外壁は何を選べばいいのか。メンテナンス・金額・意匠・経年変化から、建築家が実務で考えていること
家づくりで外壁を決める段階になると、「結局、何を選べばいいですか?」という質問をよく受けます。
窯業系サイディング、ガルバリウム鋼板などの金属外壁、ALC、塗り壁、木板、タイル。少し調べれば、それぞれのメリットとデメリットはいくらでも出てきます。サイディングは比較的安いけれどシーリングのメンテナンスが必要。ガルバリウム鋼板は軽くて耐久性が高い。塗り壁はクラックが入る。木は色が変わる。タイルは高価だけれど長持ちする。家づくりを検討している人なら、このあたりの説明は一度くらい見たことがあると思います。
ただ、実際に住宅を設計していると、この比較だけで外壁を決めることはほとんどありません。同じ金属外壁でも、軒が深い家と軒がほとんどない家では、雨と紫外線の受け方がまったく違います。同じ塗り壁でも、下地の構成、目地の位置、開口部まわりの納まり、施工する職人によって、その後の状態はかなり変わります。同じ窯業系サイディングでも、板の規格寸法を考えずに張った外壁と、窓位置や壁寸法を板割りに合わせて調整した外壁では、同じ製品とは思えないほど見え方が変わります。
さらに言えば、外から見えている材料だけが外壁でもありません。一般的な木造住宅なら、仕上げ材の裏に通気層があり、その内側に透湿防水シートなどによる防水層があり、さらに構造用面材や柱・断熱層があります。窓があれば、連続していた壁に穴を開けることになります。換気フード、給気口、エアコン配管、電気配線なども外壁を貫通します。下端には土台水切りがあり、上端には軒や笠木がある。違う材料が接するところには、見切りやシーリングが必要になります。
つまり、外壁は一枚の材料ではありません。仕上げ材、下地、防水、通気、目地、開口部、役物、軒、足元、設備貫通部、施工者、そして将来どのように補修するのか。そこまで含めて、ようやく一つの外壁になります。
だから私は、「サイディングとガルバリウムならどちらが長持ちしますか」と聞かれても、その条件だけでは答えません。建物の形も敷地も施工体制も、施主が素材の変化をどこまで許容できるのかも分からない状態で、材料だけに順位をつけてもあまり意味がないからです。
今回は、一般的なおすすめ外壁材ランキングのような話はしません。むしろ、外壁を実際に設計するときに何を見て、どこで迷い、どの条件なら何を選ぶのかを書きます。初期費用、メンテナンス費、雨仕舞、防水、通気、シーリング、施工性、補修性、経年変化、意匠まで含めて考えていきます。かなり専門的な話も出てきますが、全部理解する必要はありません。ただ、この記事を読み終わったあとに、「ガルバならメンテナンスフリーだから」「タイルなら一生何もしなくていいから」「塗り壁はひび割れるからやめた方がいい」といった理由だけで外壁を決めることは、たぶんできなくなると思います。
第1章 外壁の「耐久性」を、私は一つの年数では見ない
「30年持つ」のは、いったい何なのか
外壁を調べていると、「耐用年数30年」「30年間高耐候」「長期保証」「メンテナンスコストを削減」といった数字が多く出てきます。数字は比較しやすいので、それを基準に材料を選びたくなるのはよく分かります。ただ、30年持つと書かれていたとき、私なら最初に何が30年なのかを確認します。
外壁材の基材なのか、表面塗膜なのか。色が大きく変わらない期間なのか。シーリングなのか。メーカー保証の対象期間なのか。促進耐候試験などから推定した材料単体の性能なのか。同じ外壁システムの中でも、それぞれ寿命も劣化の仕方も違います。
窯業系サイディングを例にすると分かりやすいです。外壁材そのものが健全でも、表面塗膜は紫外線を受けます。目地のシーリングは建物の動きや温度変化を受ける。出隅や土台水切りなどの金属役物には、また別の劣化があります。外壁材本体が30年使えることと、30年間すべての部位に何もしなくていいことはまったく同じではありません。住宅の外壁はある日突然全体が一斉に寿命を迎えるわけでもなく、南面だけ先に退色することもあれば、北面は色が残っていても日射が少なく乾きにくいことで藻や苔が出ることもあります。壁の真ん中はきれいなのに、窓まわりのシーリングだけ傷んでいることもあります。
