無人かあい🫲
私の住んでいる街は,高齢化が進む田舎町だ。最寄り駅までの公共交通機関が少なく,車は必須アイテムなのである。
当然,運転手の平均年齢も高い。巷では、高齢者の交通事故が頻繁にニュースになっているが、増えたのは事故件数というよりも、高齢ドライバーの数なのだろう。
うちの近所のお爺,お婆は,車椅子がわりに軽トラを乗り回す。ちょっと近
所へ行く時も,車に乗る。しかも,独自のルールで動く。
ある日,私は、車で、結構なスピードで走る近所のおばちゃんの後ろを走っていた。
おばちゃんが、突然停車した。乗り捨てるかのように停車して、降りるや否やせかせかと玄関に入っていく。その車の脇を、私はすり抜けようとした。
おばちゃん、もう少し端に止めやんとあかんで。
と、思いつつ,横に並んだ。ところが、一瞬、変な感覚に囚われた。
車が並走している?
どっちが動いてる⁇
思わず車を急停止した。みると、おばちゃんの車が、無人のまま動いているではないか。確かに動いている。微妙に坂になった道を,ゆっくりとバックしている!
私は慌てて、車から飛び出し,バックしている車の運転席側に走った。1人で軽トラと相撲をとったところで勝ち目はない。思わず、車の運転席に窓から上半身を乗り入れた。パニクっているから、
どこを押したらとまる?
気分はダイハードのブルース・ウィルスである。実際は秒速1メートルくらいの車だけども。
えっ〜ミッション車やんか
私はミッションが乗れない。それでさらに頭が白くなる。どうやって止めればいいの?アワアワア
そうだ,サイドブレーキだ!
腕を伸ばして,サイドブレーキを思いっきり引く。
ゴットン…
止まった。
危なかった。あのままなら,どこかに確実にぶつかった。誰かが怪我したかもしれない。ほんと良かった‼️
ほっとしている場合じゃない,おばちゃんに一言言ってやらねば。
玄関で,おばちゃんを呼び、事情説明する。すると,おばちゃんは
あらまあ,エンジンは止まってたかいね?不思議やなあ。
エンジン?確かに止まってますけど…。
キーはつけたまんまですけど
サイドブレーキかかってませんけど。
坂道なんですけど。
不思議じゃないと思いますけど。
まあいい。何もなかったからと,気持ちを入れ替え,その場を後にする。
止めっぱなしだった自分の車に乗り込み,走りだした。すると、前から白い軽トラがやってくる。運転席を見てギョッとする。
え〜また無人車かい!
この街は高齢化どころか、無人化やないかい!
しかし,よく見ると禿頭がチョンと見える。
なんや,万吉さんやないか。
そうです。毎回ギョッとするこの万吉カーの運転席には、90歳オーバーの長老、ちっちゃな万吉さんが乗ってらっしゃる。前から見ると、禿頭のてっぺんがちろっとしか見えないのである。乗っていても、この状況では限りなく無人に近いのではないか。
有人であって無人
無人であって有人
まるで哲学者の格言のようだ。要するに、この街の軽トラは有人であろうと無人であろうと関係ない。もはや車ではなく,電動車椅子として認識され,道路交通法じゃ縛れない別枠アイテムなのだ。ちなみにお巡りさんには通用しないが。
朝のラッシュ時に時速20キロで走るから,常に行列の先頭。対向車を想定しない絶妙な停車位置。曲がる時だけ早い運転操作。溜池の土手も走る大胆さ。常に自分が優先道路。
だから、うちの周りは,常に軽トラ警報が発令されているのだ。
他人の振り見て我が振り直せ。
他人事ではない。何年か後の自分も軽トラ警報の仲間入りするかもしれない。今のところ,小さくて運転席に埋もれることは考えにくいが…気をつけようと心引き締める今日この頃である。
