言い訳

言い訳は悪くない。ただ、そのタイミングではない。

「言い訳をするな。」

何か失敗をしたとき、よく言われる言葉だ。

しかし私は、言い訳そのものが悪いとは思わない。

問題は、そのタイミングにある。



人が怒っているとき、その人の頭の中では一つの問いが強く働いている。

「この人は反省しているのか。」
「責任を認めるつもりがあるのか。」

つまり、相手は責任を受け入れる姿勢を探すバイアスでこちらを見ている。

そんな状態で、

「実は事情があって……」
「本当はこういう理由で……」

と説明を始めると、こちらは事実を説明しているつもりでも、相手には「責任逃れ」と映りやすい。

内容が正しいかどうかよりも、「今その話をするのか」という印象が先に立ってしまうのである。

これは、相手の認知の向きと、こちらの伝えたいことが噛み合っていない状態と言える。



興味深いのは、その場では聞いてもらえなかった言い訳も、後になって意外と覚えられていることだ。

「あのとき、こんなことを言っていた。」

内容自体は記憶に残っている。

ただ、その瞬間には受け入れられなかっただけなのだ。



だから必要なのは、「一切言い訳をしないこと」ではない。

順番を間違えないことである。

まずは、自分に非がある部分を認める。

相手が求めている情報に先に応える。

これは相手のバイアスに沿った対応でもある。

そのうえで、怒りが落ち着き、原因や再発防止を考える段階になって初めて、事情や背景を説明する余地が生まれる。

その頃には、言い訳ではなく「状況の共有」として受け止められやすくなる。



言い訳は、内容よりもタイミングで評価が変わる。

だから、「言い訳をするな」という教訓よりも、

「言い訳は、相手が聞ける状態になってから話す。」

こちらの方が、現実では役に立つように思う。

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