【AIマンガ】娘が、はじめておにぎりをにぎった日

米粒が、床にまで飛んでいる。
日曜の朝。台所で、陽菜がにぎっている。にぎ、にぎ、と声に出しながら。
うちの台所は、ずっと私の場所だった。妻がいなくなってから、めしを作るのは父親の仕事で、娘は食べるほう。それでよかった。というより、それしかなかった。
その娘が、今朝はじめて、自分の手でにぎった。
できあがったのは、私の握りこぶしよりでかい、なんというか、遺跡みたいなやつだった。海苔は巻いたというより、貼りついている。三角のような、五角のような。
「これは…なんだ」
聞いてしまってから、しまった、と思った。腰に手をあてて、ドンと胸をはっている娘。
「おにぎり!」
そうか。おにぎりか。
かじる。塩がききすぎている。にぎりすぎて、米が少し餅になっている。
でも。
「…おにぎりだな。おいしいおにぎりだ」
これは嘘ではない。ほんとうに、おいしかった。何がどうおいしいのか説明しろと言われたら困る。困るが、おいしかった。
「やった! こんどもつくる!」
こんども、と言った。今度、ではなく。
あとで台所の米粒を拾いながら、私はたぶん、にやにやしていた。米粒はやたらと多かった。
……ああ、たのしみだ。

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