だから私は耐久性という言葉を一つの軸にまとめすぎないようにしています。少なくとも、美観、防水、安全性、材料そのものの健全性は分けて考えます。少し色褪せてきたというのは、多くの場合まず美観の問題です。シーリングが剥離し、その奥へ水が入り続けているなら防水の問題になります。高い位置のタイルに浮きがあり、剥落する可能性があるなら安全性の問題です。同じ「劣化」という言葉でも、対応の優先順位はまったく違います。
劣化と経年変化、メンテナンスを分けて考える
木板の外壁もそうです。新築時には茶色だった木が、何年か経って銀灰色になったとします。それを「寿命」と見るのか「経年変化」と見るのかで、メンテナンスの考え方は変わります。完成時の色を維持したければ塗装をやり直す必要がありますが、変色を許容し、木材自体が健全なら、そのまま使い続けるという考え方もあります。
逆にタイルは表面材料そのものの耐候性はかなり高く、塗装系外壁のように表面を定期的に全面塗装する必要は基本的にはありません。ただし、それで壁全体が永久に無点検になるわけではありません。タイルの裏には下地があり、接着剤や張付けモルタルがあり、工法によっては専用下地や引掛け機構があります。タイルそのものがきれいでも、接着状態や下地側に問題が起きる可能性は残ります。
この違いを私はかなり重要だと思っています。外壁材の説明では「メンテナンスが少ない」という言葉がよく使われますが、実際にはメンテナンスがなくなるのではなく、メンテナンスの種類が変わることが多いからです。塗るのか、目地を打ち替えるのか、洗浄するのか、部分交換するのか、接着状態を点検するのか。再塗装は少なくても、高所の点検は必要なのか。この違いを理解した方が、「何年持つか」だけを見るより実際の暮らしには役立ちます。
私はさらに、外壁だけを極端に長寿命化することにも少し慎重です。住宅には屋根もあり、雨樋もあり、軒裏もあり、設備もあります。仮に外壁材だけ50年間一切触らなくてよくても、20年後に屋根の補修で足場を掛けるなら、そのとき外壁も一緒に点検できます。外壁だけで一番長寿命な材料を探すより、住宅全体をどのような周期で見ていくかを考えた方が合理的な場合があります。
私にとって外壁の耐久性は、何年持つ材料かという一つの数字ではありません。どこから変化し、何を点検し、どのように補修できるのか。その一連の仕組みまで含めて耐久性です。
第2章 外壁材を決める前に、まず雨がどう動くかを見る
外壁は一枚で雨を止めているわけではない
外壁材を決めるとき、私は最初にカタログを広げて「この中から好きな色を選んでください」とは考えません。先に建物と敷地を見ます。
平屋なのか二階建てなのか。軒が深いのか、ほとんどないのか。外壁面は単純なのか、凹凸が多いのか。窓が多いのか少ないのか。道路から外壁まで距離があるのか。海に近いのか。西面に強い日射を受けるのか。北側が隣家に近く、雨のあと乾きにくいのか。庭木が外壁に近づくのか。駐輪場や駐車場がすぐ横にあるのか。この段階で、材料の向き不向きはかなり見えてきます。
大きな一枚の壁として静かに見せたいのに、細かな目地が大量に必要になる材料を選べば、意匠と材料の性格が最初からぶつかります。逆に、建物の形が複雑で、予算も限られていて、一定品質で施工したいなら、工業製品である窯業系サイディングがかなり合理的なこともあります。そして、材料名より先に見たいのが雨です。
一般的な木造住宅では、外側の仕上げ材一枚ですべての水を完全に止めるという考え方にはなっていません。仕上げ材の裏側に通気層を設け、その内側に透湿防水シートなどの防水層を設ける。外壁材が一次的に雨を受けながら、その裏へ回った水は防水層で構造側への侵入を防ぎ、下へ流して排出する。内部に残った湿気は乾燥させる。私は外壁を考えるとき、絶対に水を一滴も入れない完璧な板を探すというより、どこかから水が入る可能性があっても、次の層で止めて外へ出せるようにしたいと考えます。
