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嘘をつくコスト

今日、子供が見え透いた嘘をついた。

子供が嘘をついているかもしれないと思っても確証がない場合、親としてもどかしい。

「宿題やりました。」

「歯磨きをしました。」

「読書しました。」

…それ本当?

いちいち監視したり確認するのは大変だし、子供が「両親は私を全く信頼していない。」と思い込むのも健康な家族関係とは言えない。 


子供の日常に興味を抱く

こういう瞬間こそ、私は子どもの日常に意識的に興味を持ち、具体的な質問をすることにしている。

「何の本を読んだの?」

「どういう内容だった? どう感じた?」

「うまく磨けた? みせてごらん。」

嘘かどうかはとりあえず横においておく。尋問ではない。やるべきことを意識的に行なって、そこで何を感じたかを親として普通に聞いてみればよい。

別に嘘がそこで白日のもとにさらされる必要はない。

でも、子供の話に嘘が混じっていたらどうなるか。

咄嗟に嘘をつくときは、細かいことを考えないものである。

いろいろ聞かれると架空の話を秒速ででっち上げなければならなくなる。

それが結構しんどいと分かれば良いのではないかと思う。(そういうのが得意になっても困るが…)

これを書いていてとぼけた調子で犯人の矛盾を突いてゆく刑事コロンボを思い出した

今日の嘘では明らかに矛盾が露呈し、本人も「しまった」と思ったようだ。嘘だとわかったからには、私も甘い顔はできない。嘘は道徳的に許されるものではない。

でも頭ごなしに怒るのもだるいので、「明日、同じことを言っても、もう本当の話なのか分からないね。」と静かに釘を刺しておいた。

一旦嘘つきというラベルを貼られると、そこから正直に生きようとしても二倍の苦労をすることになるのだよ。

なぜ嘘がいけないかを説明してみよう

私は夕飯のハヤシライスをつくりながら、嫌味な言い方だけではなく、しっかりと諭さねばならないとも考えた。

(みなさんも一旦ポーズして、ここで自分なりの説明を考えてみては?)

子供も嘘が良くないことは分かっているし、今日は私に嘘がバレたことも明らかなので、もう「嘘」という言葉を使わずに諭すゲームをしてみようと、自分に課題を出してみた。

夕飯の締めくくりに、今日嘘をついていない方の子を含めて話し合うことにした。あえて「嘘」というキーワードは出さずに。

「チームワークをする時、メンバーの一人が不正確な情報を広めていたと分かったとしよう。次からは、そのメンバーが言っていることが本当なのか、他のメンバーがいちいち確認する作業が発生する。そういうチームは早く仕事を進めるか。それとも遅いか。」

「遅い。」

「そうだ。そして家族もチームだ。皆がお互いの言うことを信用できれば、確認作業なしに物事が円滑に進む。その反対になると全員が骨を折ることになる。」

嘘をついた子は何の話か分かっただろうし、そうでない子も納得していた。

これで躾が終わるほど子育ては甘くはないが、親が「常識」を噛み砕いて諭せるかというのは大事な頭の体操だと私は考える。それができない人ほど頭ごなしに叱るものだ。

ビジネスと嘘

話は変わるが、細々ビジネスをしていると、つくづく信用がビジネスをするコストを下げていると感じる。

すでに信用を勝ち取っているお得意さんには、いつも通りきちんと仕事を納めれば喜んでもらえる。

まだ信用されていない相手からは、時間、労力、お金をさんざんかけても仕事をくれないこともある。

これは勤めの場合、組織で働く場合も同じだろう。

人間同士の信頼の潤滑油は、ビジネスや社会のコストを低く抑える。

ビットコインと嘘

ちなみにビットコインで一つの取引を完了するのには500〜800キロワット時のエネルギーを消費するという(*)。暗号通貨はトラストレスのシステムである。トラストレスとは、銀行や政府のような特定の第三者や仲介者を「信用(トラスト)」しなくても、システムや技術によって安全に取引やデータ管理が行える仕組みのことだ。

* 正確には、ビットコインネットワーク全体の推定消費電力をオンチェーン取引数で割った数字

人類は、銀行や政府のようなあらかじめ信頼を築いた母体を双方が仲介することで、ビジネス・経済はネットワークを世界規模に広げることに成功した。

一方、暗号通貨は、膨大な電子帳簿をネットワーク上の多数のコンピューター(ノード)が独立して検証し、矛盾がないことを照合することで取引の正当性や正確さを担保するのだ。だから仲介者なしでも第三者と安心して取引ができるというわけだ。

ただし、検証の際にマイニングと呼ばれる問題を解かなければならない。

この計算コストには意味がある。過去の取引を書き換えて二重支払いなどの不正をしようとすれば、正規のネットワークに負けないほどの計算能力を投入しなければならない。不正によって得られる利益以上のコストをかけさせることで、ネットワークの安全性を守る。そういうからくりだ。

信頼を守る方が得だと分かる子を育てます

話をもとに戻そう。

皆が正直で正確なコミュニケーションをしていれば、その信頼関係を基盤に物事・ビジネスは低コストで動くのである。それが担保できない場合は、仲介者を通したり、ビットコインのように大きなエネルギーを払って取引をしなければならない。

信頼を守ることは道徳的に正しいだけでなく、経済的にも「お得」なのだ。

それを感覚で分かる子供を育てたい。


筆者について

田中乃悟です。米国大学院で博士号をとり、石油企業などを渡り歩いていました。前職で草創期から勤めていたシリコンバレースタートアップが3.17億ドル (当時の為替レートで365億円)で買収されました。今ではソロプレナー(独り起業)しています。2026年はシリコンバレーで独立して10年目になります。

経歴
- 神奈川県栄光学園高校卒。慶応大学総合政策学部卒。
- ジョージタウン大学客員研究員
- カーネギーメロン大学博士号(Ph.D.)取得
- シュルンベルジェR&D (油田サービス最大手)
- Yコンビネータスタートアップのファイブスターズ (2022年に317ミリオンドル、当時の為替レートで365億円でエクジット)にて草創期エンジニア、会社初のデータサイエンティスト
- ひとり起業。最初はコンサルティング。今は独自データプラットフォームやSaaSを自力運営。

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