推薦が、一人の人生を照らした
ごきげんよう、美杏です。
「この履歴で該当になりますか」
ある企業の担当者が、一枚の履歴書を持って来訪されました。団体が定める推薦基準に基づく、従業員表彰のご相談でした。
精査したところ、その方は基準を十分にクリアしていました。
「推薦していただいて構いません」とお伝えすると、担当者は少し申し訳なさそうな表情で、こう尋ねられました。
「表彰式は、必ず出席しなければなりませんか」
「会社で配慮していただけるのであれば、出席が望ましいです」
そうお答えし、その日はそれで終わりました。
後日、正式な提出書類を持って、担当者が再び来訪されました。
そこで初めて明かされたのは、思いがけない事情でした。推薦対象の方が、入院しているというのです。
「早く上申すればよかったとは、以前から分かっていたのですが」
——担当者は言葉を選びながら、表彰の準備期間中に、本人が勤務中に突然倒れてしまったことを話してくれました。
その状況を知らないまま、私は「出席してください」と申し上げていました。事情を伺い、すぐに言葉を改めました。
「そのような状況であれば、出席できないのは当然のことです。出席に強制力はありません」。担当者は、安堵した様子でお帰りになりました。
表彰式は、無事に終了しました。
後日、その担当者が、再び来訪されました。今度は、その方を別の表彰へ推薦したいというご相談でした。
表彰状を手にしたその方は、静かにこう話されたそうです。
「早く病気を治して、仕事に復帰する。」
担当者は、その言葉を聞いて、もう一度その方を推薦しようと決めたのでした。
もちろん、優秀な社員であることに変わりはなく、その方は受賞されました。ただ、後になって知ったのは、それが回復の見込めない病であったという事実でした。
この出来事を、担当者はとても自分のことのように受け止めていたようです。しばらくして、その方はその企業を退職されました。
幸いだったのは、転職先が同業だったことです。
栄典制度が、推薦する側にとってどれほど重要な意味を持つかを、身をもって知っていたからでしょう。
転職先でも、優秀な従業員を見つけては、変わらず推薦してくださっています。
本来であれば、私自身が各企業を巡回し、埋もれている功績を掘り起こせれば理想的です。
けれど、経理事務との兼務で栄典業務にあたっている以上、細やかなフォローには限界があります。
だからこそ、企業の皆さまには、「まだ早いかもしれない」「基準に該当するか分からない」と迷われた段階でも、遠慮なくご相談いただきたいと思っています。
推薦に至らなかったとしても、次につながる準備や方向性を一緒に考えることはできます。
功績は、突然生まれるものではありません。長い年月をかけて積み重ねられたものです。
だからこそ、その価値に気づいたときには、「いつか推薦しよう」ではなく、「今、推薦する」という判断が、その方の人生を支えることにつながるのかもしれません。
三十年にわたり栄典制度に携わってきた経験を生かし、その方の歩みを正当に評価するお手伝いができるようになりたい。
私はこれからも、一人でも多くの功績が、必要なときに正しく評価されるよう、そのお手伝いを続けていきたいと思っています。
功績は、見つけてもらうのを待つものではなく、見つけようとする人がいて初めて社会に伝わります。
その橋渡し役として、これからも皆さまのお力になれれば幸いです。
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清内 美杏(きようち みあん)
栄典制度30年・無形価値の編集者・栄典編纂士
「あなたの人生に、正当な評価を。」

