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【完全網羅】「第1種か第3種か」の泥沼論争に終止符を。アトリエ建築家が教える24時間換気システムのすべて

家づくりにおいて、お施主様の関心が最も高いのは「間取り」や「キッチンのグレード」、そして「断熱材の種類」です。 ネットやSNSで熱心に勉強されている方は、「UA値は〇〇以下にすべきだ」「トリプルガラスの樹脂サッシ以外はあり得ない」と、目に見えるスペックには数百万円単位で惜しみなく課金します。

しかし、そんな勉強熱心なお施主様であっても、驚くほど無頓着で、住宅会社の営業マンに言われるがままにスルーしてしまう「家の寿命と快適さを決定づける超重要項目」があります。

それが、「24時間換気システム」です。

断熱材やサッシに何百万円も投資して魔法瓶のような高気密高断熱の家を作ったのに、換気計画がずさんな家。それはもはや高級な羽毛で作られたダウンジャケットを着ているのに、手袋にデカい穴が空いている状態です。 どれほど分厚いダウンを着ていても、手元の穴から冷気が吹き込み、冷たい風が背中を通り抜けていけば、ダウンの性能など何の意味も持ちません。

現在、SNSの家づくり界隈では、「第1種換気(熱交換型)=絶対正義」「第3種換気=時代遅れの建売仕様」という、極端な二元論が蔓延しています。営業マンもまた、「うちは最新の第1種換気ですから、冬でも暖かくて最高ですよ!」とオーバースペックな機械を売り込んできます。

しかし、アトリエ建築家として実務の最前線で図面と格闘している私から見ると、この「第1種換気至上主義」には、後戻りできない恐ろしい罠が潜んでいます。

本稿は、住宅業界最大のブラックボックスの一つである「換気システム」について詳しく説明しようと思います。 「換気と気密の切っても切れない関係」から始まり、不当に貶められている「第3種換気」の本当の価値、神格化されている「第1種換気」の天井裏に潜むダクト汚染の恐怖、そしてプロが現場で実践しているマニアックな「設計の裏技」まで、余すところなくお話しします。

ネットの表面的なスペック競争に踊らされず、数十年先を見据えた「本当に賢い選択」をするための武装を、ここで完成させてください。


第1章:なぜ今の家には「24時間換気」が必要なのか?

そもそも、なぜ現代の住宅には「24時間、機械で空気を入れ替え続けるシステム」が義務付けられているのでしょうか。

昭和や平成初期の日本の木造住宅には、こんなシステムはありませんでした。なぜなら、昔の家は「隙間だらけ」だったからです。 アルミの単板サッシの隙間や、床下の構造の隙間から、常に自然の風が吹き抜け、家は文字通り勝手に呼吸をしていました。冬は隙間風で震えるほど寒い代わりに、室内の空気は常に新鮮で、結露もしにくいという皮肉なメリットがあったのです。

しかし、時代は移り変わり、住宅は「高気密・高断熱化」へと舵を切りました。 隙間風をなくし、魔法瓶のように密閉された空間を作る。それは冬の寒さを克服する素晴らしい進化でしたが、同時に新たな悲劇を生み出しました。 密閉された空間の中で、建材や接着剤、壁紙から揮発する化学物質(ホルムアルデヒド等)が家中に滞留し、住む人が頭痛やめまい、喘息を発症する「シックハウス症候群」が大社会問題となったのです。

これを受け、国は2003年に建築基準法を改正し、「すべての新築住宅において、2時間に1回、家の中の空気がまるまる入れ替わる機械換気設備(24時間換気システム)を設置すること」を義務付けました。 これが、現代の家に換気扇が絶えず回り続けている理由です。

