『オズの魔法使い』
『Wicked』に出てくるオズの話、すっかり忘れていたので、読み返してみた。あえて光文社古典新訳文庫で読む。
ライマン・フランク・ボームが物語を、W.W.デンスロウが挿絵を書いたこの童話は、1900年に発刊された。
訳者あとがきにこう書かれている。
「本書にはそれまでのアメリカの子ども向けの本に執拗に強調されてきた旧い宗教的・道徳的な教訓は一切含まれていない。この物語の根底には、自分で自分の力に気づくという自己発見によってひとは成長するのだという、いかにもアメリカ的な新しい考え方である」
僕がこの本を読んで真っ先に思ったのは、だから日本はアメリカに負けたのか、だからアメリカにトランプが生まれたのか、といったことだった。
今の現代国語には論説と小説があるらしい。現代社会の課題を考えるのに、論説の理解力が必要なのだろうが、小説にこそ、人間が創り上げた虚構虚像に対する本当の問いかけがあると僕は思う。論説は建前、小説は本音だ。だから僕は、古今東西の、小説が好きなのだ。
僕は『オズの魔法使い』を、もう少し心理的に踏み込んで考えている。
人間は、思い込みが必要な生き物なのだろうか。イノベーションは新しい価値観、新しい常識を創る一方で、新しい社会課題を創っている。機会だけを見て、リスクを見ない。本当に必要なのは、物語だ。倫理と言ってもいい。
国連機関の業務で人権デューディリジェンスに触れて、そんなことをぼんやりと考えながら、次の物語を手に取ろうと思う。
2025.8.31
