~PHILOSOPHY Vol.1~ 日本経済大学女子バスケットボール部監督 案浦知仁
大学バスケの魅力のひとつに「監督」という要素がある。バスケットボールを教える指導力だけではなく、そこに滲み出る人間性や情熱が人々を魅了する。人生の分岐点のひとつとも言えるを指導する中で、何を考え、何を伝えようとしているのか。この企画は、大学バスケ界で活躍する監督たちの「フィロソフィー」を紐解いていく。初回は九州王者の日本経済大学女子バスケットボール部監督の案浦知仁氏に話を聞いていく。
目の前の一戦に対してもっと真剣に向き合うべきだった。
宮本 お忙しいところ、ありがとうございます。まずはインカレ2024の結果をどう受け止めているのかを伺いたいです。第4シードでの登場だったわけですが、個人的な思いを言うならば、しっかりと勝ち上がって2025年大会も第4シード以上を取ってもらいたいと思っていました。その中で、日本経済大学(以下日経)の山に山梨学院さんが入って、初戦の相手となり、そこで敗退しました。山梨学院さんは前年の結果で関東2部に落ちてしまいましたけど、2024年のチームは本当に強かったわけで。
案浦 そうですね。正直な話をすると組み合わせが決まる前から、「このチームが入ってきたら嫌だな」という、ある程度のイメージはしていました。その中で、私が一番嫌だなと思っていたのが山梨学院さんでした。関東2部での強さ、勢いがあり、国体では実際に試合をやらせていただき、その強さを体感しました。本当に力のあるチームでしたし、インカレに向けてもっと良くなっていくんじゃないかと感じていたんです。私たちもいい感じでチームが進んでいたので、インカレ2024自体はすごく楽しみではありました。その中で、山梨学院さんに勝つことができれば、おそらく次は愛知学泉さんだろうと……。今振り返ってみると、私自身がそうやって先のことを考えながらやってしまったことが敗因だったと反省しています。もっと山梨学院さんにフォーカスするべきでしたし、目の前の一戦に対してもっと真剣に向き合うべきだったと感じています。
宮本 そのときはいい準備ができた。やりきったと思っていたけど、思い返してみるとちょっと先を見てしまっていたなということですか?
案浦 そうですね。あのときは本当にできる限りの準備をしたと思っていたし、目の前の試合に対して真剣に向き合っていました。その中で、たとえば山梨学院さんとの試合では、いつもベンチにいた4年生のマネージャーを愛知学泉さんのスカウティングに行かせてしまっていたんです。
宮本 あー、並行して試合をやっていたから。
案浦 そうです。これを今更言ってもただの言い訳です。4クォーターの最後に彼女が戻ってきたんですが、すでにちょっと苦しい展開でした。学生たちは普段通りの動きをしてくれていたんですが、私がもっと先頭に立って、「この試合が勝負なんだ。全員で戦おう」と伝えるべきだったし、私自身がそういった行動を取れていなかったんだとすごく反省しました。

それを学生には伝えられなかった。
宮本 今年から大学バスケ、特に大学女子バスケをもっと取材させてもらおうと考えているんです。その中で、大学バスケの魅力を僕自身も知っていく、皆さんにも知ってもらいたいと考えて、コーチのフィロソフィーを聞いていきたいと思ったんですね。僕は3、4年前からインカレの取材をさせてもらっているんですが、その中ですごくインパクトを受けたのが愛知学泉さんと日経さんでした。もちろん2024年インカレファイナルの白鷗さんと東京医療保健さんの戦いだったり、同じ年の3位決定戦の拓殖さんと山梨学院さんの試合もすごかったですけど、2021年と2022年でベスト4に入った愛知学泉さん、2023年にベスト4に入った日経さん。それこそ昔は愛知学泉さんだったり、関西の大学がインカレを優勝したこともありましたけど、近年は関東がベスト4を占めることが多かった中で、このインパクトはすごかったと思うんです。
案浦 ありがとうございます。
宮本 その中で、2023年の成績を踏まえての2024年の戦いは難しかったと思うんですね。フィロソフィーを伺う前に、この1年の戦い方、チームの成長と案浦先生自身が成長した部分とか、考え方の変化などを伺いたいです。
