定期的に通う熱帯魚専門店
定期的に通う熱帯魚専門店がある。
最初に訪れた時は、ただただ綺麗で、圧倒された。
水槽の中で光が揺れている。
色とりどりの魚が泳ぎ、水草が風景を作っている。
見ているだけで、時間が少しだけ伸びるような感覚があった。
でも、何度も通ううちに、ある変化が起きた。
綺麗なのは変わらない。
変わっているのは、見ている側だった。
水槽の中では、何も崩れていない。
水は循環し、光は揺れ、生き物は生きている。
ただ、その仕組みが少しずつ見えてくる。
ガラスの向こう側にあるものは、自然そのものではなく、人間が作った小さな世界なのだと気づく。
最初はただ美しいと思っていたものが、少しずつ構造として見えるようになる。
それでも、不思議なことがある。
しばらく間を空けて訪れると、また違う感覚になる。
昨日、その店に行った。
やっぱり綺麗だった。
光に照らされた水槽。
ゆっくり泳ぐ魚たち。
何度も見たはずなのに、また足を止めてしまった。
考えてみれば、人間は慣れる生き物なのだと思う。
毎日見ているものは、当たり前になる。
でも、少し離れることで、もう一度その価値に気づくことがある。
そして、ふと思う。
魚たちからすれば、僕はただの大きな生き物だ。
餌をくれるわけでもないのに、毎回ガラス越しに見ている変な存在なのかもしれない。
もしかすると、魚たちのほうが僕を観察しているのかもしれない。
水槽の中は変わっていない。
変わったのは、こちらの距離だけだった。
それでも、水槽の前に立つと、やっぱり少しだけ時間が伸びる。