【プロの視点】〇〇の悪い家は、換気システムが完全に死ぬ事実

ここで、家づくりにおいて絶対に知っておかなければならない残酷な事実をお伝えします。

「家の気密性(C値)が悪いと、どんなに高級な換気システムを入れても全く機能しない」ということです。

換気システムとは、例えるなら「ストローでジュースを吸う行為」です。 コップに入ったジュース(室内の汚れた空気)を、ストロー(換気扇)で吸い上げる。もしストローに穴が空いていなければ、ジュースは下から上へと綺麗に吸い上がります。 しかし、もしストローの側面に無数の小さな穴(家の隙間)が空いていたらどうなるでしょうか? いくら口で一生懸命吸い込んでも、横の穴から空気が漏れる(入ってくる)ばかりで、肝心のコップの底のジュースは全く吸い上がりません。

こういった状態を建築用語で「ショートサーキット(空気の空回り)」と呼びます。

C値(相当隙間面積)が1.0を超えるような隙間だらけの家の場合、換気扇を回しても、換気扇のすぐ近くにある「壁の隙間」から外の空気を取り込んで、そのまま外に捨てるだけになります。肝心の、リビングの奥やクローゼットの中にある淀んだ空気は、何時間経っても全く排出されません。

ハウスメーカーの中には、「うちは最高級の第1種換気を搭載しています!」とアピールしながら、家の気密性(C値)の測定は一切行わない、あるいは「C値2.0以下が基準です」などと平気で言う会社があります。 これは実務者の視点から見れば、完全な詐欺に等しい行為です。ストローに穴が空いているのに、「このストローは吸引力がすごいですよ!」と売っているのと同じです。 換気計画を語る前に、まずは「C値1.0以下(できれば0.5以下)」を現場で確実に担保できる施工力があるかどうか。これが大前提になります。


第2章:3つの換気方式と、住宅では絶対NGな「〇〇換気」

24時間換気システムには、機械(ファン)を使う場所によって「3つの方式」が存在します。ここをしっかり理解しておきましょう。

  • 第1種換気: 【給気】機械 + 【排気】機械 外から空気を取り込むのも、外へ空気を捨てるのも、両方とも機械(ファン)の力で強制的に行う方式です。

  • 第2種換気: 【給気】機械 + 【排気】自然 外から空気を機械で強制的に取り込み、押し出される圧力で、自然に(壁の穴から)空気を外へ逃がす方式です。

  • 第3種換気: 【給気】自然 + 【排気】機械 外の空気を自然に(壁の穴から)取り込み、機械の力で強制的に外へ空気を引っ張り出す方式です。

【プロの視点】なぜ住宅で「第2種換気」は絶対にNGなのか?

建築の知識が少しある方は、「第2種換気」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。 第2種換気は、機械で空気を室内に押し込み続けるため、室内が常にパンパンに膨らんだ状態(正圧:プラスの圧力)になります。すると、外からホコリや菌が室内に侵入できなくなるため、「病院の無菌室」や「半導体のクリーンルーム」などで採用される非常に清潔なシステムです。

「それなら、住宅も第2種換気にすれば花粉もPM2.5も入ってこなくて最高じゃないか!」と思うかもしれません。 しかし、木造住宅において「第2種換気」を採用することは、家を腐らせる自殺行為です。絶対にやってはいけません。

理由は、第2種換気がもたらす「正圧(室内の圧力が外より高い状態)」にあります。 冬場、暖房で暖められ、人間が生活することで発生した「大量の湿気を含んだ空気」が、換気扇の圧力によって部屋中から外へ外へと押し出されようとします。

もしその時、壁の中にわずかな隙間(コンセントの裏や防湿シートの破れ)があったらどうなるでしょうか。 圧力に押された室内の湿った空気が、壁の中の隙間に強引に押し込まれていきます。そして、外の冷気で冷やされた外壁側の部材に触れた瞬間、壁の中で大量の「壁体内結露」を引き起こすのです。 つまり、第2種換気は「自らの手で、家の壁の中に湿気を強制圧送し、柱を腐らせるシステム」になってしまうのです。だからこそ、一般的な木造住宅では第2種換気は採用されません。