案浦 そうですね。ベスト4に入った2023年のインカレは始まりがすごく悪かったんです。当時の1年生は(ファール)アミナタ(日立ハイテククーガーズ)や大久保(陽菜)の世代でした。力のあるメンバーたちが入学してきたんですね。だからこそ4年生にはいつも、「もっと頑張らないとダメだよ」と伝えていました。大学バスケですので、4年生だから試合に出られるわけではない。私も力があるから1年生を起用するけれど、なかなか日経が目指すバスケットを表現できない。そういう歯痒さだったり、私自身もアプローチの仕方に悩むことが多くありました。九州での大会もそうですし、西日本インカレも含めてですね。ただインカレから流れが変わったといいますか……。グループリーグでの名古屋学院戦がヒヤヒヤする展開だったんですよ(笑)。
宮本 はいはい(笑)。そうですね。(76-71で日経が勝利した)
案浦 そこを勝ち切ったことで、私たちの雰囲気も少し変わったのかなと。横浜桐蔭さんに勝ってグループリーグを突破して、関西学院さんと試合をしました。関西学院さんはすごくいい準備をされていて、4クォーターの最後までどっちかわからないという試合だったんですが、最後の最後に流れを掴み、一気に突き放すことができたんです。苦しい場面が多かったんですけど、そこでチームが成長できたという感じがありました。その後に愛知学泉さんとやらせてもらって、同じように苦しい展開だったんですが、その試合で当時の4年生が意地を見せてくれた。もちろん下級生もすごく頑張ってくれたんですけど、関西学院さんとの試合や愛知学泉さんとの試合でチームがやっとうまく噛み合うようになって、いい結果につながっていった。準決勝と3位決定戦は力負けだったと思いますけど、そのインカレでの成長はすごく嬉しかったですね。
宮本 その中で、昨年(2024年)のインカレはどうですか?
案浦 昨年は大会の入り自体は悪くなかったと思います。入りが悪くなかっただけに、先ほども言ったように自分の中で慢心なのか、油断なのか……。私たちはまだまだベスト8の常連と言えるようなチームではないのに、ベスト8は当たり前というような空気を作ってしまった。そこは本当に私の経験の無さを痛感しました。
宮本 これは完全なる僕の意見なので見当違いなところがあると思いますけど、日経がベスト4に入ったときは、次の試合のことなんて考えていないという印象を持ちました。一方で、2024年は少しメンバーを回しながら……。もちろんそれだけ能力のある選手が揃ったり、成長した選手がいたという事実もあったし、その戦い方が間違っていたわけでもないと思うんですね。実際に1人では山梨学院の藤澤(夢叶)さんを止めることは難しい。本当に彼女は素晴らしい選手です。その中で、大学バスケの魅力でもあると思うんですけど、ある意味振り切っちゃった方が学生たちも覚悟を決めてやり切れるというか。一体感だったり、勢いを持って戦っていける。そういうのは会場にいるとすごく感じるんですね。そういったヘッドコーチの考えだったり、迷いも含めて、コートに反映されるのが大学バスケの面白さでもあると思うんです。
案浦 本当におっしゃる通りだと思います。今はいろいろな情報を知ることができるじゃないですか。どのチームもそうですし、私たちも例外ではなく山梨学院さんだったり、勝ち上がっていけば対戦するであろうチームの情報を大会前に集めました。ただインカレの会場で江戸川さんと戦っていた山梨学院さんの試合を見たときに、応援団との一体感を感じて、少し怖さを覚えたことは今も記憶に残っているんです。でも、それを学生には伝えられなかった。それは振り返ると、宮本さんが言われたように振り切った感じを作るというか、「この試合に賭けるんだ!」みたいなことができなかった要因かもしれません。やはり強いチームというのは、もちろん先のことは考えるけど、目の前の試合にしっかりとフォーカスしている。負けた後に他の試合を見ながら、その大切さをすごく感じました。そういうマインドセットいうか、考え方を私自身が身につけていかないとベスト8だったり、ベスト4の常連にはなっていけないなと感じましたね。

いろんな方々にバスケットボールを教わってきて、今がある。
宮本 今回の本題である「PHILOSOPHY(フィロソフィー)」について伺っていきたいんですが、案浦先生は福岡第一高校出身ですよね?
