どぶ板ベンチャーの25年 はじめに
はじめに:生存率0.3%の「どぶ板」を生き抜いた、あるベンチャーの記録
田中博見と言います。1962年、北海道旭川市出身。現在63歳。 25年間経営した会社を2023年に引退し、現在はフリーランスとして技術・経営のコンサルティングを行っています。
最初にお断りしておきますが、私はいわゆる「成功者」でも「偉大な業績を残したカリスマ経営者」でもありません。
準備万端でもなく、希望に満ちたスタートでもなく、ただ「社員とお客様を守るため」に切った舵は、いきなり底の抜けた地獄の船出となりました。 そこから、グリーンシートやアンビシャスへの上場。反社まがいの乗っ取りからの脱出。単独でのジンバブエ政府との国家プロジェクト。慢心からの経営危機と身売り。さらに会社を勝手に売却され、自腹での買い戻しからの再出発。TOKYO PRO MARKETへの上場。そして、再度の大きな失敗からの引退——。
ざっと大きな節目を挙げるだけでも、これだけの修羅場を経験しました。 そのほとんどが「間違い」と「失敗」の歴史であり、わずかに守り通した意地だけで、なんとか死なずに済んだと思っています。
上場したことがある、とは言え巨額の資産を形成したわけでもなく、今は老後の資金におびえているただの庶民です。
世の中に溢れるビジネス書は、 「何十億の会社に育てた経営者が語る、華麗な成功ノウハウ」や 「何億の借金からこうして復活したという、奇跡の逆転劇」ばかりです。
私がここで書き記したいのは、それらとは違います。 ごくありふれた人間が経験した、泥にまみれた失敗だらけの歴史と、極めて稀にうまくいった生存の記録を、「近所のジジイ」の目線でお伝えしたいのです。雲の上のカリスマではなく、新橋の居酒屋でいつでも会えるジジイの、血の通ったリアルな昔話です。
【本連載の3つの構成】 記事は、以下の3つのパターンで展開していきます。 ① 実録編(ナラティブ): 事実に則した、ヒリヒリ、稀にドキドキするような当事者の物語。
② 解説編(ノウハウ): 過去の失敗を第三者的に冷徹に分析し、経営学的なアプローチで解説する実務ノウハウ。
③ コラム編(哲学): 居酒屋でジジイがクダを巻いているような、私見と毒舌に満ちた経営哲学。
【連載ロードマップ(予定)】 全25年の歴史を、以下の7つの章立てで進めていく予定です。
第一章:黎明編 〜底の抜けた船、地獄の船出〜
第二章:闘争編 〜グリーンシート市場からアンビシャスへの上場〜
第三章:挫折編 〜反社まがいの乗っ取りと、上場企業を捨てる日〜
第四章:狂乱編 〜慢心が生んだ危機と、ジンバブエ国家プロジェクトの死闘〜
第五章:屈辱編 〜会社売却の地獄と、神田明神オフィス奪還劇〜
第六章:逆襲編 〜再スタートとTOKYO PRO MARKETへの上場〜
第七章:落日編 〜再度の慢心、そして引退へ〜
今だからこそ語れる、経営者としての恥ずかしい失敗もすべて隠さずに綴っていきます。
ただの「体験記」として読むなら、よくできた小説の方がはるかに面白いでしょう。 私が目指すのは、それらとは一線を画した、若手経営者たちの血肉となる「最も生々しい経営書」です。
私の野望は、このどぶ板の記録がいつか出版され、悩める起業家たちの手に届くこと。 長く、そして短い25年の航海記。どうか、最後までお付き合いください。
