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一杯の記録|第45話 黒龍 純米吟醸(福井・永平寺)

福井・永平寺町。
九頭竜川が流れ、山々に囲まれた静かな土地。

冬は雪に閉ざされ、
空気は澄み、音は低くなる。

黒龍酒造は、この地で長く酒を醸してきた。
規模は大きくとも、
目指すのは量ではない。

磨くべきところを磨き、
残すべきところを残す。

揺るがない精度が、この蔵の背骨だ。


さて、本題。

立ち上がりは、やわらかい。
角のない甘みが、すっと広がる。

火入れらしい落ち着き。
奥には、ゆるやかな厚みが控えている。

強く主張はしない。
旨みが押し寄せることもない。

それでも、
どこかに艶がある。

終いは、ほのかな苦みでキリリと締まる。
余韻は長くはないが、
線がきれいに整えられている。

過度に膨らまない。
過度に削らない。

艶をまといながら、静かに立つ。

この一杯は、
そんな“整えられた気品”として、記録しておく。

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