案浦 はい、そうです。
宮本 そこから大学女子のコーチとして活躍されるようになるまでのステップだったり、そもそものコーチとしての原点などを伺いたいんですけど、どうして大学女子というカテゴリーでコーチをされるようになったんですか?
案浦 私は福岡第一高校を卒業した後に、日本経済大学に通っていました。だからこの大学のOBなんですね。私が学生の頃は第一経済大学という名前だったんですけど、正直に言うと、大学生時代はバスケットに打ち込んでいたとは言えないと言いますか(笑)。
案浦・宮本 ハハハハハ。
案浦 その中で、最後の1年。大学4年生のときに、福岡第一高校がウインターカップで優勝した世代の留学生が入ってきたんです。
宮本 あー、それって僕の世代ですね!並里成選手(FE名古屋)が1年生のときの3年生ですよね?
案浦 そうです。優勝した世代の1つ上にも竹野修平というすごい選手がいて、彼も日本経済大学のバスケ部だったんです。福岡第一高校が島根インターハイに優勝したときのスタートだった選手ですね。
宮本 はいはい!
案浦 メンバー的にはいい選手がいたんですけど、その留学生が入ってくるまでは練習もゲームをして終わりみたいな部活で(笑)。
宮本 まあ、当時の地方大学はそういうの多いですよね(笑)。
案浦 そうですね(笑)。私が4年生のときは戦力的にもすごく揃って、監督には今も男子を教えている片桐章光さんが来てくれて、頑張ろうという感じなったんです。ただ、やっぱり1年頑張っただけでどうにかなるほど甘くはないですよね。終わったときに後悔の方が強くて……。最初は公務員になろうかなと考えていて、試験も受かっていたんですけど、「もう一回バスケットを一生懸命やりたいな」と思ったんです。それこそ高校時代まではすごく頑張っていたという自負がありました。そこで大学に、「男子のアシスタントコーチに入れませんか」とアプローチをしてみてたんです。当時の日本経済大学の部長さんは男女とも同じ方がやられていたんですが、その方から、「女子の監督に子供が生まれるからやめてしまうんだ」と。「よければ、女子を見てくれないか」と言われて、大学女子バスケを指導するようになったというのが始まりですね。
宮本 そうなんですね。でも、男子がいいなと思っていて女子のコーチになるっていうのは、戸惑いとかはなかったんですか?
案浦 そうですね。最初はどうしたらいいかもわからなくて、ただベンチに座っているだけ、ただ練習を眺めているだけという感じでした。でも、徐々に感情移入していったというか、伝えないとと思うようになりました。それをきっかけに大学の事務職で雇ってもらったんですが、やっぱり教員じゃないとコーチをするのはダメだという話が出てきたんです。私も単純だったので、「それなら教員になろう!」と思って、大学院に行こうと思ったんです(笑)。
宮本 え、すごいですね(笑)。
案浦 ただ、そんな簡単に大学の教員なれるわけないですよね(笑)。大学院を修了してから3、4年ぐらいは福岡第一高校で非常勤講師としてお世話になりました。ありがたいことにそのときもコーチをやらせてもらっていて、少しずつ結果を出せるようになり、大学も認めてくれた。そこで教員として採用にしていただけたという流れですね。
宮本 じゃあ、最初に日経のベンチに座ったときは、チームはそこまで強くなかったんですか?
案浦 そうですね。一応九州の2部にはいたんですけど、強豪というわけではありませんでした。その頃は福岡第一高校の女子も強くて、インターハイに出たりしていたんです。私がコーチとして入った頃の選手たちは一生懸命やるメンバーで、本当に頑張ってくれましたけど、1部との入れ替え戦で8回ぐらい勝てずに、悔しい思いをしましたね。当時の私は「走れば勝てる」と思っていたんですけど、それじゃ勝てない。そのときに当時1部で戦っていた先生方にすごく可愛がってもらって、いろんなことを教えてもらえたことで、私自身も成長できました。練習試合に呼んでいただけたり、いろんな話を聞かせてもらったり。フットワークだけは軽かったので(笑)。
宮本 それは若さゆえの特権ですよね!
