「毎週ショートショートnote」 高校野球怪談
「甲子園に行くんだ。」と公園で素振りをする兄ちゃんにくっついて、砂場で遊ぶのが日課だった。
折角作った山が崩された。
砂だらけの手で涙を拭いていると、
「目に砂が入っちゃうよ。ほら、泣かない、泣かない。」
と濡れたハンカチで涙を拭ってくれる。
そんな兄ちゃんの顔は、砂山を崩した悪ガキどもに殴られたんだと思う…赤くなっていた。でも、笑顔だった。
高校に上がる前に、病気で呆気なく天国へ行ってしまった。
夢を継ぎたい…野球を始めた。必死に練習した。そして、甲子園の土を踏んだ。ただ、一回戦で敗退した。
兄ちゃんの墓前に供えようと、甲子園の土を集めていた。積み上げた土と砂の山には、いつしか涙が落ちていた…涙を拭こうと手をあげると…
「目に砂が入っちゃうよ。ほら、泣かない、泣かない。」
兄ちゃんが、あの時のように、笑顔でハンカチを差し出していた。
「ありがとうな。」
そう言って、消えていった。
手の中には、あの時のハンカチが握られていた。
田原にかさんの企画に参加させていただきました。
普段はオチのある三題噺ですが、たまには、オチのないショートショートも書いていいですよね?
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