第3章:「第3種換気」は本当に悪なのか?プロが語る意外な真実

住宅の換気システムは、実質的に「第1種」か「第3種」の二択になります。 そして現在、ローコストメーカーや建売住宅で最も多く採用されているのが「第3種換気(自然給気・機械排気)」です。

SNSでは「第3種換気なんて、冬は寒くて夏は暑い最悪のシステムだ」「第1種換気にしないと後悔する」といった極端な意見が目立ちます。 確かに、第3種換気は壁に空いた給気口(穴)から外の空気が直接入ってくるため、冷暖房の熱が逃げてしまうというデメリットがあります。

しかし、アトリエ建築家として言わせていただくと、「第3種換気は決して悪ではありません。むしろ、予算とメンテナンス性を考えた場合、最も堅牢でコスパに優れた最強のシステム」になり得るのです。

【第3種】のメリット

  • 初期費用(イニシャルコスト)の安さ: 第1種換気に比べて構造が単純なため、システム本体の価格が数十万円単位で安く済みます。

  • 電気代(ランニングコスト)の安さ: 動かすモーターが排気用の換気扇だけなので、電気代が圧倒的に安いです。

  • メンテナンスの容易さと壊れにくさ: これが最大の武器です。構造が極めてシンプル(ただの換気扇)であるため、故障のリスクが低く、万が一壊れても数万円で簡単に交換できます。フィルターの掃除も壁の給気口をパカッと外して洗うだけです。

家は機械ではありません。30年、50年と住み続けるものです。 「15年後に機械が壊れた時、いくらで修理・交換できるか」「日々のフィルター掃除を、ズボラな自分でも継続できるか」という視点を持った時、構造がシンプルである第3種換気は、極めて優秀な選択肢なのです。

【現場のリアル】お施主様が無意識に陥る「〇〇」という悲劇

ただし、第3種換気には実務上、非常に悩ましい問題が存在します。 それは、機械の欠陥ではなく、「お施主様自身の行動」によって引き起こされます。

第3種換気は、壁の給気口から外の冷気がそのまま入ってきます。 そのため、冬場になると、給気口の近くにいるお施主様が「スースーして冷たい風が入ってきて寒い!」と感じます。すると、多くの方が良かれと思って、「給気口のシャッターを完全に閉じてしまう」のです。

給気口(空気の入り口)を塞いだ状態で、24時間換気の排気扇(出口)だけが回り続けるとどうなるか。 室内の空気はどんどん外に吸い出されるのに、新しい空気が入ってこないため、家の中が「強烈な負圧(マイナスの圧力)」になります。

すると、家は少しでも空気を取り込もうとして、ありとあらゆる「想定外の隙間」から強引に空気を引っ張り込み始めます。 例えば、キッチンの換気扇の隙間、コンセントの裏。そして最悪なのが、「水回りの排水口」です。 お風呂や洗濯機、トイレの排水口に溜まっている「封水(トラップの水)」を突き破って、下水管の強烈な悪臭を室内に引き上げてしまうのです。「新築なのに、なんだか家の中がドブ臭い……」というクレームの正体は、大半がこの「お施主様自身による給気口の閉鎖(負圧化)」が原因です。

さらに、負圧が強すぎると玄関のドアが外の気圧に押されて、開けるのに力がいるほど重くなるという現象も起きます。

第3種換気は、コスパ最強の堅牢なシステムです。 しかし、「冬場に冷気が入ってくる局所的な不快感」を理解し、「絶対に給気口を塞いではいけない」という強い意志と知識を持たなければ、自らの手で家の換気を死に追いやってしまうリスクを抱えているのです。

では、この「冷気が入ってくる」という第3種換気の最大の弱点を完全に克服し、家中の温度を均一に保ってくれる魔法のシステム「第1種換気(熱交換型)」は、本当に我々を救ってくれる完璧な救世主なのでしょうか?


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