案浦 本当にそうですね(笑)。でも、練習試合は1クォーターで10対40みたいな試合ばかりでした。私は悔しいし、生意気だったので、「お前ら外を走っとけ!」みたいな(笑)。自分もそういう指導で強くなれると思っていた時期でしたね(笑)。
案浦・宮本 ハハハハハ!
宮本 そういう時代もありましたから(笑)。
案浦 今思えば、1部のチームに相手をしてもらって、何を言ってるんだって話ですよ。実際に笑われてましたけど、それでも選手たちは頑張ってくれました。ただ、そういう指導がいいわけがないので(笑)。いい選手は来てくれなかったですね!
案浦・宮本 ハハハハハ!
案浦 それでも来てくれる選手が一生懸命頑張ってくれて、ちょっとずつ成績が上がるというか、1部から落ちることはなかったというのが正しい表現になると思います。思い返すと、私としても苦しい時間でした。そういう時間を過ごしていく中で、いい選手が集まってくれたときがあったんです。本当に運が良かったとしか言えないので、お恥ずかしいんですが(笑)。当時の4年生のガードもすごく良いプレーヤーで、初めて全勝でインカレに出場することができたんです。そこからはずっと九州の大会は勝たせてもらえるようになりました。その経験を経て、次は関西に出かけたりだとか、それこそ東海地区に足を運ばせてもらったりとか。そうやっていろんな方々にバスケットボールを教わってきて、今があるという感じですね。

ひとりで打開するのではなく、お互いの良さを引き出し合おう。
宮本 その中でコーチとしての原点だったり、案浦先生のバスケットボールの原点はやっぱり井手口孝先生(福岡第一高校男子バスケットボール部監督)のディフェンスから走るというスタイルですか?
案浦 そうですね。
宮本 これまでの話から予想すると、その中で教わったことをやってみたはいいものの……みたいな?
案浦 本当にそうです。当時は表面しか見えていなかったんだなとすごく思います。井手口先生の練習は、当時からすごく走るメニューが多かったんです。それをただ真似したり、なぞっていただけでした。なので、結果にはつながらない。成績的に言えば2部には落ちないけど、1部の上位にいけるわけではないみたいな。
宮本 あー、なるほど。僕も以前コーチをやっていたんですが、いろんな方の指導本とかいろんなところに勉強に行かせてもらっていただんです。おそらく今コーチをされている方には、同じように素晴らしいコーチから多くのことを学んでいる人がいると思います。その落とし穴のひとつって、ただなぞってしまうことだと思うですよ。
案浦 私もそう思いますね。
宮本 「あの先生がやっているフォーメーションをやったら、必ずこうなる」って思って選手に伝えたら、そうはならない。「このゾーンディフェンスをやったら……」ってやってみても、結果は出ない。
案浦 うんうん、そうなんですよ、ならないんですよね(笑)!
宮本 案浦先生の中で、自分のバスケットボールはこういうものだっていうベースを見つけたのはいつごろだったんですか?
