小林剛の契約満了に画面の前で言葉を失った私が全部語ります
U-NEXT Piratesが小林剛との契約を満了し、退団を発表しました。「残念ではありますが、本当にありがとうございました」というチームのコメントを読んで、しばらくぼーっとしてしまいました。
長くMリーグを見てきたファンとして、今日は小林剛という選手への思いを全部吐き出させてください。分析とか予想とかじゃなくて、純粋に「あの人はすごかった」という話をしたいんです。
發を出すか出さないか——あの数分間で息ができなくなった話
小林剛の退団を語る上で、絶対に外せない場面があります。
2019-20ファイナルシリーズ12戦目、南4局1本場。魚谷のリーチに対して、發が出そうになったあの場面です。發が小林剛から出ればセガサミーの優勝でした。
正直に言います。あの瞬間、私は「出すかもしれない」と思っていました。確実に出さないとは言えない状況でした。人によっては出してもおかしくない、そういう局面だったんです。
画面の前で固唾を飲んでいました。ここで發を放銃してしまえばパイレーツの優勝がなくなる。チームメイトの瑞原、朝倉、石橋が、監督が、ファンが、みんながっかりする——その瞬間を見るのが怖かった。小林剛なら絶対出さないという確信は、その時の私にはなかったんです。
だからこそあの数分間は、画面の前で息ができないくらいハラハラドキドキでした。
そして小林剛は、冷静に理屈で考えて、發を出さなかった。
オリ切って、パイレーツに初優勝をもたらした。チームメイトが固唾を飲んで見守る中、船長として最後の最後まで仕事をやり切った。かっこよかった。本当にかっこよかった。今でも思い出すだけで胸が熱くなります。小林剛の契約満了を知って、真っ先にこの場面が頭に浮かびました。
仲間が泣いている時に逆転条件を確認していた男
もう一つ、忘れられない場面があります。ご存じでしょうか。
2021-22セミファイナル最終日のことです。追い詰められたパイレーツの第1試合で石橋伸洋が痛恨のラスを引き、4位以内が遠のいた。「情けないです。チームに…すいません」と涙でインタビューに応じ、瑞原明奈は顔を覆い、朝倉康心も表情を失っていた。
でもリーダー小林剛は違いました。第2試合に向けて、木下尚監督に逆転条件を確認していたんです。「風林火山とABEMASと格闘倶楽部の点差をください」と。
このエピソードを知った時、胸が締め付けられました。
仲間が泣いている。絶望的な状況。普通の人間なら一緒に肩を落とすか、気持ちを切り替えるのに時間がかかる。でも小林剛は感情より先に頭が動いていた。諦めない気持ちと冷静さが同時に存在している——それが小林剛という人間の本質だと思いました。
敗退後、控室に戻るなり「まだまだ、もっと勝つやり方があったと思います。今後も頑張って麻雀を覚えて、勉強して、やっていきたいと思います」と、またいつもの口調に戻っていたそうです。
敗退した直後にこれが言える人間が、どれだけいるでしょうか。小林剛の契約満了が惜しまれるのは、こういうリーダーとしての器があったからだと思っています。
オカルトに臆せず向かっていった麻雀界への貢献
少し毛色の違う話をさせてください。
かなり前の話ですが、小林剛が桜井章一と対談をしていました。麻雀界のオカルト思考の象徴とも言える桜井章一に対して、小林剛がデジタル思考で真っ向からぶつかっていった、あの対談です。
見ていて「よく言ってくれた!」と思いました。溜飲が下がるというか、ミーハーな言い方をすれば「推しが代弁してくれた」みたいな気持ちというか。
でも小林剛がすごかったのは、年上で麻雀界での知名度も影響力も大きい桜井章一をまずしっかり立てて、謙虚な姿勢でデジタル思考をぶつけていったところです。喧嘩を売るんじゃなくて、敬意を持ちながら「でも私はこう考えます」と言い切る。その立ち居振る舞いも含めて、立派だと思いました。
今の麻雀界における合理的思考、デジタル戦術の主流をある意味で作った一人が小林剛だと私は思っています。オカルトと真剣に向き合い、理論で戦うことで麻雀界の戦術進化に貢献した人物として、歴史に残るはずです。
なぜここ数年成績が落ちたのか——「読まれた」という推測
正直に書きます。小林剛の退団の背景には、ここ数年の成績不振があったと思います。それを書かないとフェアじゃない。
なぜ成績が落ちたのか。私なりの推測があります。
長くMリーグで戦い続けることで、他の選手に「読まれてしまった」んじゃないかということです。つまり人読みです。小林剛ならこう打ってくる、この状況ならこうする——そういう傾向が分析されて、対策を取られてしまっていた。
石橋伸洋は小林剛についてこう語っています。「『麻雀はこういうゲーム』というのがブレない。他の人だと結果によって『麻雀ってこういうもんだ』と考え方が変わる。小林さんはそういうのがない。一生ブレないんじゃないかと思うくらい完成された選手」と。
この「ブレない」という特性は長所である一方、長期戦では読まれやすさにも繋がってしまう。相手を幻惑するとか、違う自分を見せて惑わすということをしないので、同じ麻雀を打ち続けた結果として、ここ数年は厳しい成績になってしまったんじゃないかと思っています。あくまで個人的な推測ですが、これはあまり言われない視点だと思っているので書いておきたかった。
契約満了という終わり方とこれからへの期待
Mリーグから退団しましたが、小林剛という存在は麻雀界にとって不可欠だと私は思っています。
麻雀連合における存在感、そして今後は団体の代表になっていくであろう立場として、麻雀界の発展を引っ張っていく人物であることは間違いない。契約満了という形でMリーグを去ることになりましたが、再び指名される可能性もゼロではないと思っています。
發を出さなかったあの一局を、私はずっと忘れません。
小林剛、本当にお疲れ様でした。