水は上から下へ流れます。だから防水層も水切りも、その流れに逆らわないように納めます。上から流れてきた水が次の部材の裏へ入り込むのではなく、外側へ外側へと排出されるように重ねる。屋根材を下から上へ重ねるのと同じで、建築の雨仕舞には水をどちらへ逃がすかという非常に素朴な原則があります。防水テープを大量に貼れば強くなるという話でもなく、どこから水が来て、次にどこへ流れ、その水が最後に外へ出られるかを見ることの方が重要です。
外壁の真ん中より、私は端部を見ます。窓まわり、外壁下端、外壁上端、出隅、入隅、庇、下屋との取り合い、バルコニー、笠木、換気フード、給気口、配管貫通部。材料が切れたり、方向が変わったり、何かが壁を貫通する場所です。窓は分かりやすい例で、室内から見ると窓を壁いっぱいまで寄せ、余計な枠を見せない方がきれいな場合があります。しかし外側では、防水層をサッシ周囲へきちんと回し、防水テープを施工し、外壁材を留め、必要ならシーリングを施工するための寸法が必要になります。室内側の見え方を数cmきれいにするために外側の防水施工が極端に難しくなるなら、私は窓を少し動かします。
mmで描くのは図面上では簡単ですが、現場では人がつくります。手が入る必要があり、テープを貼る幅が必要で、ヘラを使い、板金を折り、ビスを打ち、シーリングガンを入れる。美しいディテールと施工できないディテールは違います。通気層についても同じで、外壁の裏に隙間がありさえすればいいのではなく、下から上へ連続して空気が動けるか、水が入ったら下へ落ちて排出できるかを見る必要があります。窓や庇、大きな横方向の部材、材料切替部が入れば、通気経路は簡単に分断されます。外からはまったく見えませんが、外壁材の表面性能を少し上げることより、こうした見えない水と空気の経路をきちんとつくる方が重要なことがあります。
軒、開口部、足元が外壁の条件を決める
軒も同じです。軒のない家はすっきり見えますし、建物を箱として見せたい場合には、軒がほとんどない方が意匠的に成立しやすいこともあります。私も必要ならやります。ただ、軒をなくすということは、外壁や窓を直接雨と日射にさらす面積を増やすことでもあります。外壁上部まで雨が当たり、窓上部も濡れやすくなり、南面や西面は紫外線も強く受ける。建築の形で外壁を守らないなら、その分を材料、防水、役物、施工精度に受け持たせることになります。
「軒は出したくない。外壁はできるだけ安くしたい。役物も標準でいい。細部にはあまり予算を掛けたくない」という条件を全部同時に成立させるのは難しく、どこかを減らせば別の場所に負担が移ります。逆に、軒が深い住宅なら材料にとっての条件はかなり楽になります。これは昔の家を真似するべきだという話ではなく、雨と日射に対する建築としての合理性です。
足元についても同じで、外壁下端では雨が地面に当たって跳ね返ります。コンクリート、砂利、土、植栽では跳ね方も汚れ方も違い、白い塗り壁を地面ぎりぎりまで下げれば当然汚れやすくなる。木板なら地面に近いほど湿気の影響を受けやすくなります。
だから、外壁材を決める段階で外構をまったく別の話にはしません。地面は何になるのか、植栽はどこまで近づくのか、散水する場所なのか、土台水切りや外壁下端と仕上げ地盤面の関係をどうするのか。外壁の一番下は建築と庭が接するところです。ここまで考えると、外壁材をカタログの色見本から選ぶという行為は、実はかなり最後の方にあることが分かります。
ここまでは、外壁材を選ぶ前に知っておきたい「耐久性の見方」と「雨の考え方」について書きました。
ここから先では、窯業系サイディング、金属、ALC、塗り壁、木、タイルを、実際の設計ではどう使い分けているのか。さらに、窓まわりや水切り、設備貫通部、メンテナンス費、補修性まで踏み込んでいきます。
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