案浦 まだまだ発展途上ではありますが、「これかな」と感じ始めたのは、留学生が入ってきて3年目ぐらいですかね。こうやってディフェンスをすれば守り切れる。オフェンスはインサイドを狙いながら、外を狙うというタイミングやコツみたいなものが少しずつわかってきた。一番はディフェンスの間合いで、「これだ」というものが見えてきたんです。それまではボールを持たせてからどう守るかという考えだったのが、九州1部の先生方や関西の先生方から学ばせてもらって、この強度が大事なんだと気づきました。当時は強度なんて言い方はしていませんでしたが、「私がやるバスケットボールはこの強度でやるんだ」というのが示せるようになってきた。それこそ当時の九州1部だったり、1部に上がってからは関西の大学に試合をさせてもらうと、そもそもボールを持たせてもらえないんですね。
宮本 はいはい。そうですよね。
案浦 そういったことを感じるようになってから、次はそれを自分たちがどう表現するのかという段階に入っていった。だから繰り返していくんですけど、学んだことをなぞっていって、うまくいかない。だからそれを自分なりのやり方、考え方、伝え方にしていくという作業をやってきました。それは今もですね。その中で、日経の強みは留学生のインサイド。そこを起点にしながら、小さいガードのプレーヤーたちが果敢に攻めていく。
宮本 そうですよね。僕もインカレを取材で行かせてもらうようになったときから、日経は留学生と特徴のあるガードが中心のバスケットボールなんだという印象を持っています。 ちょっと言い方が失礼ですけど、全国的には何かが足りないガードというか。それがサイズだったり、シュートだったり、フィジカルだったり。本当にもうひとつこれがあれば……みたいな選手が留学生のビッグマンと絡み合う中で躍動していくのが日経っていう。
案浦 そうですね。オフェンスに関しては、そういった組み合わせの中でお互いのいいところを引き出しあっていく。うまく留学生を活かしつつ、逆に留学生も活かされるみたいなところはすごく意識しています。正直、その形で全国でも戦えるところまでは来れたのかなと感じています。
宮本 この何年かでインカレでも上位を狙えるようになってきた。ベスト16に来て、ベスト8にいけるかいけないか。ベスト8に入ったら、ベスト4にいけるかどうかみたいなステップを確実に踏んでいると思います。一方で、日経さんのレベルも上がっているのと同じように、女子に関しては大学バスケ全体のレベルも上がっていると思うんですね。バスケットのスタイルも変化してきたというか、多様化してきたと思います。その中で日経のカラーっていうのは、やっぱりこれからもガードと留学生っていうところになるんですか?
案浦 そうですね。2ガードというのが私の中ではひとつあります。留学生に対してガード陣がうまく絡み合っていくバスケットボールは強調していきたいと思っています。強いときはやっぱりそこのバランスがいいと、私自身も感じることが多いですね。うちの留学生は世代のトップ選手ではないので、個人で圧倒的に点数を取れるわけではない。それこそガード陣もひとりでゲームを支配できるわけではないので。
宮本 お互いがお互いを見せといて、良さを出し合うってところですよね?
案浦 そうですね!そういうことは選手たちにもすごく伝えています。ひとりで打開するのではなく、お互いの良さを引き出し合おう。もちろん個人で打開する力はつけてほしいですけど、お互いをうまく利用できればより良くなっていけるよねということは、これからも大切にしていきたいですね。

全国のトップクラスのチームにも同じような印象を与えられるように。
宮本 コーチをやり始めたときに一番影響を受けた人や言葉などはあったりしますか?
案浦 それで言うと、初めて大阪体育大学に行かせてもらったときですね。これは先日のスプリングキャンプで中大路哲先生(大阪体育大学)にも話したんですけど、コーチを始めたころ、ディフェンスは最後まで手を上げて守るという考えだったんです。そのときに中大路先生から、「ブロックまでいかないとダメだろう」と言われました。
宮本 なるほど。シュートを打たれたときに、ハンズアップしていればいいんじゃなくて、もっとボールにアプローチをしろと?
