夕焼け色のハンカチ
あの日のことを思い出そうとすると
ふっと風がさらってゆく
透明な時間の中に
燃えるような赤い夕焼けだけが音もなく広がっている
それ以外は何もない

狂いそうなほど悲しいはずなのに
壊れそうなほど苦しいはずなのに
夕焼けしか思い出せない
きっとあの時
私の脳は時間を止めたのだ
そうでないと心を失ってしまうから
そして
美しい記憶だけが残るように
守りの力が働いて
つらい記憶を消してくれたのかもしれない
だから私の心には今でも夕焼けだけが広がっている
悲しみを覆い隠すような
夕焼け色のハンカチだけがふんわり広がっている

