱山」として、今後さらに存在感を高めていくでしょう。