案浦 そうです、そうです。「お前な、強いチームとやったら、シュートって大体全部入るんだぞ」と言われたんです。僕のそれまでの経験を振り返っても、「確かに!」と思いましたね。これを言われたことは今も鮮明に覚えています。そこからは、ちゃんとブロックまでいけたのかということを選手たちに問いますね。「ただ手を挙げているだけなら、それは降参だよ」とよく伝えています。あとはディレクションに関しても、ノーミドルとかあるじゃないですか。
宮本 はいはい。
案浦 うちはそういうルールはなくては、入学したときに最初に説明するんですけど、いかにインライン、ボールとゴールを結んだ線をやられないようにするか。時と場合によってはノーミドルとは逆に抜かれた方がいいときも出てくるから、そこを意識しなさいとよく言います。1年生はそれぞれの高校でいろいろと習ってきたり、ルールを徹底してきているので、なかなか難しいところもあるんですけど。
宮本 おそらく多くのチームが基本はノーミドルで、抜かれるんだったらベースライン側にいって、ローテーションしなさいってやるじゃないですか。
案浦 そうですね。そうなると、基本は逆サイドの選手がヘルプに行くはずです。ただ、うちの場合はそれだとヘルプに行く選手が留学生になることが多いんですね。そうすると逆サイドのリバウンドが弱くなってしまいます。トータルで考えるとそれはもっとも避けたいことなので、留学生をヘルプには行かせたくない。ブロックに関しては別ですけど、コースを止めるような動きはしなくてもいいと伝えています。その前に周りがローテーションするとか、そもそもボールマンの責任だよねっていうことを徹底するようにしています。
宮本 シュートを打たれたとしてもブロックにいけていれば、シュート成功率は下がる。統計的にリバウンドの75%ぐらいは打った場所の反対に跳ねるわけだから、反対側に一番リバウンドの強い選手を置いておくことによって、ディフェンスリバウンドを取れる確率は上がる。結果的に他の選手が走りやすくなる。
案浦 そうですね。万能な選手というのはなかなかいないので、留学生にはリバウンドに専念してもらうことが大切だと考えています。留学生の良いところ、悪いところ、逆に日本人の良いところ、悪いところを考えてボールマンのプレッシャーだったり、ヘルプローテーションの構造というものを少し特殊なのかもしれませんが、選手同士の良さが一番出るように考えています。先ほどおっしゃってもらったように、リバウンドや空中戦は留学生、走るのはガード陣みたいな色が全国の舞台でも少しずつ出せるようになってきました。九州のチームからすると、「日経はディフェンスが強くて、そこから走ってくる」というイメージがあると思います。全国のトップクラスのチームにも同じような印象を与えられるように、チームとしてのカルチャーを作っていきたいと考えています。

大学バスケの構図を変えていきたいという気持ちは強いです。
宮本 2023年のインカレでベスト4に入った。2024年の新人インカレで3位になった。ここからは、「全国大会の四つ角には常に日経がいる」という状況を作っていくことが、大学バスケ全体としてもそうですし、九州の大学バスケにとっても重要だと思います。そのために、今後必要になってくるものはなんだと思いますか?
案浦 日経のバスケットをもっともっと確立していくことだと思います。先ほども話したように、「日経と言えば……」というのを、大学バスケに関わる方々や皆さんが同じことを言ってもらえるようになる。そのためには私自身にもっといろんな経験が必要だと思いますし、いろんなことを学んでいかなければいけないと思っています。その中で結果を出して、大学バスケの構図を変えていきたいという気持ちは強いです。九州の中で私がそういう存在になっていきたい。日経がそういうチームになっていきたいという思いを、今は持てるようになりました。ただ、まだまだ私がそういう行動をできているのかと言われると、全然足りないと思うんですね。その中で、これまでもそうでしたが、私の想像を超える選手は日経からも出てくると思います。でも、それを私が導けるのかというと、もっともっと頑張らないといけないよなっていうのが本音ですね。それこそ昔は、「走れ!」という指導をしたり、より長く練習をすれば強くなれると思っていましたけど、今はもっと良い指導の仕方があるんじゃないかと考えることが増えました。私自身も成長したいですし、私自身が変わっていく必要があると感じています。それこそ昔は、「うちに来た選手を変えたい。うまくしたい」みたいな考えを強く持っていたんですね(笑)。
案浦・宮本 ハハハハハ!
宮本 「自分のところで頑張れば、この子は成長するんだ。自分が成長させてあげるんだ」みたいなことですよね。それは僕もコーチをやっていたときに思っていました(笑)。でも、違うなって僕も思いましたね。それこそ白鷗の佐藤(智信)さんもそう思っていたときがあったっていうお話をされていました。
案浦 選手たちが成長できるきっかけをどれだけ与えられるか。成長できる環境を作れるかという要素もやはり大切だと思います。そういった意味で、今年は素晴らしい機会をいただけそうなので、自分自身にとってチャンスの年だと捉えています。そのときはチームに迷惑をかけたりすると思うんですけど、まずは私自身がもっとチャレンジをして、成長していきたいなと思っています。

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